教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

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番組リスト

7/11 BSプレミアム 偉人達の健康診断「西太后 悲しき悪女のアンチエイジング」

 清朝末期に権勢を振るい、敵対者などを実力で排除したために希代の烈女や悪女とも言われている西太后が今回の主人公。

皇帝の皇妃となって太后として権力を握る

 西太后は満州族の中流役人の家に生まれたが、咸豊帝の3番目の皇妃に選ばれたことで人生が代わる。それからの彼女は皇妃として健康な子供を産むために中医薬で体調を整えるなどの努力をしていたという。それが功を奏したか、22才で同治帝を出産する。

 しかし彼女が27才の時に咸豊帝が病で死去、後を継いだ同治帝も19才で亡くなってしまう。そこで幼い甥の光緒帝を即位させ、咸豊帝の正妻である東太后と共にこれを補佐して国政を行うことにする。なお番組では触れていないが、東太后はこの後に突然病死しており、西太后に暗殺されたとの噂もあったようだ。また政権掌握の過程で西太后は咸豊帝の重臣を処刑するなどしているので、既にこの時点までに実はかなりの血を流している。

更年期障害を中医薬で克服

 こうして清国を支えることになった西太后だが、46才の時に謎の病気で倒れている。西太后に関しては詳細なカルテが残っているのでそれを解析したところ、彼女の病気は更年期障害だったと推測されるとのこと。これに対しては中医薬の延齢益寿丹なる薬を処方して服用している。この延齢益寿丹は精神を安定させたり不眠を解消したりする生薬が含まれているという。さらに注目すべきは遠志という生薬で、これは神経伝達物質であるアセチルコリンを増加させ、アルツハイマーなどの認知症に効果があるとされている生薬であるとのこと。

 西太后は老化防止に中医薬を服用することに気を使っていたようで、飲みにくい生薬をスイーツのように加工して常に服用するということをしていたらしい。番組では彼女が常用していたという八珍こうなるものを復元していたが、スパイシーな蒸しケーキといった趣らしい。また西太后は毎食150皿もの料理を用意させ、食費は1日で1000万円という贅を尽くした生活をしていたという。

 

危機からの復活と病をおしての権力復帰

 しかしそんな西太后に危機が訪れる。列強からの圧力を感じていた彼女は、義和団の乱に乗じて列強に宣戦布告したは良いが、圧倒的な軍事力で敗北して身一つで西安まで逃亡することになってしまう。この時に逃げ込んだ農家で庶民の主食であるトウモロコシを原料としたパンを食べたらしいが、空腹であった彼女はそれが非常に美味しかったらしく、後に宮殿に戻ってから料理人に再びそれを作らせたとか。

 光緒帝が19才になった時に彼女は隠居するのだが、光緒帝が日本と手を組んで国内の改革を目指したことから、日本の傀儡にされる危険を感じた彼女は光緒帝を幽閉、再び権力の座に復帰することになる。しかし実はこの時には既に彼女の体はボロボロだったという。そんな彼女の体調を保ったのは騎馬民族であった満州族に伝わる治療法、推拿というマッサージとのこと。これはマッサージで血流を良くすると共に、ツボを刺激することで自律神経を整える働きがあるとのことで、現在の中国でも医療として用いられているとか。

 しかしそうやって必死で清国を支えた西太后であるが、1908年に72歳で亡くなる。清が滅亡したのはその3年後である。


 この番組では西太后を清国を必死で支えたけなげな女性という描き方をしていますが、実際には番組では触れてはいませんが、政敵になる人物を次々と処刑しているというのは事実なんですよね。また光緒帝を幽閉した後、毒殺したという噂もあるようです。真偽のほどは分かりませんが、そういう噂が出ても仕方がないぐらい粛正が多かったのが事実のようです。もっとも彼女の立場からすれば、そうでもしないと傾きかけた清国は支えようがなかったということなんでしょうが。それと彼女の死後に清国は滅んでますし、彼女は列強に対して敵対的な姿勢を取ってましたから、彼女のことをかばう立場の者は誰もいないので、悪評にどんどんと尾ひれがついたというところもあるだろうとは思います。

 

忙しい方のための今回の要点

・西太后は若い頃から体調を整えるのに中医薬を服用していた。
・彼女が46歳で倒れた時の病は更年期障害だと推測されるが、この時に彼女が服用した延齢益寿丹には精神を安定させる生薬などと共に、アルツハイマーに効果があるといわれている遠志も含まれている。


忙しくない方のためのどうでもよい点

・まあ彼女には彼女の立場はあるでしょうが、それにしても血を流しすぎているというのも事実でして、悪女かどうかは立場によって変わるでしょうが、烈女であるのは間違いないですね。
・映画「ラストエンペラー」はちょうど彼女が亡くなった直後から話が始まります。結局は彼女は清朝を支えたゴッドマザーであり、彼女が亡くなった後にはもう清朝を支えられる人間がいなかったのは事実のようですね。
・ちなみに西太后については、呂雉(劉邦の嫁)、則天武后と並んで「中国三大悪女」なんて称号までついてます。まあ大勢殺して権力を掌握したというのが共通項です。もっとも昔の世の中だと、女性が権力を握ったというだけでも悪女扱いされるのですが。

 

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