教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

6/3 にっぽん!歴史鑑定「黒船来航~青い目が見たニッポン」

 今回は黒船来航。しかしこのテーマは既に「歴史科学捜査班」でも「ヒトスリア」でもつい最近にやってます。最後発となるといろいろとネタがツラくなることは予想できます。それにしてもこう立て続けに黒船ネタが来るって、今年って何かこれに関するセレモニーイヤーでしたっけ? ペリー生誕○○年とか。

tv.ksagi.work

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 浦賀沖に4隻の黒船が現れたのは1853年6月3日。ペリーは日本を開国させるという使命を帯びて大統領の国書を携えてきていた。この時の黒船は2500トンの船で、当時の和船の一番大きいもので100トンなので圧倒的な巨船である・・・ってこの辺りは「歴史科学捜査班」でも言ってたな。

 浦賀奉行はとにかく長崎に回ってくれと体よく追い払おうとするが、これに対してペリーは大統領の国書を然るべき立場の人物に渡せないなら江戸に上陸すると脅しをかける。実はペリーは日本人について事前に調査し、幕府に対してどのように対応するかを決めていたのだという。それは「排他的に振る舞い、気難しい人物を演じれば演じるほど、形式と礼儀を重んじる日本の人々はこちらの目的を尊重するようになるだろう」というもの。なかなか日本をよく研究している。それにしてもこの方針って、今でもアメリカに引き継がれているのでは?

 実は日本の方もペリーの来航は事前に察知していたのだが(この辺りは「ヒストリア」にも登場」)基本方針は「穏便に引き取ってもらう」というものだった。しかしペリーの強硬な態度にやむなく国書を受け取ることになる。

庶民も巻き込んでの黒船騒ぎ

 一方、庶民の方は結構たくましいもので、最初こそ黒船を恐れたが、そのうちに好奇心の方が優って黒船見学の民衆が浦賀に集まってきたのだという。そういう連中に望遠鏡を貸し出したり、果ては船で黒船を見学に行くツアーまで登場と、なかなかにいつの時代も商売人はしたたかだったらしい。

 ペリーが渡した国書の要求は、1.国交を樹立して貿易を行う 2.難破したアメリカ船の船員の救助と保護 3.燃料、水、食糧の補給。かつては異国船打払令で外国船は砲撃を追い払っていた幕府だが、アヘン戦争での清の敗北を聞いて方針を変更して、実は既に2と3はもう行っていた。後はどうやって影響を最小にするかということになる。

 この時に老中の阿部正弘はこの国書を広く一般に公開し、日本はどう対応するべきかの意見を聞いたという。様々に意見が寄せられたと言うが、やはり異国船は打ち払うべきというのが多かったとか。中には「うちの木材を使って海中に柵を作って異国船が近寄れないようにする」という材木問屋からの提案もあったと言うから、つくづく商売人は(笑)。なおこの中に「ヒストリア」で出てきた「アメリカ船は補給がないから戦争が出来るはずがない」というものもあったのだろう。

ペリー再来港と幕府の対応

 で、ペリーは予定よりも早く翌年の1月に再訪する。この頃はロシアも日本に貿易を求めるなどの動きを行っており、ペリーとしては急いだのだろうという。また日本で十二代将軍の家慶がなくなった直後だったので、どさくさ紛れにという考えもあったのではとのこと。

 ここで交渉が開始だが、その経緯は「ヒストリア」で紹介されていたものとほぼ同じ。ペリーは日本が異国船に対して攻撃を行っていると批判するが、幕府側の林大学頭は「それは昔の話で、現在は漂流民の保護も燃料などの補給も行っている」と先の2つの要求をあっさりと呑む。さらにペリーは貿易も要求するが、これは「我が国は自国の産物で間に合っている」とあっさりと拒絶。これに対してペリーは意外にも引き下がる。今回は国交樹立だけで良しと考えたのだろうとのこと。

ペリーを驚かせた日本の風俗

 一方交渉の傍らでペリーは日本の風俗等に大いに驚いたという。特に銭湯の混浴については日本人の倫理観はどうなってるんだとかなり驚いたらしい。また日本人の手先の器用さについても驚き、日本が欧米の技術を習得したら強力なライバルになると考えたという。

 交渉については開港する港の件で紛糾する。ペリーは北海道と太平洋岸に複数の港を開港することを要求するが、これに対して林大学頭はまずは長崎で5年後にどこかを開港するとの提案で完全に平行線になる。

日米贈り物合戦

 そこでペリーは大統領からの土産物を贈呈したいと提案する。ここで登場したのは機関車の模型と電信機だったという。アメリカの技術力を誇示する目的があったのだが、日本側は興味津々で日本人の好奇心の強さにペリーは感心したようである。一方これに対して日本側が返礼として送ったのは米と酒だが、これを50人の力士に運ばせている。筋肉隆々とした力士にペリーは「ヘラクレスのような肉体」であると驚いたらしい。また腕自慢の水夫が力士に勝負を挑むという一幕もあったが、力士はこれを一撃で打破「強さの秘密は日本の米と酒だ」と言い放って大いに日本の面目を施したとか。

 結局港の件は決着が付かず、林大学頭はこれを江戸に持ち帰って要人らと審議。結局は函館と下田を開港するということになってペリーもこれを承諾。条約が締結される。

 この後は条約締結を祝ってのパーティーとなり、かなり打ち解けたものになったというのは「ヒストリア」でも言っていた通りである。

 ウーン、今回の番組単独ではまずまず面白い内容なんですが、どうしても最後発の悲しさでほとんどのネタが被ってしまって新味はなかったですね。まだ「歴史科学捜査班」は若干切り口が違いましたが、「ヒストリア」とはまともに被ってしまいました。まあ今更新事実発見なんて都合の良いものはそうそうないですから、テーマが被った以上仕方ないことですが。

 


忙しい方のための今回の要点

・ペリーは日本人について調査した結果、日本人に対しては気難しい人物を演じた方が意見が尊重されると判断して、幕府に対して強硬な姿勢に出た。
・幕府は対応について大騒ぎになっていたが、どっこい庶民は黒船見物という逞しさがあった。
・阿部正弘は大統領からの国書を広く一般に公開して意見を募った。
・ペリーは日本の銭湯の混浴に驚き、また日本人の手先の器用さには感嘆した。
・アメリカの最新技術を誇示する贈り物に対し、日本は力士に米俵を運ばせてアメリカを圧倒している。


忙しくない方のためのどうでもよい点

・何か聞いていると、この頃の日本の幕府の方がまだ今の日本政府よりもまともな外交交渉をしているように思えるんですよね。今の日本政府の外交って、アメリカの要求に対してはすべて丸呑みするだけのアメポチ外交ですから。元々日本は大国・隋に対してまで「日出ずる国」とハッタリかました結構したたかな国のはずなんですが・・・。
・で、次回は「古墳」・・・これもまた「ヒストリア」と被ったような。まあ旬なテーマだから仕方ないのかもしれないけど。