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5/20 BS11 歴史科学捜査班「安倍晴明は本当に悪霊を退治できたのか?」

 「安倍晴明は本当に悪霊を退治できたのか?」・・・科学の目で検証しますと「出来るわけありません!」。と、これなら番組が5秒で終わってしまう。一体どう持っていくつもりなのやら。

 まず番組では平安京の怨霊都市ぶりを紹介。とにかく当時の平安京は、不衛生のせいで疫病は流行る、天変地異は起こる(防災建築なんてないから地震や火事には弱いし、その上に干ばつ、大雨、さらには日食まで天変地異である)、しかもその上に権力闘争で追放されたり葬られる貴族の怨霊まで生み出している(代表格は菅原道真)のでまさに魑魅魍魎、百鬼夜行の世界である。

 また霊界につながっているスポットなども多数。六道珍皇寺には冥界に通じていると言われている井戸があって、ここから地獄に出入りしていたのが「鬼灯の冷徹」の読者ならご存じの小野篁である。まさにあの世とこの世は紙一重の世界だったという次第。

 当時の疫病や災厄は鬼の仕業と考えられていた。そこで平安京では鬼の入口である鬼門には比叡山延暦寺を、裏鬼門には石清水八幡宮を置いて防御した。ちなみにこの石清水八幡宮では怪事がよく起こり、その度に対処法を陰陽師に相談したそうな。このように事件が起こった時にその対処法を提案するのが陰陽師の役割とか。

 この時代には疫病が多かったが、特に猛威を振るったのがマラリアで、平清盛もこれでなくなったと考えられている。マラリアは本来は熱帯の疫病であるのだが、太陽活動の周期の関係で平安時代は今よりも気温が高かったことが分かっているとのこと。そのためにマラリアを媒介するハマダラカが日本にもいたらしい。このような疫病もすべて鬼も仕業であったわけである。

 で、これらの鬼を祓って怨霊を鎮めるために存在するのが陰陽師。彼らは歴とした公務員である。一方、民間の陰陽師なんかもいたようで、彼らは引き受ける仕事は専ら「呪詛」だそうな。要は誰かを呪い殺すと言うこと。実際に当時の呪いの人形なんかも出土しているので、当時の人々が呪いにかけたエネルギーはなかなかに凄まじいものがある。丑の刻参りなんかも真剣に行われていたようだ。たとえ呪術自体には効果はなかったとしても、これだけのパワーで呪われたら、まともな神経している者なら確かにそれだけで病みそうだ。

 安倍晴明はその陰陽師達の中でも最も能力が高いと認められていた人物で、藤原氏に取り立てられていたらしいからその力のほどが覗えるというもの。彼が施したと言われている術の中には、人の命を取り替えて、死にかけている人を助ける(その代わりに誰かが犠牲になるわけだが)というものまであったとか。今の科学だったら誰かをドナーにして臓器移植でもやったのかと思うところだが。また呪われた人に依頼されて、それを呪詛返しするなんてこともやったらしい。

 なおそういう非科学的なものだけでなく、彼は天文学にも通じていたようだ。実際に日食などを予測するには天文学の知識は不可欠であり、彼は天体観測を行って天変地異の予測を行っていたとか。

 以上、安倍晴明について。要は鬼やら怨霊やらが信じられていた時代には、人々が心安らかに過ごすには彼らのような存在が必要だったということ。多分その中でも安倍晴明は天文学や医学の知識に通じていたのだろうと思われる・・・という辺りが妥当な線。

 

忙しい方のための今回の要点

・疫病や天変地異などがすべて鬼や怨霊の仕業と信じられていた平安京では、それらに対抗するための陰陽師の存在は不可欠であった。
・安倍晴明はその中でも特に能力が高いと言われていた人物で、藤原氏にも取り立てられていた。
・安倍晴明は天変地異を予測したといわれているが、彼は天文学に通じており、そこから日食などを予測できた可能性が高い。

忙しくない方のためのどうでもよい点

・安倍晴明ということで例の映画のワンシーンが登場してましたが、映像的な違和感が強かったですね。あのワンシーン見ただけで、あまり出来のよい映画ではなさそうな印象を受けた。
・小野篁いえば「鬼灯の冷徹」の読者には有名な天パの平安貴族です(笑)。あの漫画を読んでいると、地獄の話に自然に詳しくなるので、今回の話なんて非常によく分かる(笑)。病を流行らせる鬼といえば、地獄の獄卒の鬼ではなくて別の存在(疫鬼など)ということでしたね。あの漫画によると。