教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

10/23 NHK ガッテン「睡眠・めまい・肺炎 ようやく呼べた!!レジェンド研究者SP」

 今回は睡眠、めまい、肺炎の分野で番組に初めて呼んだレジェンド研究者たちの最新研究を紹介・・・ってことなんだが、正直なところ1つのネタだけだと45分持たせるのが難しい内容を3本セットにまとめたという気配が濃厚。

1.最高の睡眠を取る方法

 まず最初に登場するのはスタンフォード大学で睡眠について研究しているという精神科医の西野精治氏。彼は最高の睡眠をしているとのことなので番組は実際に交渉して寝てもらってその様子を観察ということをしているのだが、驚いたことに結構中途覚醒をしている

中途覚醒は大した問題ではない?

 これで大丈夫なのか? と思うのだが、西野先生によると要は最初の90分にどれだけ深く眠れるかが重要なのだという。この時に深い睡眠を取っていると成長ホルモンが分泌され、これが体の修復などに効果を発揮することになるが、ここで睡眠が浅いと成長ホルモンが分泌されないとのこと。なお中途覚醒については、その後再びすぐに眠れれば問題ないのだという(すぐに寝れない時はどうするの?)。

最初の90分に深く眠るための方法

 ではどうすれば深い睡眠を取れるかだが、それは睡眠圧が重要になる。なんていうと難しく聞こえるが、要は「眠たくなった時に眠る」ということが大事なんだという。これには生活習慣が大切である。西野先生の生活を見ていると、朝は早めに起床して朝食をよくかんで食べて体を目覚めさせる。そして朝の光を浴びながら出勤、午前中はバリバリと仕事をしてたまには気分転換に運動。昼に良く活動しておくことが大事。そして仕事が終わって家に戻ると暗めの照明の部屋で音楽でも聴きながらゆったりとくつろぐ。そして眠気が押し寄せてきたタイミングで就寝するということである。つまりは昼と夜の生活にメリハリをつけることが重要だという。

 さらにお勧めなのが入浴を効果的に使う方法。入浴して1時間半ぐらいで深部体温の低下が始まるので、それと共に眠気が起こってくるからこの時に眠るのが良いとのこと。

 とのことなんだが、このレジェンドの睡眠のコツ、既にあちこちで言われている内容なので全く目新しい話はありませんでしたね。確かにこれだけで45分番組1本作るのはしんどいわ。

 

2.肺炎予防のための誤嚥防止法

 2つめのネタは肺炎予防。この場合に問題になるのは誤嚥性肺炎。高齢者などに多い飲み込みが悪くなることで食べ物などが気管に入って肺炎を起こす症状であり、毎年これで多くの高齢者が亡くなっている。そこでこの誤嚥を防ぐための方法を編み出したのが歯科医の戸原玄氏である。

口を開ける力で誤嚥の危険性が分かる

 まず誤嚥の危険がどの程度あるかの判定から開始。ゲストが何やら怪しげな装置を顔につけて測定されたのは口を開ける力。これが男性の場合は5キロ以下、女性の場合は4キロ以下になると大分筋力が低下しているとのことで、誤嚥の危険が高まるのだとか。番組では実際にのど自慢に参加した人たちに協力してもらって測定したが、195人中13人がアウトだったらしい。実際にここで値の低かった人に取材しているが、つばを飲み込むことが上手く出来ないので歌が最後まで歌えないとか。大好きなツブ貝の刺身を飲み込めないとか、ドーナツを飲み物なしで飲み込むことが出来ないなど、いずれも飲み込みに問題を抱えている。

誤嚥防止のためのトレーニング

 さてここで戸原氏が編み出した対策なのだが、これが実に単純。力を入れて口を大きく開け、そのまま10秒保つ。これを1日に5セット行うのだという。これは舌骨上筋群という筋肉を鍛える運動で、この舌骨上筋群は口を開けるための筋肉であると同時に、物を飲み込む時に食道を広げるための筋肉でもあるのだという。つまりはこの筋肉が衰えると物の飲み込みが怪しくなり誤嚥が起こるということになる。

 実際に先ほどの方たちにこの運動を1ヶ月続けてもらったところ、口を開ける力は劇的に回復し、飲み込みの問題も解決して目出度し目出度しというオチである。この方法、仕組みさえ分かれば非常に単純に思えるもので、戸原氏も学生の時に思いついたものの、それを指導教官に伝えるとボコボコに否定されて、結局は自分が思うような研究を出来るようになる立場になるまで日の目を見なかったとか。サラッと「見返した」と言っていたが、そこには研究者としての万感が籠もっていたのを私は感じた(笑)。馬鹿上司に頭を押さえられて苦労している世の多くの研究者は共感するところだろう(笑)。

