教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

3/11 BS-TBS にっぽん!歴史鑑定「戦国の女たち-春日局の生涯」

 家光の乳母として権力を奮ったと言われている春日局の生涯を紹介。

 後の春日局ことお福の父は斉藤利三。彼は明智光秀の重臣だったので、本能寺の変の後の山崎の合戦での敗北で処刑されてさらし首となったのだが、それをお福も目撃しているとの話があるとのこと。謀反人の一族であるお福はしばし身を隠すことになるが、本能寺の変から6年後、ようやく京都に戻ってきた13歳のお福は三条西家に奉公に出ることになり、ここで行儀作法などを学ぶことになったという。その後、17歳で稲葉正成の後妻として嫁ぐ。お福の8才年上の正成は小早川秀秋の家老で5万石の石高を有していたというから、お福としては初めて安定した穏やかな生活を送れることになったという。

 その後関ヶ原の合戦が発生するが、小早川秀秋が東軍に寝返ったことで家康が勝利。この時に秀秋に寝返りを勧めたのは正成だという。つまり正成は東軍勝利の功績者と言える。しかしやがて正成は秀秋と対立、正成は浪人になって美濃に戻ってしまう。お福は家老の妻から浪人の妻に環境が激変してしまうのだが、夫の正成は浪人のみでありながら側室を囲う始末。怒ったお福は側室を家に呼び寄せると刺し殺して逃げたとのこと。もっともこれは俗説であって、実際にお福が側室を殺したかどうかは怪しい。ただ彼女が夫と離縁するために子供を抱いて逃げ出したというのは記録にあるらしい。とにかく行動力のある女性である。

 

 その頃、江戸ではお江と秀忠の間に長男である竹千代(後の家光)が生まれる。そこで家光の乳母が募集されることになり、これを見たお福が名乗り出る。乳母の条件としては乳が良く出て教養もある人物ということであったが、四男を産んだ直後のお福は母乳は出るし、三条西家に奉公していたので教養や行儀作法は身につけていた。しかしそもそも謀反人の娘であったお福がなぜ採用されたかというのはハッキリしない点が多い。どうやら家康の意向が反映しているらしいが、この番組では夫の稲葉正成が関ヶ原の功労者だったからという説を採っている。ただそれだと夫と間が非常に不和だったということを強調している展開は矛盾になる。なおこれについてはお福は実は家康の愛人であって家光は家康とお福の間の子であるという俗説まである。さすがにこれは極端すぎると思うが、私が考えているのは、そもそも本能寺の変については明智光秀と徳川家康の間で裏で密約があり家康は光秀に対して恩義のようなものもあったから、その重臣であった斉藤利三の娘であるお福を取り立てたということ。

 とにかく理由は不明の部分も多いが家光の乳母となったお福は家光が立派な将軍となれるように心を砕くことになる。しかし家光の弟である国松が生まれることで雲行きがおかしくなる。今度は自ら国松を自分で育てたお江は、だんだんと国松のみに愛情を注ぐようになり、やがては国松を次の将軍にと望むようになる。これに危機を感じたお福は駿府の家康の所に直に訴えをしに行っている(一介の乳母がこうして家康と直接に対面までしているのが愛人説まで出る理由にもなっているのだが・・・)。その結果、家康は将軍は長男が継ぐべしという「長幼の序」を明確に宣言し、家光が将軍となることが決定する。

 家光が将軍となった後、お福は乳母として権力を握ることになるが、彼女はそれをひたすら家光のために行使している。また家光が疱瘡で命の危険となった時に、彼女は薬断ちの誓いを立てている。何とか家光が回復した後、彼女はお礼参りとして伊勢を訪れて、その際に天皇に謁見もしたらしいが、その時に天皇からもらった名が春日というものとのこと。

 

 しかし最後に春日局が頭を痛めたのが家光の世継ぎの問題だったという。家光は男色の気があって女性に全く興味を示さなかったのだという(多分強度のマザコンも原因であると私は思うが)。そこで彼女自らが家光の目にかないそうな美女を集めて大奥を作ったのだとか。しかしそれでも女性に興味を示さない家光に春日局は大いに困ることに。そんな時、伊勢で尼となっていた六条有純の娘が江戸城に登城した時、接見した家光はその美少年のような姿に心を奪われたのだという。そこで春日局は彼女を還俗させてお万の方として家光の側室にしたという。ただ残念ながら二人の間に子供は出来なかった。しかしこれで家光の好みを把握した(どうやら家光はボーイッシュな女性が好みのようだ)春日局は、浅草寺の店先で見かけたお蘭というお万の方によく似た少女を見つけ、彼女を大奥に入れる。そして見事に狙い的中、家光はお蘭を寵愛し、二人の間についに世継ぎとなる男子が生まれることになる。

 これで肩の荷が下りた春日局であるが、やがては自らが病で倒れることになる。しかし彼女は最後まで薬断ちの誓いを守ってこの世を去ることになる。

 以上、春日局の生涯。戦国期を生き抜いた女性だけあってバイタリティーや行動力がある女性であることが覗える。今の時代ならバリバリのキャリアウーマンになっていたか、それともカンカンな教育ママになっていたかというところか。なお春日局の回りに伝説めいた話も多く、また将軍位を巡ってのお江との確執も有名。お江が家光を毒殺しようとしたという噂もあるが、そのお江が最後は殺されたという噂もある。まあいずれも真相は闇の中である。