コスタリカのディキス・デルタにある先住民の遺跡が、球状に加工した巨大な石。大きさは様々で大きいものになると数十トンのものまであるという。発掘の結果、これらの石はこ地域に栄えたかつての文明の産物で、一種の権威の象徴であったと推測されるとのこと。実際に権力者の住居跡と思われる場所で入口の脇のところに石が据えられていたという。このような石を作った理由は不明だが、川の流れをイメージしているのではとのこと。つまり命に不可欠な川には水で削られた丸い岩が多数存在する。これからイメージを得ているのではとのこと。これらの石は宗教的儀式には不可欠のものだったらしい。
これらの石は沖合の無人島にも存在しており、その地からはコスタリカ北部で作られた土器の破片も見つかっている。またディキス・デルタの地域は豊富な砂金を産出しており、これらの黄金が取引に使用されていたという。これらのことから、この島はかつてこの地域の海上交易の要だったと推定されている。
古いものは1000年以上前のものもあるというこの石球だが、どうやってこのようなものを作ったかについては意外にシンプルな方法が用いられている。原料はこの島で産出する花崗閃緑岩や斑糲岩などの火山岩で、これに弓のような器具を当てて、その曲線に合わせて石斧などで余計な部分を削っていったと考えられる。単純な方法ではあるが、恐ろしく手間のかかる方法であるため、やはり大きな石はより強い権力の象徴であったと推測される。
このような文明の独自性が評価されて世界遺産に選定されたようだが、この高度な文明も、16世紀のスペインの侵攻で滅んだらしい(その際にさぞかし大量の黄金が略奪されたことだろう)。またここでも欧米人の悪行である。古代南米の文明の盛衰を語る場合、常に最後はヨーロッパの悪行にたどり着いてしまうのである。そして残念ながら、彼らが異種文明を不当に蔑むという悪癖は、未だに白人至上主義などの愚か者がいることからも分かるように、今日でも根本的には変わっていない。