教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

6/23 NHKスペシャル「スペース・スペクタクル 第1集 宇宙人の星を見つけ出せ」

 宇宙に地球以外の生命体の星は存在するのか。これは長年の謎であるが、現代の科学者の多くはあるに違いないと考え、さらには知的生命体の存在もあり得るとしている。

宇宙人による宇宙船? が太陽系に飛来

 最近世界を騒がせた出来事に、オウムアムアと呼ばれる高速移動する400メートルの細長い物体が観測されたことがあった。この物体は太陽系の外から飛来した上に、物理法則では説明できない謎の加速をしていたために、知的生命体によって作られた宇宙船ではないかと考えられたのだという。結局は多くの謎を残してオウムアムアは去って行ったのだが、これが科学者達に与えたインパンクとは大きかった。

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オウムアムアの想像図

 


生命の存在についての考え方の大転換

 最近になっての大きな考えの転換としては、今まで生命の存在を考えていなかった赤色矮星の惑星にこそ生命がいるのではという説である。今までは生命は地球に似た環境の惑星でしか存在できないと考えていた。しかし地球の太陽のような明るい星の回りでは水が液体で存在することが難しく、見つかった多くの惑星は恒星に近すぎて灼熱の世界であった。しかしもっと温度の低い赤色矮星では恒星の近くでも水が液体で存在できる惑星があることが予測できるという。

 

大気循環による生命存在可能圏

 ただしこれらの惑星では別の問題がある。それは潮汐ロックという現象。恒星の重力の影響が強いために惑星の同じ面が常に太陽に向かうようになってしまうのである。これだと惑星の半面は灼熱地獄で残りの半面は氷の世界になってしまう。実際に大気のない惑星だと気温差は400度にもなるという。

 しかし大気のある惑星では話が変わる。大気を使って熱の循環が起こるのである。もっとも恒星の光を受ける箇所では超巨大な積乱雲が発生してここから莫大な量の雨が降る。しかしこの雨は灼熱の大地に届く前に蒸発して水蒸気となる。この水蒸気が大気の循環で反対の面に向かって熱を運ぶことになる。これによって反対の面でもマイナス20度程度まで温度が上がるのだとか。そして両極の間にトワイライトゾーンと呼ばれる生命の存在に適した地域が出来ることになるという。

 

どんな生命が存在する?

 現在、探査機TESSが全天の観測を行って多くの赤色矮星の惑星の存在を確認しているという。これらの惑星の中には生命が存在する惑星があるかもしれない。

 どのような生命が存在するかの仮説も唱えられている。大気中を風船のように飛びながら微生物を食べる生物、両生類のように海中から地上まで生活する生物、さらに昆虫のような外骨格を持って空を飛ぶ肉食生物など。赤色矮星では進化に十分な時間があるため、これらの生物の中から知的生命体が登場する可能性もあるとしている。

 

生命の存在の兆候の探査

 さらに生命体が存在した場合に大気中に発生する可能性がある酸素、二酸化炭素、メタンなどを惑星の大気を通過する恒星の光を観測することで検出しようという試みもなされているとか。ただ一つ気になったのは、酸素はともかくとして二酸化炭素とメタンは火山活動等でも自然に発生すると思うのだが、どうやって区別するんだろう?

 

 知的生命体についての最新研究だが、赤色矮星というのは盲点だったようだ。今までは地球はありふれた星のはずと考えられていたのだが、どうも最新の研究ではむしろ地球は非常に変わった星であるということが主流になってきたようである。ただそれだと生命が生まれる確率は著しく低いということになってしまうので、他のもっとありふれた星で生命が生まれる可能性について検討したということだろう。

 ただもし知的生命が発見されたとしても意思疎通は困難だろう。そもそもの考え方自体が根本から違うだろうし、コミュニケーション手段も違うだろう。人類はコミュニケーションを主に音声によってとるが、これが磁気やら温度とかなんかだったら、人類にとってはどうやってコミュニケーションするかなんて想像不可。ましてやコミュニケーションといった概念すらない可能性もある。互いに意図せずに非友好的な接触になる可能性もある。間違っても宇宙艦隊で戦争するというようなイメージではないが、お互いによく分からないまま相手の生存に致命的な打撃を与えてしまう可能性なんかもあり得る。

 

忙しい方のための今回の要点

・最近にオウムアムアと呼ばれる知的生命体による宇宙船ではないかという物体が観測されて大騒ぎになった。
・今までは生命は存在しないと考えられていた赤色矮星の惑星に、生命が存在できる可能性が浮上したことから地球外生命の存在はかなり現実化している。
・これらの惑星は朝夕ロックによって常に太陽に同じ面を向けているが、大気の循環によって温度差は緩和されるので、トワイライトゾーンと呼ばれる生命の生存に適した地域が存在する。
・現在、探査機TESSが生命が存在する可能性のある惑星を探す観測を実施中。
・また生命活動によって発生した酸素、二酸化炭素、メタンなどを検出するための観測も実施されている。

 

忙しくない方のためのどうでも良い点

・オウムアムアが宇宙人が作ったスペースヨットではという仮説をイメージで出してましたが、そうだとしたらかなり雄大なお話です。またこれが探査機だとしたら、地球に生命の知的生命の可能性を探査しに来たということも考えられます。人類が今まで宇宙に向かって発信してきた電波をキャッチしたとか。もしそうだったら、今回の観測で地球に知的生命の存在を確信して、さらに第二、第三のアプローチがあることにななるのではと思いますが。
・もしそれが来たら、どうやってコミュニケーションできるんでしょうね。次にやって来るのが好戦的な大宇宙艦隊なんかでないことをとりあえずは祈りますが(笑)。まさか人類の愚かさが全宇宙共通とは思いたくないので。