教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

11/17 TBS系 健康カプセル!ゲンキの時間「~血管・脳が若返る!~油の賢い使い方」

 今回は油を健康のために使うにはどうするかについて。

油は使い方がポイント

 まず油と言えばとかく敵視されがちであるが、元々は脂質は細胞膜など体に必須の栄養素であり、これが不足すると健康に問題が生じる。ただ当然のように取りすぎは血管の老化などを促し心筋梗塞や脳卒中などの原因になる。だからこそ取り方を考える必要があると言う話。

 油を摂る場合に問題になるのは、量の取り過ぎはともかくとして、酸化した油を摂ること。酸化した油をとり続けることは細胞の機能低下につながり、動脈硬化や認知症の原因になりかねないという。

 

使う目的で油を選ぶ

 私たちが普段用いる油は不飽和脂肪酸になる(飽和脂肪酸はいわゆる動物の脂)。不飽和脂肪酸はオメガ3、オメガ6、オメガ9の3種に分けることが出来るという。この中でオメガ3とオメガ6は熱に弱い性質があるので、揚げ物などにはオメガ9の油を用いるのがよいという。オメガ9の油はオリーブオイル、菜種油、米油などであり、揚げ物にはこれらを用いた方がよいという。なお油の使い回しは油が冷める過程でかなり酸化が進んでしまうので基本的に御法度。油は使い切るのが原則とか。なお油が勿体ないと感じる場合は、フライパンに少量の油を入れて裏返しながら揚げるというテクニックを用いるのがよいとしている。

 熱に弱いオメガ6の油はサラダ油、ごま油、大豆油、オメガ3はエゴマ油、アマニ油、チアシードオイルなどであるが、これらも炒め物など加熱が短時間の料理には使用可能とのこと。老化防止や免疫力アップなどの効果が期待できるのは米油であるという。米油に含まれるトコトリエノールという成分が強烈な抗酸化作用を持つとのこと。これをビタミンCを含む野菜炒めに使用すれば、強い抗酸化作用を期待できるとしている。

 またごま油について料理に対する風味付けとして、後で少量加えるという使い方が有効であるとしている。きんぴらゴボウなどに少量降りかけてやるだけで風味アップとなるとのこと。

 なおオメガ3の油には血管の健康を保つ成分が含まれているので、心疾患や認知症の予防が期待できるということで、積極的に摂って欲しいとしている。これらは主に魚に含まれるのだが、日本人が魚を食べなくなったことで不足気味なのだとか。番組ではアマニ油に同量の醤油と酢をまぜてドレッシング的に使用することをお勧めしている。

 

油の摂りすぎに注意

 ただし気をつけないといけないのは油の取り過ぎ。いずれの油も不飽和脂肪酸だけでなく飽和脂肪酸も含んでいる(米油などは20%も含んでいるようだ)ので、取り過ぎると動物性の飽和脂肪酸が過剰となって心筋梗塞の原因となりかねない。厚生労働書の摂取基準では油の摂取量は1日当たり60グラム程度にするべきとのこと。しかし肉類や加工食品には思いの外に大量の油が含まれているので要注意。

 なおゲストがココナツオイルは体に良いと流行したけれど、最近は体に悪いという話も出てきていて、実際のところはどうなのですかと医者に質問。これに対しては、ココナツオイルは飽和脂肪酸が圧倒的に多いので動脈硬化が進みやすいということになるが、一方では消化管で吸収・分解が早いので体に溜まりにくいという話や、認知症の予防効果があるなどの報告もあるとのことで、要するに「どんな食品でも良い面と悪い面があるので、極端な摂りすぎは良くない」という極めて常識的な結論となる。ちなみにココナツオイルは菓子類などの加工食品に多用されているはず。やっぱり加工食品が要注意ってことになりますね。


 以上、油の取り方について。この手の内容になると往々にして「何々を食べるべき」という煽りになりやすいのですが、その辺りには気を使っている様子が覗えるのがこの番組らしいところ。これがかつての「あるある大事典」だったら、「米油こそが現代人の救世主と心得よ!」とか言って思い切り煽り、大手スーパーは放送前に米油を大量に仕入れてウハウハなんてことになるところです。

 なお揚げ物にはオリーブオイルって言ってましたが、オリーブオイルって高くないですか? うちは何でもかんでもサラダ油です(笑)。

 

忙しい方のための今回の要点

・不飽和脂肪酸の中にはオメガ3、オメガ6、オメガ9の3種があり、この中でオメガ3とオメガ6は熱に弱いので、オメガ9のオリーブオイル、菜種油、米油などか揚げ物には適している。
・オメガ3の油は現代日本人には不足しがちであり、心疾患や認知症の予防が期待できるので摂った方が良いとしている。番組ではアマニ油を醤油や酢と混ぜてドレッシング的に用いる方法を紹介。
・ただしいずれの油も動物性の飽和脂肪酸も含んでおり、摂取が過剰になると心筋梗塞などの原因となる恐れがある。厚生労働省の摂取基準では1日60グラムぐらいが適切であるとのこと。


忙しくない方のためのどうでもよい点

・食の健康の基本は、地場のものを丸ごと頂くということになるようです。地球の裏側から運んできた食材とか、工業的に大量生産した食材なんてのは大体はどこかに問題がある場合が多いです。まあ結局はどこまでこだわるかという話になるのですが。
・とにかく人間は本能的に糖と油は好むように出来ているので、現代においてはそこで摂り過ぎないようにすることが重要です。人類は長い進化の過程で飢餓には対応できるように進化しましたが、残念ながら飽食なんて事態は完全に想定外です。