教養ドキュメントファンクラブ

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6/15 BSジャパン 新美の巨人たち「長沢芦雪『虎図』×井浦新、楽園の地・紀州串本に"虎"を見た!」

 今回は串本の無量寺にある芦雪の「虎図」。これは私も現地に見に行きましたが、お寺の前に美術館・・・というよりも倉庫があってそこに収蔵されています。入場料を払うと誰でも見れますが、雨の日は公開していないので要注意です。これは雨の日は入口を開けると雨が吹き込んでしまうからとのこと。この辺りは風が強いので吹き降りになるらしいです。またさらに湿度の問題もあるのでしょう。

 井浦新氏が「虎図」を見て、筆の速さや力強さがスゴいという旨を言っていますが、それはその通りです。この作品を見ると誰でもそれに圧倒されます。ちなみに井浦氏は「3~40分ぐらいで描き上げたのでは」と言ってますが、さすがにそれは無理でしょう。

 番組では虎図の原寸大復元を水墨画家の大竹卓民氏に依頼していますが、彼が複製を描き上げるに3時間半、彼の言によると復元だからこの時間であり、芦雪が本画を描くのにはもっと時間がかかっただろうとのこと。実際に筆をとっかえひっかえで描いてましたので、そういうところは時間はかかると思う。多分井浦氏は一本の筆で興に任せて一気に描いたと考えたのでは。なお大竹氏によると、また芦雪は筆の様々なタッチを見せることを計算してこの作品を描いているのが分かるとのこと。つまりは単に勢いに任せては描いていないようである。

 さて芦雪であるが、彼は円山応挙の弟子である。円山応挙自身が当時では型破りな画家だったのだが、芦雪はその型破りなところを受け継いでいるというのが福田美術館学芸課長の岡田秀之氏の言。

 で、芦雪がこの作品を描くことになったいきさつは、津波で流された無量寺を再建した住職の愚海が応挙に絵を依頼に来たことから。応挙はかつて無量寺の再建がなった時には絵を描くことを約束していたらしい。しかしこの時の応挙は都合が悪くて串本に行くことが出来なかったので、芦雪を代わりに派遣することになったという次第。そして芦雪はこの地に5ヶ月滞在するのだが、師匠からの束縛から離れたのが余程楽しかったのかどうかは分からないが、見事にはっちゃけて、この虎図以外にもあちこちの寺に多数の独創的な作品を残しているのである。

 なおこの虎図の裏には魚を狙う猫の絵が描いてあって、実はこの虎図は魚から見た猫の姿という話がある。また龍図の裏には遊ぶ童子が描いてあるのだが、その一人がネズミを見つめている図があり、実はこの龍はこのネズミなのではとの解釈も出している。

 今回は結構まともな内容だと思いました。特に作品を前にしてゲストの感想とかよりも、先に作品の解説を入れたところは正解。私の頭の中では小林薫の声で再生されていました(笑)。それとゲストのコメントが無理に知的ぶろうとしている又吉などと違って、そう的外れなことを言ってなかったことも大きいでしょう(制作時間は大きくはずしましたが)。ただ今回の内容自体は、実は大分昔にこの作品を扱った時のものとほとんど同じで、その時の話にゲストを加えて内容を薄めたというだけなんですよね・・・。結局これだと、昔の番組を再放送すれば良いじゃんということになってしまうのですが。

 


忙しい方のための今回の要点

・無量寺の「虎図」を描いた長沢芦雪は円山応挙の弟子で、応挙の型破りさをもっとも受け継いだ画家と言える。
・「虎図」は筆の勢いに任せて描いたように見えるが、実は芦雪が筆のタッチを見せようとしてかなり周到に描いている作品である。

 

忙しくない方のためのどうでもよい点

・無量寺にいけばこの作品を見ることは出来ます。番組でも出ていたようにかつての配置のままで展示しているのでイメージをつかむことが出来ると思います。なおこの作品はちょくちょく展覧会などに出張していることがあるので、訪問する際にはそこを確認しておく必要があります。それと天候にも注意。