教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

9/8 NHKスペシャル「スペース・スペクタクル 第3集 はやぶさ2 地球生命のルーツに迫る」

 小惑星探査機はやぶさ2が小惑星リュウグウに到達、その表面を爆破してサンプルを採取することに成功した。このサンプルを無事に地球に持ち帰って研究することが出来れば、地球生命のルーツに迫ることが可能であるという。それはどういう意味か。

はやぶさ2の探査が生命のルーツ解明につながるわけ

 地球生命のルーツについては、地球内部から湧き出した物質によって生成したという地球起源説が永らく主流であった。しかし生命誕生の源と推測されていた熱水鉱床などの研究の結果、生命の元となる物質の濃度がかなり低いことが判明し、地球起源説は行き詰まってしまった

 そこで新たに生命の源は宇宙から飛来したという説が登場することになる。そのきっかけとなったのはアメリカに飛来したサッターズミル隕石だった。この隕石を分析したところ、細胞壁の成分に類似した長鎖の炭素化合物が検出されたのだった。これによって生命の源となる有機物質が宇宙から飛来したという考えが現実化してきた。

 隕石は小惑星などと同じものと考えられる。そこで小惑星のスペクトルを観測したところ、サッターズミル隕石と同様のパターンを示す小惑星がリュウグウであった。そこでリュウグウに探査機を送ることになったのだという。

 

はやぶさ2が小惑星に穴を開けたわけ

 リュウグウからサンプルを持ち帰れば、その中に生命の源となる物質を発見できるかもしれない。しかしそのサンプルはリュウグウ内部の岩石の方が好ましい。と言うのも、表面の岩石は宇宙線などにさらされるため、有機物を含んでいても結合が切断されるなど劣化してしまっている可能性が高い。小惑星内部のよりフレッシュなサンプルを得たい。

 ではどうやって小惑星に穴を開けるか、その方法の開発を担当することになったJAXAの佐伯孝尚氏は、ドリル案やロケット案など様々なアイディアを考えた結果、弾丸を発射するという案に行き着いた。その案を実現する装置がインパクタという上戸のような形の金属に銅板を張って中に火薬を詰めたもの。この内部の火薬が爆発すると、その圧力が銅板の中央に集まり、銅板が丸まって弾丸状になって飛び出すというもの。福島県の爆薬メーカー(メーカー名は言ってませんが、画面から日本工機株式会社という社名が読み取れますね)にこのアイディアを持ち込んで実用化のための開発を行い、それに成功した。

 はやぶさ2から切り離されたインパクタは爆発を起こしてリュウグウに弾丸を発射する。ただしその際にインパクタが爆発した破片が飛び散るため、はやぶさ2は損傷を避けるためにリュウグウの裏側に避難する必要がある。切り離されたインパクタが狙いを保ち続けることが出来る時間が40分、はやぶさ2が避難するのに必要な時間が37分。ほとんど余裕がなく何らかのミスが起こればすべてがダメになるという緊張感の中、佐伯氏は無事にミッションを成功させ、リュウグウの表面には大きな穴が開く(スタジオにリュウグウが開けた穴が再現されているが、直径10メートル、深さ1メートルほどの想像以上に大きい穴である)。

サンプル採取に無事に成功

 さて見事にリュウグウ表面に穴を開けたはやぶさ2だが、次はそこからサンプルを蒐集するという難題に直面することになる。開けた穴の底は思いの外深い上に周辺に大きな岩などがゴロゴロしているために穴の底に着陸することは不可能であることが判明した。そこで内部の岩石が飛び散っていると思われる穴の周辺に着陸することが検討された。ここで比較的平らな南側に着陸するか、岩などがあって危険性もある北側に着陸するかで意見が分かれたようだが、実験の結果内部からの岩石はほぼ穴の北側に飛び散っていることが予測されたため、危険を冒して北側に着陸することに決定したという。こうして全員が固唾を呑んで見守る中、はやぶさ2の着陸が行われ、見事にサンプルの採取に成功する。

 

小惑星内の温泉で有機物が出来た

 なお小惑星内部で有機化合物が生成するメカニズムだが、昔小惑星が誕生した際、その成分には氷や炭素などが含まれており、内部は熱によって温泉のような状態になっていたと推測される。そしてその温水の中で炭素が反応して有機物が生成したとのこと。この小惑星が衝突などで砕けて現在のリュウグウなどが生成し、そこには当時の有機物が含まれていると推測されるのだという。

小惑星を地球に飛来させた惑星大移動

 また小惑星が地球にやって来たメカニズムについては惑星の大移動が関係しているとのことである。以前にコズミックフロントNEXTのザ・プラネッツで木星などの惑星が太陽系生成の初期に大移動を行ったといっていたが、この惑星大移動が影響しているのだとのこと。

tv.ksagi.work

 初期の太陽系には多くの星間ガスが存在し、これらは太陽系の内側へ向かう流れを作っていた。そしてこの流れに押されて木星や土星などの惑星は太陽系の内側に向かって移動した。しかしやがてこれらの惑星によって星間ガスは取り込まれ、惑星周辺のガスの濃度が下がってくる。すると惑星を内側に押す力がなくなったことによって、惑星は反対に外側に向かって移動することになる。この時に土星や木星が小惑星の軌道内に入り込み、弾き飛ばされた小惑星が大量に地球に降り注いだと考えられるとのこと。


 はやぶさ2が地球に帰還するのは2020年末頃とのこと。後は無事に帰還を果たして採取したサンプルを持ち帰ってくることを祈るのみである。

 


忙しい方のための今回の要点

・生命の起源についてはかつて地球起源説が有力であったが、近年は隕石中から有機物が検出されたことなどから、宇宙起源説が有力となってきている。
・はやぶさ2が目指したリュウグウは、スペクトルのパターンなどから有機物の存在の可能性が高いと考えられている。
・表面岩石中の有機物は劣化している可能性が高いため、小惑星内部のサンプルを採取するべく、はやぶさ2では小惑星に弾丸を発射して穴を開けるシステムが開発された。
・小惑星表面に穴を開ける作業は無事に成功し、はやぶさ2はさらに飛び散った岩石の標本を採取することにも成功、現在地球に向かっている。
・小惑星内部で有機物が生成するメカニズムについては、水や炭素を含んだ小惑星が、その内部の熱で温水状態なり、そこで有機物が生成したと考えられる。
・そのような有機物を含む小惑星は、木星や土星の惑星大移動によって弾き飛ばされ、太古の地球に大量に降り注いで生命の源となったと推測されている。

 

忙しくない方のためのどうでも良い点

・ここまで来た以上、はやぶさ2は是非とも無事にサンプルを持って帰ってきて欲しいものです。やっぱり「無事に家に帰るまでが遠足」ですから(笑)。
・映像として見ているとあまり気にならなかったのですが、こうやって文章に起こしてみると論理の流れが散漫なところが目立ちましたね。ですから、私の文章では分かりやすいように実際の番組の内容の流れと違って順序を組み立て直している部分がありますので、ご承知を。