今回は福島の諸橋近代美術館にシシド・カフカが訪問。この美術館はダリコレクションで有名だが、そこに展示されている大作「テトゥアンの大会戦」を中心にダリの紹介。
大会戦の絵に秘められた謎
テトゥアンの大会戦とはモロッコ軍とスペイン軍との戦いで、この絵の光景はスペイン軍に勇敢に立ち向かうモロッコ軍だという。しかしさすがにダリだけあって普通の絵ではない。よく見ると絵の中で剣を振り上げているのは、ダリとその妻のガラである。
ダリにとって妻のガラは何よりも大事な最愛の人だった。画家になるも個性に乏しくなかなか売れなかったダリにとっての転機がシュルレアリスムとの出会い、その中でダリは10歳年上の人妻だったガラと出会い、恋に落ちて二人で逃げたのだとか。
ガラは優秀なアドバイザーでもあり、ダリの才能を開花させることになった。ガラの「緻密に描くのがあなたの強み」というアドバイスに従ったのか、ダリが描いた名刺よりも小さいという絵画「ロートレアモンのカマキリの人肉食」という作品がテレビ初公開だが、レンズで見ないと分からないような緻密な描き込みを行っている。そしてその後、ダリと言えばその象徴のようになっている溶けた時計が登場、ダリの評価は不動のものとなる。
ダリと妻のガラの微妙な関係
しかしダリがガラを何よりも大事に思っているのに反して、二人の関係は難しいものになっていく。ガラは非常に奔放な女性であり、ダリという夫がいても他の男性と盛んな婚外関係を結んでいたのだという。ダリはガラの気を惹くために宝石を買い与えたり、さらには城まで買うのだが、その城でガラは若い燕と暮らす状態とか。この頃になるとガラはダリに高値で売れる絵を描かせ、その金で男と遊び暮らすという状況でダリは完全に金づるにされてしまっていたらしい。
ガラは死後にはその城に葬られたらしく、その隣にはダリが葬られるはずの石棺があるのだが、ダリは結局はそこに入らずに自らの美術館に葬られることを選んだとか。先の「テトゥアンの大会戦」の絵には後ろに立ち女神としてのガラの姿があるのだが、そこに鋭い刃がむいており、それはダリの心の奥底にあった反抗心を象徴しているのではとのこと。
なんか悲惨な話でしたが、要は最初から不倫をするような相手は、結局はまたそれを繰り返すということのような気がしますね。概して略奪愛の類いはこういう結末になる。
今回は少ない予算と制約の中で何とか少しでもまともな番組を作ろうとしたのではということを感じられましたね。ダリに関しての紹介も結構してましたし。かなり以前の雰囲気に近い作りになっていたようには感じました。途中の「ダリ劇場」なんて明らかに昔の絵画警察とかのノリに近いものがありますし。リニューアル後にかなり不評であることは、もう現場にも伝わってはいるのでしょう。シシド・カフカばっかりを追っかけていたダメダメの前回とは大分印象が違いました。それでもやはりゲストのプロモーションはしないといけないノルマがあるのか、意味のないグルメコーナーなんかが付いてましたが。しかしこうなると、やっぱりゲストがいらないという結論になってしまうのですが。
忙しい方のための今回の要点
・福島の諸橋近代美術館に展示されているダリの大作「テトゥアンの大会戦」にはダリと妻のガラの姿が描き込まれている。
・ダリは自らの才能を開花させたガラのことを非常に大切に思っていたが、ガラは他の男性とさかんな婚外関係を結ぶようになり、ダリは金づるにされてしまう。
・この絵には女神に見立てたガラの姿も描かれているが、そこに刃が向けられており、これはダリの中にあった反抗心の表れではとの解釈を示している。
忙しくない方のためのどうでもよい点
・まあ不倫の関係なんて結局は幸せにはなれませんよと言うお話でした・・・違うか?
・個性のない画家がインパクト勝負を目指して、結果としてシュルレアリスムに至ったか。絵の下手な漫画家がインパクト勝負で、人類が巨人に貪られる漫画を描いたという話に似ているな(笑)。