教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

12/1 TBS系 健康カプセル!ゲンキの時間「~痛み方で分かる"腰痛の原因と対策"~おすすめ体操」

77%は原因が分かるようになった腰痛

 腰痛に苦しめられている人は非常に多いが、40代以上の3割の約2800万人が抱える病気と言われている。かつては大半が原因不明にされて原因特定立は15%と言われていた腰痛も、現在は診療技術の向上などによって現在では77%が原因が特定されるようになったという。それによって適切な治療が行われるようになってきた。

 例によって登場するのは腰痛で苦しんでいる4人の被験者の皆さん。彼らが実際に医師の診断を受けるところから始まる。「朝すぐに起き上がれない」「座っているとツラくなる」「下り階段が怖い」など様々な症状を訴える4人が訪れたのが、東京腰痛クリニック院長の三浦恭志医師。

 

椎間板ヘルニアの判定法

 ぎっくり腰から慢性の腰痛になったという男性に対し、三浦医師は両足を筆で触って感覚の違いをチェックする。すると足の外側の感覚が左足で鈍っていることが判明。これから出た三浦医師の診断は椎間板ヘルニア。背骨のクッションの役割を果たす椎間板が損傷して神経を圧迫する症状である。15年前にぎっくり腰になった時に椎間板に損傷が発生したのだろうとのこと。前屈みで荷物を持ち上げる姿勢は椎間板に過重な負担をかけるので禁忌事項である。足のどこの神経が鈍っているかでどの椎間板が損傷しているかまで診断できるとのこと。彼の場合は5Sという一番下の椎間板が怪しいという。

 もう一人の男性は前屈した時の痛みを訴えているが、これは椎間板ヘルニアの症状だという。彼も足の裏の感覚が完全にないとの話(ちなみに糖尿病が悪化してもこの症状が出るが、これは今回には関係ない話)。

脊柱管狭窄症の症状

 一方、朝起き上がるのがツラいと言っていた女性についてはMRIを撮影したところ、脊柱管が一部で狭くなっていることが判明。これは脊柱管狭窄症といって脊柱管周辺の靱帯などによって脊柱管が圧迫される症状。この場合は、椎間板ヘルニアと逆で後屈すると痛みが強くなるのだという。また脊柱管狭窄症では一定の距離を歩くと強い足の痛みが生じて歩けなくなるが、しばらく休むと足が動くようになるという間欠跛行という症状がでる。これは脊柱が圧迫されることによる症状である。もう一人の女性もこの可能性が高いという診断となった。

 

これら以外の腰痛とセルフケア法

 腰痛の大原因は大抵この二つだが、これ以外にも腰痛の原因はある。神経には影響を及ぼさないものの腰の関節に何らかのストレスが生じて痛みにつながる椎間関節性の腰痛や、腰の筋肉の炎症や緊張によって起こる筋・筋膜性の腰痛などもある(私も腰の肉離れみたいな状態になったことがある)。

 さらに番組ゲストの赤楚衛二氏は若いにもかかわらず腰痛を訴えていたが、彼の症状を医師に相談したところ、腰と言うよりは尻に痛みが出ており、これは骨盤の仙腸関節の損傷による痛みである可能性が高いという。これは激しい運動などで仙腸関節が損傷した時に発生するものだという。ただしこれは神経に影響していないのでセルフケアで回復できる場合が多いという。

 なおそのセルフケアとしては「子供に踏んでもらう」というのは不可とのこと。強度の調整が出来ないので過重な負荷をかけて腰を損傷する危険があるという(そりゃそうだろ)。カイロで温める(炎症を起こしていない場合)、テニスボールで刺激する(ただし背骨ははずして左右を圧迫すること)などが可で、スクワットなんかも腰を鍛えるという意味で効果があるが、やり過ぎないこと(当然)とのことである。なお医師お勧めのセルフケアは、椅子に座って背中を曲げて前屈する猫背体操。背中に柔軟性をつけることで腰の負担を避けるのだという。姿勢を20秒保持して2回1セット、これを1日に4~5セット行うとのこと。

 

ストレスから生じる心因性腰痛

 なお原因が特定できない腰痛については、心因性腰痛が多いという。精神的なストレスが原因となっており、整形外科的には大した腰痛がないはずなのに、痛みを強く感じてしまう状態だという。人間の脳内には痛みを抑える側坐核というものがあるが、ストレスによってこの側坐核がうまく働くなくなり、痛みに敏感になってしまうのだという。これに対しては整形外科や精神科が連携して治療することになる。また日記をつけてもらうことで痛みを客観視して対処法を考えるという方法が使用させているという(以前にガッテンでも紹介していた)。要はストレスの解消が重要であるという。


 以上、日本人に非常に多い腰痛について。適切な専門的助言に基づいていた内容であり、「バンテリンサポーターを使用しましょう」という結論にならないのは、この番組の良心である(笑)。

 ちなみにこれには私も苦しめられており、以前にMRIを撮影した時に、腰と背中の2カ所に椎間板ヘルニアがあることが指摘されました。そのせいで時々足や手にしびれがでるという状態。そのためにコンサートなどで長時間椅子に座っていると腰がキツくなることは多いです。そもそも日頃から座り仕事なので腰には常に過重な負担がかかっている状態。これはとりあえず猫背体操でもしてみるか。

 

忙しい方のための今回の要点

・かつては原因不明にされることが多かった腰痛も、近年は診断技術の進歩で77%の腰痛の原因が判明するようになってきた。
・前屈する痛みが生じる場合は椎間板が損傷して神経を圧迫する椎間板ヘルニアの可能性が高い。
・逆に後屈で痛みが発生する場合は、脊柱管周囲の靱帯などによって脊柱管が圧迫させる脊柱管狭窄症の可能性が高い。また脊柱管狭窄症の場合、歩いていると足が痛くなって歩行が続けられなくなる間欠跛行という症状が出ることが多い。
・これ以外にも椎間関節自体に問題が発生する場合、筋肉が原因の場合などもある。
・また強い運動などで骨盤の仙腸関節が損傷することによる痛みが出る場合もある。
・腰痛に対しては背中を丸める猫背体操というストレッチが効果がある。
・最近はストレスによって痛みを強く感じることが原因となる心因性腰痛も増加しており、これについては整形外科と精神科の連携が重要である。


忙しくない方のためのどうでもよい点

・解剖学的に見ると、腰痛は人類にとっては宿命だと言います。人間の体って「よくまあこんな構造で二足歩行なんて無茶をするな」と言いたくなるぐらい、無理矢理なことをしているそうですから(笑)。
・ちなみにゴリラは腰の骨が少ないので腰痛はないだろうと言われています。その代わりに腰の可動が制限されている。結局は可動部を増やして動きに柔軟性を持たせると関節の負荷が増えるということらしい。
・というわけで、いよいよ腰痛がひどくなってしまうと対症療法としてはサポーターでガチガチに固めてしまうしかない。というわけでそういう時には「バンテリンサポーター」の出番です(笑)。ただ人間って、腰を固定されてしまうとかなり動きが制約されるということは、実際にサポーターをつけると痛感します。

 

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