教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

12/3 NHKスペシャル「体感 首都直下地震 DAY2 多発する未知の脅威」

 災害スペシャル2日目。今回も緊迫したドラマから始まる。

火災旋風、デマの拡散、そして広域通信ダウン

 まずいきなり登場するのが火災旋風。炎の竜巻である。複数の火災旋風が通過したことで確認されただけでも死者が500人も出ている(実際にはこの程度で済むはずがない)。そして倒壊した建物の中には5万人もの人々が閉じ込められている。その一人と電話で連絡を取るヒロイン。多くの被災者の中から彼女が選ばれたのはスポンサーの意向とかそういう下らないものもあるようだが、それでも一人でも救いたいとヒロインは彼女を電話で励ます。しかし消防も救急も全く手が回っていない絶望的な状況にある。そんな中、今度はデマで50人が将棋倒しで死亡したというニュースが飛び込んでくる。避難所に火災旋風が迫っているとのデマが飛び、避難民が一斉に逃げだそうとした結果、将棋倒しが発生したということ。デマの怖さを思い知る事件である。そんな時、ネット上で化学工場から有毒ガスが漏れているという情報が飛ぶ。漏れているガスは致死性の硫化水素の可能性が強い。近くには1000人単位で避難している避難所もある。編集長は情報の裏を取るように命じるが、警察も消防も情報が錯綜していて確認が取れない。未確認情報でもその危険性を考えると伝えるべきだと迫るスタッフと、未確認の情報を流してデマだったらどうするんだと躊躇う編集長、そんな矢先にその化学工場が爆発を起こしたという一報が消防から飛び込んでくる。有毒ガスが一斉に噴出し、その影響範囲には2000人はいるという。もっと早く情報を伝えていれば・・・。自分達が何をするべきか何が出来るのか。絶望的な気持ちになっていく彼らをさらに追い詰めるように、携帯電話がつながらなくなる。広域通信ダウンまで発生したのである。

 

通信ダウンに対する備えは?

 というようないよいよ救いがたい状況が怒濤のように押し寄せてくる。昨日の展開では火災旋風が今日のクライマックスかと思わせていたが、そんなものはまだ序の口と言わんばかりの怒濤のような事件発生である。なお昨日に私が「もっと早々と通信がダウンするのでは」と指摘していたが、それは今日起こったようだ。この根拠は基地局は1日分ぐらいの非常電源は持っているから(ただし道路の混乱などでバッテリーの交換が出来ない状態にある)ということのようだ。もっともその基地局の設備自身が地震や火災で破壊されていたらその限りではないのだが・・・。なおテレビ局は大丈夫なのかという指摘もゲストから出ており、誰でも考えることは同じようだ。一応NHKはある程度の備えはしているとのことだが、果たしてそれも実際にはどれだけキチンと機能するか。ちなみに東日本大震災の際には福島第一原発の非常発電機は津波の影響で機能せず、外部からの全電源喪失という事態に全く何も出来ない状態で水蒸気爆発にまで至ってしまった。

 

火災旋風は出くわす前に避難

 また火災旋風に出くわした時の避難はという質問もゲストから出ていたが、それに対する専門家の回答は、出くわした時は最早絶望的状況なので、そうなる前に避難しておくということが重要というごもっともだがどうすりゃいいねんという内容。いよいよ逃げる場所がなかったら、小さくてもいいから鉄筋コンクリートの建物のなるべく奥に逃げ込むという話だが、火災旋風は状況によっては長時間その場に留まる場合もあるとのことなので、そうなると風で飛ばされなかったとしても蒸し焼きにされるという救いがたい状況になる。

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高さ200メートル及ぶこともあるという火災旋風

 

デマ拡散に荷担しないために

 なお今回も登場していたデマの拡散というのが実は一番たちの悪いもので、これで多くの命が奪われることがある。全く本人に悪意のない単なる誤認からデマにつながる場合もあるが、もっとたちの悪いのは意図的にデマを流すクズ。中には被害を更に大きくしてやろうとデマを流すテロリストのような輩までおり、実際に東日本大震災の時もその手の輩が流すデマが大量にネット上に拡散したということがある。このような輩はそもそも人間としての資格がないので、人権を停止して即殺処分しても良いと私は思っているが、とにかくこんな時にはそんなことよりも情報の吟味が重要になる。番組で言っていた見分けのポイントの一つは、元が1つの同じ内容ばかりがクルクル回っているような状況は怪しいということ。例えば熊本地震の時にあったライオンが逃げ出したという話なら、当然一枚の写真だけでなく、他の角度から撮った他の人による写真なんかも出てきて然りということで、同じ一枚の写真ばかりが拡散している場合は眉唾ということ。ただ実際の災害の現場で、そんなに悠長に情報を吟味していられるかはかなり難しい(これは阪神大震災被災者としての経験)。

 

 今回も緊迫のドラマだったが、ヒロインの小柴風花の演技力には感心させられる。これは将来の大物女優登場かもしれない(演技力だけでなく、かなり可愛い娘ですし)。小野アナのたどたどしさとイノッチのギクシャクは相変わらずだが、昨日に比べて小野アナがなるべく落ち着いて喋ろうとしていたのが感じられた。ただ彼女はアドリブにかなり弱いアナなんで、イノッチもあまり突然に話を振らないように(笑)。あなたが長年組んでいた有働アナはその辺りの修羅場慣れしてましたが、彼女はまだその辺りは不安です。また彼女は報道現場には携わってないので、報道のことで話を振っても答えようがないので、ややトンチンカンな返答をするという場面もあったようです。

 

忙しい方のための今回の要点

・地震2日目にして火災旋風が発生、これに巻き込まれた多くの死者が出る。
・また倒壊した建物内に5万人の人々が閉じ込められているが、救助もままならない。
・さらにデマの拡散によってパニックになった避難民から将棋倒しで死者も発生。
・そしてついに広域通信ダウンが・・・。
・以上の状況に対処するには。
・火災旋風が発生してからの避難では遅すぎるので、火災が発生する前に避難するのが原則。
・SNSなどの情報は安易に拡散せず、情報の真偽を吟味する必要がある。同じソースの情報がグルグルと回っている状態はデマの可能性が高い。本当に複数ルートからの一時情報が出ているかが一つの判断基準。

 

忙しくない方のためのどうでも良い点

・今まで話が出てきていないのですが、現時点で水道は機能しているのでしょうか。
・阪神大震災では水道管の破裂で広域で断水が起こりました。それが消防の活動を妨げることになった。
・それと断水が起こっていたとしたら、そろそろ避難所ではトイレの問題が深刻化していると推測される。阪神でもひどいことになってましたが、東京の避難所の人口密度は阪神の比ではないので、想像するだに恐ろしい状況が発生しているのでは・・・。
・なお今回のタイトルは「多発する未知の脅威」となっていますが、これは正確に言うと間違いです。今回出てきているのはすべて「既知の脅威」です。本当の未知の脅威は全く想定外のところから発生します。
・また後でチラッと言ってましたが、今回はブラックアウトは発生していない状況なんでよすね。しかし現実にはこれが発生する可能性は高いです。そしてもしそうなると、いよいよ本当にテレビ放送なんて出来るのかという話になってきます。
・物資の不足の問題とかは多分明日の胆になるんでしょうね。食糧の不足も問題となりますが、それよりも喫緊の問題は水です。とにかく東京は人口密度が異常な都市ですから、備蓄で賄うのはほぼ不可能。だからこそ根本対策は「東京解体」しかないのですが。

 

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