教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

5/25 BSジャパン 新美の巨人たち「又吉直樹×『五百羅漢図』芝・増上寺に狩野一信の仏画100幅!」

 リニューアルしてから完全に国内限定になってしまったこの番組ですが、今回は都内。とうとう「旅」という言葉さえ外れてしまった模様。やっぱりリニューアルの目的は予算削減か? で、ゲストは一回りしたのか又吉直樹が再登場。彼が増上寺に五百羅漢図を見に行くという話。

 とは言うものの、現在増上寺に展示されているのは100幅の内の10幅なので、番組は又吉関係なしに作品の解説を進める。五百羅漢図というのは仏教における500人の聖者のこと。この作品では彼らの生活、修行の姿、そして悪鬼などとの戦いなどを表現しており、ちなみに又吉訪問時に展示されていたのは羅漢達が霊獣の類いと共に暮らしている図。又吉が「僕は妖怪の類いには詳しい方だけど、これは分かりません」と言っていた額に目がある白い妖怪のようなものは、霊獣である白澤。かなり有名な霊獣ですし、「鬼灯の冷徹」の読者ならすぐに分かるでしょう。そう言えば番組では全く説明がなかった。以前の時も又吉の問いかけは完全スルーだったし。この番組って又吉の言うことは無視することになってるの?

 この作品が描かれたのは幕末になって世の中が不穏になってきて、五百羅漢信仰が高まった頃だという。貴すぎる仏様よりも、もっと人間的な羅漢の方が親近感があってありがたいということであろうか。ただそれにしても狩野一信の描く羅漢図は極端に人間くさい

 彼はこの作品を描くに当たって、増上寺入口にある三解脱門に安置されている宗印一門による十六羅漢像を見ながら描いたとの話があるという。この十六羅漢像も非常に生き生きとした表情豊かな像であり、一信はその影響を受けているのだろうという。

 またこの羅漢図には時代を反映して、洋画的な明暗表現を取り入れている部分もあるという。この辺りも、この作品をパッと見ただけで伝統的な仏画とは違うなと感じる原因になっているのだろう。

 修行のようにこの作品に挑んだ一信だが、96幅まで仕上げたところで病で倒れ、残りは彼の妻と弟子が仕上げたのだという。そうして完成した作品は増上寺に奉納されて今日に至っている。

 番組が国内限定になってしまってショボさは否めませんが、今回は作品が面白かったこともあってそれなりに楽しめました。また番組がほとんど又吉を完全に放り出していたことが幸いしていた感があります。今回の構成で又吉を普通のレポーターにして、ナレーションをあの投げやりなものから小林薫のものに変えると以前のこの番組の構成になります。つまりはリニューアルしてからの中では比較的まともな作りってこと。正直言って、今回の内容に又吉って完全に不要です。何か方針として起用しないといけないから無理矢理に登場させたという印象。いつまでこんなやり方するんでしょうか。ゲストが二回り目に入ったのか、次回はまた要潤だと言ってるし・・・。予算をケチられたとしても、それならそれなりに作り方もあろうというのに。

 


忙しい方のための今回の要点

・増上寺には狩野一信による全100幅の大作「五百羅漢図」がある。
・五百羅漢とは仏教の聖人500人のことで、彼らの生活等を描いたのがこの図である。
・聖人にしてはやけに表情豊かな絵であるが、それはこの作品を描いた狩野一信が参考にした宗印一門による十六羅漢図が表情豊かな像であったからと考えられる。

 

忙しくない方のためのどうでもよい点

・この手の番組は必ず複数班で製作するのだが、その中に比較的まともな班とどうしようもない班が混在している印象ですね。だから今回のようにまだ見れる回と見るに耐えない回が来るようです。となると多分、次回は中身のない見るに耐えない回が来ると思われます。要潤がどうでも良いことをグダグダ言うだけの内容かも。