近年に大ブレイクしたといっても良い伊藤若冲。その若冲について前後編のスペシャルで放送とのこと。現在東京都美術館で「奇想の系譜展」開催中なので、それに連動しての企画と言える。この展覧会については私も行ってきたのであるが(私のもう一つのブログ「徒然草枕」の2/15の記事を参照あれ)、若冲以外にも曽我蕭白、長沢芦雪など見所満載であるのでお勧めである。
なお番組では今日の若冲ブームが始まった最初は、2000年に京都で開催された若冲展からとしている。この時のチラシに「こんな絵師が日本にいたとは」の類いのことが書かれていることから、これまでは日本においてあまり注目されていなかったことも覗える。まあこの辺りは私の記憶とも大体一致する。
伊藤若冲は元々は京都錦市場の青物問屋の主人であり、その人となりは「真面目で芸事などに興味のない面白味のない人物」と伝わっているという。しかしその真面目人間が本気ではまり込んだのが絵画の世界。狩野派の絵画技術を学んでから、京都の寺から所蔵している水墨画を借りては模写しまくっていたのだという。そして40歳で家業を弟に譲ると、本格的に絵師としての活動に専念する。
その若冲がまさに人生をかけて挑んだ大作が「動植綵絵」。これは「釈迦三尊像」と共に相国寺に奉納するために描かれたものである。この絵の中で鍵となるのが鳳凰を描いた「老松白鳳図」なのであるが、これと関連性の高い絵が箱根の岡田美術館(小涌谷に5年前に開館したとのことで、私も今回初めて知った)にある「孔雀鳳凰図」だという。これは5年前に再発見された作品だと言うが、この鳳凰図が先の「老松白鳳図」とほぼ構図が同じであり、若冲が動植綵絵の前に実験作的に描いたものではないかとの分析。またさらによく似た構図の絵として「旭日鳳凰図」というのもさらに前の時代に描かれており、十分に試した上で自信をもって挑んだのが「老松白鳳図」ということになるらしい。
後は後編でということのようだが、この番組らしく現在開催中の展覧会に併せたタイムリーな企画。ただ私としては「確かに若冲は大人気だけど、曽我蕭白や長沢芦雪も忘れないでね」と言いたいところ。なおこの若冲よりもさらに後で現在にかけてブレイク中の「河鍋暁斎」なんかもお忘れなく。