教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

12/5 NHKスペシャル「体感 首都直下地震 DAY4 命の瀬戸際 新たな危機」

 災害スペシャル4日目。ドラマは最終回を迎える。

余震による大規模土砂崩れに堤防決壊の危機

 先日起こった余震によってさらに大規模な被害が発生していた。神奈川では地盤の液状化によって住宅地が土砂崩れで埋まり、自宅に戻っていた100人以上が犠牲となった。中には赤ん坊が泣くために他の被災者に迷惑をかけるといって自宅に戻った若夫婦なども含まれていた。さらに荒川の堤防が地盤の液状化で甚大な被害を受けて決壊寸前であるという情報がSNSから上がってくる。もし荒川の堤防が決壊すると0メートル地帯は数メートルの浸水をしてシミュレーションによると数万人の犠牲者が出ることが予想されるという。未確認情報であるが被害の甚大さを考えた場合に報道するべきか。悩んでいるスタッフたちのところに例の嫌なチーフ(室井滋)が乱入してくる。上の意向ばかり忖度している彼女は、海外に日本の悪いイメージが伝わってはいけないと、悲惨なニュースを伝えることには反対し、総理の被災地訪問などの「どうでもいい内容」を優先的に伝えることを命令する。その姿勢に反感を感じつつも、権力を振りかざされて従わざるを得ないスタッフたち。

 そして放送が始まる。まずは神奈川の土砂崩れを伝え、次にチーフの意向通り総理の視察という「どうでも良い」ニュースを流す。そこに先日の女子高校生の救助作業が始まったという情報が飛び込んでくる。こうなると助かるかどうかは本人の生きたいという気力次第だとゲスト元レスキューの隊長が言う中、彼女は無事に救助される。彼女の無事に涙を流して喜ぶスタッフたち。それを見ていたヒロインが突然に行動を起こす。チーフの意向を無視して荒川の堤防の情報を伝え「早く逃げて!」と涙ながらに訴える。怒り狂って実力行使でやめさせようとするチーフを機材から引きはがして制したのは、先日倒れた編集長。そしてしばらくの後、区からも正式に避難指示が出たという情報が・・・というような展開。

 

ドラマは終わったものの・・・

 最終回とは言うものの、このドラマの内容上、大団円とか真の終了などあるはずもなく、「本番はこれからだ」というような印象の内容になっている。それだけではあまりに救いがないからか、終盤に女子高生の救出成功のエピソードがあるが、それはあくまでごくごく一部の成功事例にすぎないということは強調されている印象。ドラマのラストは「もし4日前に戻れたら・・・」というヒロインの台詞で終わっているが、そう言わなくてもいいように今のうちから備えてくださいという制作側のメッセージが強烈に詰まっているのは間違いない。

 なお室井滋演じるチーフがあまりにも嫌な奴だが、それがあまりにもリアルな印象を受けるので、実はこの人物には隠れモデルがいるのではないかという気がする。実際にこんな上の意向ばかり忖度するような輩に限って出世につながるのは明らかであり、それは安倍政権になってからさらに顕著である。NHKは政権の意向がもろに働く組織だけに、安倍に忖度しまくるだけで出世する奴もいるだろう。実際に安倍はNHKに自分の腰巾着の会長を送り込み、自分に都合の悪いニュースは流さないようにさせるなどということまでやっている。

 

堤防崩壊の恐怖

 さて災害の内容だが、今回登場したのは地震による堤防崩壊。これはかつては堤防は地震には強いので影響を受けないとされていたのだが、近年になってその考えは間違っているということが明らかになってきた事例。堤防が崩壊するとどれだけの被害が出るかは、台風19号による千曲川の堤防決壊などで記憶に新しいところであるが、東京の場合の被害はその比ではない。海抜0メートル地帯が広範囲にあるため、そのような地域は水位数メートルまで浸水が起こることが予想されるまた流れ込んだ水は地下街なども襲い、地下鉄網を通って広範囲にまで広がっていく。この時に地下に避難している被災者などがいたら、逃げ遅れて犠牲になるという可能性もある。一般的に地下街は地震の揺れには強いとされているのだが、その地下街が水に襲われるのである。実に救いがたい話だ。

 

 肝は各家庭で事前の備えをという話なのだが、正直なところそれで取れる対策などしれている。やはり政策レベルで東京の防災化(実は東京だけでなく、日本の大都市すべてで言えるのだが)を進める必要があるのだが、利権の確保にばかり目がいっている今の政権では・・・。

 

忙しい方のための今回の要点

・地震発生4日目。再度の大規模余震で住宅地で大規模な土砂崩れが発生、自宅に戻っていた100人以上が犠牲となる。
・さらに荒川の堤防が地震で損傷して決壊の恐れが発生する。堤防が決壊すると3万人以上の犠牲者が想定されている。
・地震で堤防が決壊すると、海抜0メートル地域には数メートルの水が流れ込み、それらの水は地下鉄を伝って広範囲に広がり、多大な犠牲を出す可能性がある。


忙しくない方のためのどうでも良い点

・どう決着をつけるのだろうと思っていたら、やっぱり決着つけないという形になりましたね。まあリアリティにこだわったドラマなとそうなるのは当然ではあります。
・それにしても今回はヒロイン・小柴風花の演技力が光りましたね。彼女、その内に朝ドラヒロインになるのと違うかな。

 

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