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8/22 BSプレミアム ダークサイドミステリー「あなたの知らない童話の闇 夢か悪夢か本当か?」

 随分昔に「本当は恐ろしいグリム童話」という本がヒットした記憶があるが、実は洋の東西を問わず、童話といわれている話の裏に非常に怖い事実が潜んでいる例がある。

  

実際の事件に基づいたハーメルンの笛吹き伝説

 まずそもそも不可解な話とされている「ハーメルンの笛吹き」の話。グリム童話に収められている話だが、笛を吹いてネズミを駆除した旅の男が、金を払い渋る町の人に怒って子どもを連れて行ってしまうという話である。実はこの話には元ネタがあるのだという。ハーメルンの町には、実際に余所者が130人の子どもを連れて行方不明になったという事件の記録が残っているそうな。この子どもの集団失踪の真相とは?

 1936年のヒトラー政権の時代、ハーメルン事件の謎を解き明かす資料が発見された。それはリューネブルクの手書本というもので、ハーメルン事件について記述している最も古い資料だという。それによると「1284年に30歳くらいの若い男が町で笛を吹き、笛を聞いた子どもたち130人が男に従って処刑場の辺りまで行って姿を消した」と記録されているのだという。

子どもたちはどうなった?

 子どもたちはどうなったのか? 戦争に駆り出されて死んだという戦死説、ペストで死んだという病死説など様々な説があるが、郷土史家によると山に埋められた穴があり、子どもたちはそこで死んだと考えられるとのこと。この山はキリスト教以前の古代信仰の聖地であり、笛吹き男は子どもたちをつれてここで古の神々を讃える祭を行った。しかしその祭は性行為も含む騒ぎであり、カトリックとしては許すことが出来ないので領主の部下たちが生き埋めにしたという説を彼は唱えている。一方別の人物は、教会から異端として疑われた若者たちを街の人々が自ら殺害し、後ろめたさから笛吹き男伝説をでっち上げたというのである。

 また東方移民説というものもある。この時代は子どもが増えて人口が過密になりつつあり、城壁で居住スペースが限られた中世の都市では、長男以外は町を出て行かざるを得なかった。そこで移民請負人がうまく子どもたちをダマして東に連れて行ったという説である。またこの際に「聖地巡礼する」とダマして連れ出したという説もあるという。実際にドイツの東からポーランドにかけての地域には、この周辺の地名と同じ地名の都市がいくつかあるという。とにかく諸説諸々であるが、いずれの説も決定打がないとのこと。

グリム兄弟の目的

 さてそもそものグリム童話の話だが、これはグリム兄弟が蒐集した各種の民話である。この時代はナポレオン支配化でドイツは小国に分裂しており、ドイツの統一が懸案となっていた。そんな中でドイツの民族意識を盛り上げるという目的もあって彼らはこのような話を蒐集したとのこと。「メルヘン」というのは夢が一杯の物語という意味ではなく、元々はちょっとした知らせや噂話という意味があるという。だから彼らの話の中には「継母が子どもを殺してシチューにして父親に食べさせたとか」「豚の解体ごっこをしていて本当にのどを刃物で掻き切ってしまった」などの残酷で衝撃的な事件のエピソードなども収録されているという。

 

本当に怖いヘンデルとグレーテル

 さらに問題となるのはヘンデルとグレーテルの物語。彼らは森で悪い魔法使いに捕まるが、計略で魔法使いを殺してその宝を持って無事に帰ってくる。しかしこの話もよくよく考えていると、そもそもヘンデルとグレーテルは口減らしのために親に森に捨てられたのだという。この時代は凶作などで貧乏人に餓死者などが出ていた時代だという。だから子どもや年寄りは森に捨てられることがあったとのこと。また魔法使いだが、これはまさに魔女狩りが横行していた時代の産物である。そもそもこの時代には森には薬草などを採るために住んでいた者などもいたということで、要はこの事件は、ヘンデルとグレーテルの二人がそのような老婆を殺害して財産を奪ったという強盗殺人事件だというのだ。しかし二人が老婆が魔女だったと言ったことで罪にはならなかったという話と考えられるとのこと。非常に血生臭い事件になってしまった。

したたかかつ逞しく自ら運命を切り拓くシンデレラ

 最後はシンデレラだが、今日有名なシンデレラの物語はフランスの宮廷詩人ペローが、貴族の子女向けにアレンジしたものであり、グリムの元々の話はかなり違うという。グリムの話に登場するシンデレラはもっと逞しくしたたかにのし上がっていく強い女性の物語になっている。

 それは母を亡くした少女が継母に虐められるというのは同じらしいが、魔法使いなどは出てこない。彼女は父親にお土産としてハシバミの若枝を頼むのだという。そして彼女がそれを植えると大きく育つ、そこでそのハシバミに願ったところドレスがもらえるというようになっているらしい。どうも分かりにくい話だが、ハシバミというのは財産分与を意味する象徴なのだという。つまり彼女が父親からハシバミの若枝をもらって植えて育てたというのは、母親の残した財産の分与を父から受け、それを彼女が増やしたということを意味するとのこと。なかなかに逞しいシンデレラである。

 また王子とのいきさつもさらに逞しい。彼女は3回舞踏会にでかけているが、その度に自分の正体を隠すべく屋敷に駆け戻ったのだという。王子はどうしてもシンデレラの正体を確かめたいと3日目には階段にタールを塗っておく、すると彼女の靴がそこに貼り付いて残ったのだという。なかなかタフなシンデレラであるが、当時の王子の后としては体が丈夫であることも求められたから、その条件を満たしているというアピールにもなるのだという。

 そしてその靴を持って王子が現れてシンデレラを見つける。当時は娘の結婚相手は親が決めるものであるから、継母は妨害しようとするのであるが、公衆の面前で決定的な証拠を突きつける形ではどうしようもないのだとのこと。ちなみに靴を履かせるというのは求婚するという意味になるという。つまりはシンデレラは積極的に自ら策略と行動で道を切り開いた非常に逞しい女性だったということになる。小国分裂してナポレオンに支配されていたドイツでは、このような逞しさこそまさに求められていたものだったのだという。


 グリム童話が単なる夢物語でなく、当時の世相なども反映した結構ハードなものであるということを解説したのが今回。なかなかに興味深かったです。ちなみに残酷なのはグリム童話だけでなく、日本昔話なんかでも大概です。「カチカチ山」なんて必殺ばりの復讐物語ですし、それ以外にも結構人死にの出る話は多いです。こういうのも世の中を反映しているのでしょう。

 


忙しい方のための今回の要点

・ハーメルンの笛吹きの物語は、実際にハーメルンで起きた児童失踪事件を元にしている。
・その真相は未だ不明であるが、東方移民説などが考えられている。
・ヘンデルとグレーテルの物語は、二人が森に住む老婆を殺害して財産を奪った強盗殺人事件だったが、二人が老婆を魔女だったと言ったことで無罪になったと考えられる。
・シンデレラは単に王子様を待つ女性ではなく、自ら逞しく運命を切り拓いた女性であった。

 

忙しくない方のためのどうでもよい点

・まあ待ってるだけでは王子様とは結婚できませんということでもありますね。そういう意味では結構シビアな現実主義かな。今時の桃太郎だったら鬼ヶ島に乗り込む時、犬猿雉が危険作業手当を要求するんだろうか(笑)。