教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

12/4 NHKスペシャル「体感 首都直下地震 DAY3 命の瀬戸際 新たな危機」

 災害スペシャル3日目。ドラマはさらに切迫してくる。

物資の不足、想定外の通電火災、そして再び余震が・・・

 3日目になると都内を覆っていた火災は一旦鎮まってくる。これは消火されたのではなく、燃え尽きてしまったから。そして建物に取り残されている人の救助活動も本格化し始める。しかし避難所では物資不足の問題が発生していた。大量の避難民に対して食料などの物資が足らず、各地で問題が起こり始めていた(私が先日指摘していたトイレの問題などもやはり発生している)。一方、ようやく幹線道路の復旧がなって緊急車両などを優先して走行させるようになり始めていた。明るい兆しが見え始めたか・・・と思ったところで突然に飛び込んできたのがタワーマンションの火災。元来タワーマンションは災害に強いはずだが、エレベータの停止で生活に不自由している住民達の強い要望で管理会社がエレベータを動かすために通電を行ったところ、留守になっていた部屋で通電火災が発生したのだった。通電火災は通電再開後に破損した電気製品などから火災が発生する事態。しかもこれの取材のために飛んでいた報道ヘリが、どこかの馬鹿が面白半分で飛ばしたドローンと衝突して墜落するという事故まで発生(「一千万人もいれば、そんなことをする馬鹿もいてもおかしくない」という台詞が妙にリアルだった。実際にどこかの馬鹿なユーチューバー辺りがやりそう。)、事態はさらに混乱していく。また株価は大暴落で「このままだと日本が滅ぶ」という台詞が飛び出し、件の編集長からは「こんなことが起こることが分かっていながら、それでも集中を進めていた」という批判の言葉まで登場する(これもまさに私が前からずっと言っていることだが)。そして大混乱の中、過労か血圧が上がりすぎかは定かではないが、編集長が突然にぶっ倒れるというアクシデントまで発生だが、これはドラマ上の演出としてはともかく、災害としては関係ない。そしてようやく倒壊したビルで救援が始まっていたところで、新たな大規模余震がという大混乱の幕切れ。

 

物資も医療も決定的に足りない

 救いが来たかと思えばどうしようもない事態が次々に起こるという怒濤の展開だが、実際にはもっとひどい状態になる可能性は高い。物資が不足した避難所では暴動状態になる可能性もあるし、被災者を救助しても医療が崩壊している可能性も高い。後半でチラリと説明していたが、医療機関の対応能力が決定的に不足して、1/3の患者が治療を受けられないまま死亡するという推算もあった。このような事態もこのドラマの裏では発生しているということだ。なおこの場合の死者は想定に入っていないとのことなので、これだけでも死者の数が1万人ほど跳ね上がることになる。とにかく最初に言っている2万人という死者数の想定はやはり1桁は少ないのではないかという気がする。

 なおマンションなどでは自宅避難が基本になっており、避難所は自宅が倒壊して住めない人を対象にしているというようなことを言っていたが、停電や断水が長引くとマンションの住民も避難所にやって来るというのは、今までの震災でも台風などでも見られた現象。これが避難所不足に拍車をかけることになる。ただそもそもやはり諸悪の根源は東京の異常な過密。だから今回の胆はぶち切れた編集長の「こんなことが起こることが分かっていながら、それでも集中を進めていた」との叫びに尽きるわけである。

 

通電火災の危険性

 最近特に危険性が指摘されているのは通電火災。実際に阪神大震災の時も、これが原因であちこちで後で火災が発生している。さらにこれがガス漏れと複合すればさせにとんでもない事態にもなる。これを防ぐには避難前にブレーカーを落としておくことだが、そういう冷静な活動が出来る者は決して多くはないだろう。なおホームセンターで感震ブレーカーなるものも販売されているとのことだが、これは極めてシンプルで、皿の上に乗ったおもりが地震の揺れで皿から落ちるとその時にブレーカーのスイッチを切るというもの。かなりシンプルな仕掛けであるが、これを考えた者はなかなか賢いと感じる。なお火災の防止にはこのようなブレーカーの処置と重要なのは初期消火。特にご近所さんとかが一致団結しての消火活動が効果的なんだが、今時の「隣はどこの誰なのよ?」という状況ではそれが心許ない。

 

 ドラマが終わった途端にあまりの重さにゲストも含めて静まりかえってしまって、イノッチが必死でまとめようとしていたが、かなりしんどそうなのが見えた。こういう場の仕切りを生でというのは相当にキツいだろうと思われる。小野アナの方は事前に決まっている段取りをこなすので一杯一杯な感じだし、ゲストの方も「何をコメントすれば良いの?」という感じで出演者全員がしんどそう。

 

忙しい方のための今回の要点

・3日目になると、燃えるものはほぼ燃え尽きたために火災は鎮まってくるが、それと共に避難所での食料や水などの物資不足が表面化し始める。
・また通電火災に要注意。番組ではタワーマンションの「想定外」の火災を取り上げている。これはエレベータが動かないとまともに生活できないタワーマンションのアキレス腱でもある。
・通電火災を防ぐには避難前にブレーカーを落とすこと。
・また病院では治療が出来ないまま死亡する患者が増加することが懸念されている。


忙しくない方のためのどうでも良い点

・いよいよ救いのない話になってきました。この調子でいくと、明日は決定的破滅状態になりそう。
・突然に携帯にメッセージがという展開もあったことから、通信インフラの復旧は順次進められているという設定なんだろうが、これは少々早すぎるんじゃないかなという気もする。私は国が想定している「救援活動が本格化するのに3日間」というのもあてにはならないと感じているので。

 

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