誤嚥防止がリハビリにも効果

 なお戸原氏のこの方法で脳卒中で胃ろうになっていた患者が、自分の口で焼肉を食べられるようになったという劇的な例もあるらしい。もっとも脳卒中の患者の場合、このような機能回復が可能な人と不可能な人があるので、すべての人に適用可能ではないのでそこは「担当医とご相談ください」というお約束のお断りが付く。

 なかなか興味深くて有用な内容であるが、これはやはり1本で45分持たせるのはしんどい小ネタに属してしまう。

 

3.原因不明のめまいの対策

 そして3つめが謎のめまいの対策。実際に患者が登場しているが、めまいがひどいせいで表に出ることさえ困難なのだという。めまいの原因はまず耳石などが部分的にはがれてその破片が三半規管に入り込むことによるものが大きく、これ以外にメニエール病などがあるが、10%ぐらいのめまいは原因不明なのだという。この原因不明のめまいの対策を考案したのが耳鼻科医の北原糺氏。

 ここで彼がこの方法を思いつくに至った経緯を番組では再現ドラマで紹介しているのだが・・・これが単なる悪のりだけで中身は全く意味がない。どうもこの辺りも時間稼ぎの匂いがプンプンしているが、要はここでのポイントは北原氏がやはり耳鼻科だった父親から三半規管の模型をもらい、その形を見ている内に思いついたということらしい。

頭を高くして寝ることでめまいが改善

 その北原氏の方法というのは、頭を高い状態にして寝るということ。耳石が派手にはがれる人は検査などで分かるが、徐々に少しずつはがれる人は検査では分からないという。そうして少しずつはがれた耳石が、夜に寝ている時に三半規管に入り込むことでめまいにつながったのではないかと北原氏は考えたのだという。頭を高くして寝ることでこの耳石が三半規管に入ることが防げる。また三半規管に入り込んだ耳石はやがて分解されて吸収されるとのことなので、段々と症状が緩和させるということらしい。

 方法としては、布団の下に毛布や座布団などを入れて頭の部分を高くする。理想的には45度の角度をつけるのが良いが、これが高すぎて寝苦しい場合にはもっと低くても良いという。そして1ヶ月試してみて、効果があれば目出度し目出度し、効果がなかった場合は他の原因と考えられるので、その場合はその対処ということになる。なお北原氏によると原因不明のめまいの内の8割に効果があったとのこと。

 これも該当者には非常に有用な情報なのだが、対象が結構限られる上に、このネタ自身もあっさり紹介すると番組が10分以内で終わってしまうという内容である。


 以上、非常に有用な小ネタ集でした。別に小ネタ集はそれで良いんですが、やたら演出過剰で空騒ぎが多いのだけが見ていて不快でした。難しい情報を分かりやすく楽しく伝えるというのと、無意味な空騒ぎをするというのは全く違う物。北原氏の三半規管の模型の件なんて、結局は本題には何にも絡んでませんでした(北原氏の父親のキャラクターがあまりにおいしいので、何とか番組に出したかったのは分からないでもないが)。昔からこの番組はたまに悪ノリがあって、それが楽しい場合が多かったんですが、どうも最近は単なる空騒ぎになって滑っている印象が強いです。制作者のセンスが悪いんだろうか? 最近のこの番組は悪い意味でバラエティ色を強めてるんだよな。それも今時の。まあまだ内容までバラエティレベルになっていないのが一番大事なところだが。もし内容までバラエティレベルになってしまったら、私はこの番組を見切ります。

 

忙しい方のための今回の要点

・良質の睡眠を取るには、就寝後の90分に深い睡眠を取ることが大切。そのためには午前中に体を良く動かし、夜はゆったりとくつろぐというメリハリのある生活が重要。また就寝1時間半前の入浴もお勧め。
・誤嚥性肺炎を防ぐには口を開ける時に使う舌骨上筋群を鍛えるのが効果的。方法は思い切り口を開けて10秒保つという運動を1日に5セット。2週間ぐらいで効果が出てくるはず。
・原因不明の謎のめまいへの対処法として、頭を高くして寝ることでわずかに砕けて耳石が三半規管に入り込むことを防ぐという方法がある。1ヶ月試して効果がない場合は原因が耳石以外にある可能性が高いので別の検査を。


忙しくない方のためのどうでもよい点

・で、来週はまたどうでも良いオリンピック関連番組でお休みのようです。最近のこの番組はネタ切れなのかやたらに休みが多くなっています。これはその内に大幅劣化リニューアルがなされるのではないかという嫌な予感がしています。

 

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