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7/3 NHK 歴史秘話ヒストリア「よみがえる大坂の陣 幻の金屏風 誰が描かせたのか」

 大坂の陣を描いた屏風と言えば大坂夏の陣屏風が有名であるが、この度大坂冬の陣を描いた屏風が完成当時の色彩で復元された。それを紹介しつつ、大坂冬の陣を考察する。

狩野家に伝わる下絵を本画に復元

 今回の屏風はそもそも御用絵師であった木挽町狩野家に伝わっていたもので、原本はほとんど色が付いていない。しかもよく見るとあちこちに「朱」などの色の指定が書き込んである。つまりはこの絵は本画を制作するための下絵であったと思われる(何となくアニメの絵コンテを連想する)。しかしこの作品の本画は伝わっていないことから、この絵を元にして色彩を復元したというわけである。この復元のプロジェクトには歴史学者や日本画家、さらには城郭研究家の千田氏(ここのところ引っ張りだこだな)も参加し、凸版印刷が手がけたようだ。

改めて明らかになった冬の陣の模様

 こうして鮮やかな色彩で甦った冬の陣屏風だが、色彩が復元されたことでよく分かるようになったことがいろいろあるという。

 まずは鮮やかな真田丸。赤備えの真田軍が攻め寄せてくる徳川軍を櫓からの射撃で撃退している様子が描かれている。なお攻め手の徳川軍にも赤い軍勢がいるのだが、多分あれは井伊家だろう。また城の周囲の堀を見ると堀の中にバリケードが築いてあり、容易には接近できない様が理解できるという。

 これに対して徳川方は塹壕を掘って接近していることも描かれている。ここで番組では塹壕をヂグザグに掘る理由を、敵の弾から隠れやすい、爆弾などを投げ込まれた時に被害が広がりにくいなどと軍事的観点の説明を入れているが、そこまでの説明がいるか?

ところでこの屏風を描かせたのは誰?

 で、問題となるのはこの屏風を誰が描かせたかという点。一般的な考えとしては、大阪城が中心に描かれ、さらに周囲には大阪方が勝利を収めた戦いの光景(真田丸の戦いなど)が描かれているために、豊臣方の人間、もしかしたら豊臣秀頼が発注したのではというものである。もし秀頼が発注したなら、本画の完成の前に豊臣家が滅んでしまったので、未完成のまま下絵のみが残されたという説明も付く。

 しかし千田氏などはこれに異論を唱える。千田氏が注目したのは、徳川方の陣に攻撃拠点として築かれた築山の位置。ここに描かれた築山の位置が、第二次大戦後に米軍が撮影した焼け野原になった大阪の町を撮影した写真から見出した築山があったと思われる位置と見事に合致しているというのである。また秀忠の陣が詳細に描かれている上に、全体の大名の配置などの徳川方の情報がしっかりと描かれていることから、発注したのは秀忠ではないかとしている。大坂冬の陣は秀忠にとっては将軍になってから初めての戦であり、秀忠にとっては華々しい記録であったので、それを残したのではとの考え。


 以上、今回は大坂冬の陣屏風について。なお誰が発注したかについては、私はやはり秀頼ではという説を採ります。徳川方の情報をキチンと描きすぎと言いますが、築山の位置やら陣の配置とかそんなものは、豊臣軍は長期に渡って徳川軍とにらみ合いの小競り合いをしていたわけですから、自ずとその程度の情報は豊臣方にも分かっただろうと思います。番組では参加した徳川方の大名でさえ、自分の陣地のことは詳細に記録を残しているが、隣の陣のことは適当に書いてあるぐらい情報がなかったという言い方をしていますが、それは情報がなかったのではなく、単に隣の陣地なんかどうでも良かったのでしょう。動員されている大名にとっては、自分達がどれだけ活躍したかのアピールが重要であって、隣の大名のことなんて気にしていないでしょう(むしろ競争相手)。それに対して、戦っている豊臣方にしたら相手の布陣などは非常に重要な情報ですので、その辺りは詳細に探っていたはずです。

 


忙しい方のための今回の要点

・この度、大坂冬の陣の光景を描いた屏風の下絵から、完成状態の屏風を復元するプロジェクトが行われた。
・復活した極彩色の屏風からは、冬の陣の戦の風景が生々しく読み取れ、真田丸の攻防の様子なども覗える。
・この屏風の発注者については、豊臣秀頼という説があるのであるが、徳川方の情報などが詳細に描かれていることから、徳川秀忠が発注したのではと考える者もいる。

 

忙しくない方のためのどうでもよい点

・何より秀忠が発注したとしたら、徳川の分の悪い戦の光景なんて絶対に描かせないと思うんですよね。秀忠は自分は戦が弱いというコンプレックスを持ってましたし、またそのことを公然と認めるような器の大きな人間ではないので(笑)。
・で、この駄目な二代目がいかにして名将軍へと成長したかは、7/4に「偉人たちの健康診断」で扱う模様。こっちも見ないと(笑)。