教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

11/24 TBS系 世界遺産「石垣8000km!大西洋の火山島 ポルトガル・ピコ島」

火山島の海岸に広がる石垣

 大西洋にあるポルトガルのピコ島は、ポルトガル最高峰のピコ山を擁する火山島である。多くの観光客も訪れるこの島の海岸は、総延長8000kmにも及ぶ石垣が作られている。

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ピコ山

 この石垣は実はぶどう園。3m×6mの区画に区切られた中にブドウの木数本が植えられている。この石垣は溶岩を積み上げて作られたもので、海からの潮風からブドウを守るためのものであるという。また石垣は太陽光を吸収して辺りの温度を上昇させるし、夜には保温効果もある。こうしてこの島ではヨーロッパで最も早くブドウが収穫されるという。しかし石垣の中のブドウの収穫は一苦労である。機械を入れられない上にロバなども入れないため、収穫から運搬まですべて手作業になる。

 

500年前にぶどうを持ち込んだ修道士

 この島にブドウが伝えられたのは500年前。キリスト教の修道士がここでブドウの栽培を始めたという。修道院にはワイン醸造の施設もあったという。ワインはキリストの血であり、キリスト教徒にとっては儀式的にも重要である。ピコ島の石垣は500年前から人力で修復されつつ今日も使い続けられている。

 ピコ島はピコ山の火山噴火によって作られた。表面は溶岩が流れた玄武岩で出来ており、ピコ島は今でも地底にマグマがあるために温まった地下水が温かい蒸気として噴き出している。溶岩はこの島にとっては恵みでもあり、島の建物はみな溶岩を使って立てられている。また溶岩に覆われた大地で唯一栽培できる作物がぶどうである。ぶどうの木は溶岩の隙間に根を張り、溶岩からミネラル分を吸収して成長する。

 こうして作られたワインは、ピコ島には大型の港がないために、向かいの島であるファイアル島からヨーロッパ各地に出荷されたる。ファイアル島にはピコワインで財をなした領主の屋敷も存在しているという。

 ピコ島のぶどう園はこの石垣の独特の景観が世界遺産に認定された。

 

忙しい方のための今回の要点

・ポルトガルのピコ島は大西洋の火山島。ここには総延長8000キロに及ぶ石垣がある。
・この石垣はぶどうの木を潮風から守るものであり、500年前にこの島に修道士によってぶどうが持ち込まれて以来、人の手によって作られてきたものである。
・石垣の蓄熱硬化や保温効果によって、ピコ島ではヨーロッパで最も早くぶどうが収穫される。
・ピコ島には大きな船が着ける港がないので、ピコワインは向かいのファイアル島からヨーロッパ中に出荷された。

 

忙しくない方のためのどうでもよい点

・人の手によって作られた景観の最たるもののようです。それにしてもぶどうの木って、こんな不毛に思える溶岩台地でも成長できるんですね。これは知らなかった。
・火山噴火の激しいところは、溶岩台地よりも火山灰土になる場合の方が多いのですが、ピコ島の火山は火山灰は出さなかったんでしょうか? 火山灰はもっと火山に近いところに降り注いで、溶岩は遠くまで流れたということかな? 島の地形がやけになだらかなようですから、ここの山の溶岩の粘度は低そうです。

 

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