教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

9/1 サイエンスZERO「新事実続々 解明が進む"活断層地震"の謎」

 2016年、熊本地方に甚大な被害をもたらした直下型地震。この地震は活断層によって発生した地震であった。この地震を詳細に調査することで、活断層地震について分かってきたことがある。それを紹介。

日奈久断層で大型地震が発生する可能性

 まず今回の地震を発生させたのは布田川断層帯と日奈久断層帯が連なる地域の北部で発生しており、南部の日奈久断層帯は関与していない。そのためにこの断層はまだ地震のエネルギーを蓄えていると推測される。そこでこの断層近くを掘って、実際に断層を確認するという作業が行われた。

 解析の結果、地震の周期が推測され、それから考えると比較的近い時期に地震が発生する可能性が示唆されたという。また地面に震動を与え、跳ね返ってくる震動から地下構造を推測する調査を行った結果、日奈久断層の東側は500メートルに渡って弱い地盤が堆積していることが判明したという。このことから日奈久断層で地震が発生した場合、その東側に当たる熊本市街などでは震度7の強い揺れが襲う可能性があるという。

 

地表断層周辺で被害が大きかった理由

 またこの地震では地表断層という断層による地面のズレが地表に広範囲に現れているのが特徴である。これは浅い震源の強い地震の時にだけ現れる現象であるという。今回、この地表断層と災害被害を調査した結果、断層の近くで被害が大きいことが判明した。

 この結果は我々のような素人には当たり前のようにも感じられるのだが、実は専門家にとっては意外な結果であるという。と言うのは、地震を発生する断層のズレは深さ10キロほどのところで発生するため、その地震波は広範囲に拡散し、断層の近くにだけ被害が集中するということは通常は起こらないからだという。今回は何か特別なメカニズムが働いたと考えられるという。

 これを説明する仮説としては、今回の地震は断層の端の方の新しい断層で発生しており、新しい断層は今まで何度も滑りを起こしている古い断層よりも摩擦が大きいと考えられることから、深いところで揺れが発生してからさらに浅いところでも揺れが発生したと推測されるとのこと。

長周期パルスが高層建築に被害を与える

 さらにこのように地表断層が現れる地震の場合の固有の減少として長周期パルスの発生があるという。これは通常の地震の1秒程度の周期の揺れでなく、2~3秒周期の大きな揺れが1度パルスのように現れる現象である。地表断層が現れるタイプの地震では、地表自体が大きく移動するため、それに付随しての現象である。しかしこの長周期パルスは15階立て以上の高層建築に大きな揺れをもたらすことが知られており、それに対する対処が求められる。


 以上、活断層地震についての調査報告。全国に断層は2000以上あり、あまりに数が多すぎるために調査は全く追いついていないというから恐ろしいところである。また以前にはスローステップなるものが解説されていたが、そんなこんなを考えていたら、日本全国いつどこで大地震が発生しても不思議ではないということになってくる。これは日本列島に住む者に対する宿命のようなものである。それだけにもし地震が発生しても被害を最小にするための取り組みは欠かせないものとなる。となればやはり来たるべき首都直下型地震に備えての都市機能の分散というのが不可欠と私は考えるのだが、それは実現できるのであろうか?

 


忙しい方のための今回の要点

・2016年の熊本地震の研究から、活断層地震について新たな事実が分かってきた。
・今回の地震に関与していていない日奈久活断層帯はまだ地震のエネルギーを蓄えており、地震発生周期の調査によると比較的近い時期に地震が発生する可能性が示唆されている。
・また今回の地震では地表断層の近くで大きな被害が発生しており、これは従来の考え方では説明できなかった。最新の研究では新しい断層では深度が比較的浅い箇所で揺れが発生する可能性が推測されている。
・地表断層が発生する地震の場合、地面の移動による長周期パルスが発生することが分かっており、これが高層建築に大きな被害をもたらす可能性がある。


忙しくない方のためのどうでもよい点

・まさに地震列島です。東京解体はすぐにでも行うべき事項と私は考えているのですが、その方策が難しいです。もろに利権が絡むだけに抵抗勢力が巨大であることも予想されますし。まさか毛沢東やポルポトのように強引に都市住民を地方に移住させるわけにもいきませんし。何か住民を地方に誘導するドライビングフォースを設定できれば良いのですが・・・。実は年に集中した人口の分散というのは、日本のみならず世界各地で課題になっていることなので。
・例えば経済システムの見直しにより、農業というのが美味しいビジネスとして成立するようになれば、それは地方への移住を促すドライビングフォースになると思います。となると農産物の価格見直しというのが必要となりますが、国内産の農産物の価格だけを上げても、海外から安い農産物が大量に入ってきたら逆に国内農業が壊滅します。それを防ごうと思えば強烈な保護主義政策を取る必要があり、海外から袋だたきにされるのは必然。どうにもこうにも八方塞がりです。何か妙案はないものだろうか。