教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

10/27 サイエンスZERO「アスリートを支える!義足&車いすテクノロジー最前線」

 パラリンピックもドンドンと競技の水準が上がってきているが、それを支えているのが競技用具の進歩。特に進化が著しい競技用の義足と車いすについて紹介している。

進化する競技用義足

 義足については素材の進歩が大きいという。最近の競技用義足に使用されるのはカーボン繊維強度は鉄の7倍、弾力性は10倍もあり、軽量であるカーボン繊維は義足の材質として最適である。このカーボン繊維のシートは方向性があるため、いろいろな方向の物を強度計算して60枚も重ねる手作業で製作しているという。

 また義足においてもう一つ重要なのは形。この形がうまく出来ていないと義足がバネとして働かないようになる。実際に義足を付けてもらっての実験の結果、義足に土踏まずを持たせる形状が最適であるということになったという。ただ障害の程度や走り方のクセなどは選手ごとに異なるために、どのような義足が最適かは選手によって違う。それらをシミュレーションによって見つけるという研究もなされているという。

 

競技に合わせて設計する車いす

 車いすもまた競技によって最適なように設計されている。テニス用の車いすは小回りが利くように、バスケ用の車いすは座面を高くするなどの工夫がなされている。陸上競技用の車いすの開発に携わる企業(ホンダのようです)ではF1や航空機開発の経験から、車いすにカーボン繊維だけでなくアラミド繊維を採用した。アラミド繊維を使用することで、地面からの震動を抑えて車いすを安定化させることが出来たという。

 また車輪のベアリングの開発を行っているメーカーもある。ここではベアリングに遊びがあるものと遊びがほとんどないものの2種を実際に選手に試してもらった。遊びのある方は走り出しは軽いがトップスピードになった時にやや力のロスがある。遊びのないものは力のロスはないが走り出しが重いという。選手は遊びのある方を好んだようであるので、この方向で開発を進めていくとのこと。

 

 どんどんと技術が進むパラ競技用の用具ですが、こうなってくるとこれはテクノロジーによるドーピングなのではないかとの声が出てきているとの話もありましたが、これは全く同感です。私はパラリンピックは障害がある人でも健常者のようにスポーツが出来るということを示すための大会で、メダルを競うものではないと考えていたのですが、昨今のパラリンピックはオリンピックと同じようにメダル第一主義や商業主義が蔓延して大分汚染されているように感じます。用具の進歩は結構ですが、それがあまり行きすぎると障害を用具で克服すると言うよりも、選手が改造人間のように見えてきてしまいます。またそのような最先端の用具を調達できる選手と出来ない選手でそれだけで結果が決まってしまうということにもなってくる。どうもオリンピックの悪いところがもろに入ってきているようで、正直なところ私は最近のパラリンピックには感心してません

 

忙しい方のための今回の要点

・パラリンピックの記録も伸び続けているが、それには用具の真価が大きな役割を果たしている。
・義足においては軽くて丈夫なカーボン繊維が用いられるようになった。また選手の特性に合わせて形状を設計する技術も進んできている。
・競技用車いすも各競技の特性合わせて開発されている。陸上競技用の車いすではアラミド繊維を使用することで安定した走行が出来るよう開発されたり、ベアリングも選手に合わせて調整するなどが行われている。


忙しくない方のためのどうでもよい点

・私は正直なところ「商業主義と利権の権化であるオリンピックはいらない」と考えている人間なので、オリンピック化しつつあるパラリンピックには反対です。そもそもスポーツは自分でやってなんぼであって、ショーとして見せるということ自体が何か間違っているような気がするというのも本音。ましてや国の威信がどうこうなどと言い出したら、醜い上に馬鹿馬鹿しいことこの上ない。

 

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