教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

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12/12 BSプレミアム 偉人たちの健康診断「紫式部"源氏物語"を健康診断」

 今回は平安版ハーレクイーンロマンス作者の紫式部について。源氏物語は主人公の美青年・光源氏の恋愛遍歴物語なのだが、視点を変えてみると登場する女性達は多様な病を患っており、それがまたリアルなのだとか。

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紫式部

 

源氏物語に反映されている当時の女性のストレスと病

 紫式部は幼少の頃から文才を発揮し、父親が「お前が男だったら」と嘆いたそうな。しかし彼女は物心着く前に母を亡くしており、母代わりになっていた姉も亡くなるというかなり寂しい人生を送っていたという。20代後半で中級貴族の男性と結婚して一女を儲けるが、その夫も3年で病死してしまう(とにかくこの時代は人がよく死ぬ)。その寂しい中で彼女が心を癒やすために書いたのが源氏物語であるという。だから光源氏の設定には紫式部自身の境遇が反映されているという。

 源氏物語に登場する女性はよく病で亡くなるが、当時の貴族女性はひたすら夫の来訪を待つだけという立場なので、とにかく高ストレスのために病気になりやすいのだとか。源氏物語の登場女性達の病気の背景もストレスがあると考えられるという。紫式部は当時の最先端の医学書である医心方を読み込んでいたと考えられるという。その知識が源氏物語にも反映されているという。なおこの医心方には平安女性の美容法まで書いてあるとか。

 

源氏物語の大ヒットで宮中入りした紫式部を待っていた困難

 紫式部の描いた物語は、当時の宮中の女性達にとっては非常にリアルな話だけに感情移入しやすく、口コミであっという間に大人気になる。その噂は宮中にまで広がり、時の一条天皇が熱心な読者となって続きを読みたがるという状況になったとか。それに目をつけたのが藤原道長。道長の娘の彰子を天皇に嫁がせており、皇子を儲けて天皇にして権力を盤石にしたいと考えていた。しかし当時の一条天皇のそばには定子という強力なライバルが居た。そこで道長は紫式部を彰子に仕えさせ、源氏物語で一条天皇を釣ろうと考えたのである。道長は紫式部に高価な紙を大量に与えて長大な物語を執筆できるようにした。道長の目論見は当たり、一条天皇は彰子の元に入り浸り、彰子は男子を出産する

 しかし宮中に女房として仕えることになった紫式部は大変だったらしい。その大変さは紫式部日記に愚痴られている。女性の組織ではよくあることだが、妬み、嫉み、いじめなどがあったらしい。紫式部は最初は出勤拒否にまでなりかかったが、教養をひけらかさずにおっとりとしているように見せることで、周囲に受け入れられたという。

 でこの日記内で紫式部は清少納言のことをボロカスに書いているらしい。曰く「したり顔で偉そう」。曰く「賢ぶって漢字まで使うけど間違いが多い」挙げ句が「ろくな死に方をしない」とまで書いているんだとか。紫式部がそこまで清少納言を恨むのは、そもそも清少納言が紫式部の夫の服装がTPOをわきまえていないとか、従兄弟が字が下手だとか先にボロクソに書いていたらしい。

 

日記が持つ思わぬ健康効果

 しかしこのように日記に自分の感情をぶちまけるのは健康には良いのだのこと。日記に感情も伴った内容を書いてもらうことで、高血圧が改善したとかの医学的報告もあるとか。この方法は高血圧だけでなく、腰痛・リウマチ・ぜんそく・不眠症、果ては会社の欠勤率の改善にまで効果があるという。また自分の感情を客観的に見ることが出来るようになり、感情の安定にも効果があるとか・・・とのことだが、そもそも効果のメインはこっちで、ストレスが軽減することで身体効果が現れるわけだろう。説明順序が逆である。

 心理学的には、怒り・恨み・苦悩など人間生活で生じる表層感情を小さくし、その根底にある悲しさ・寂しさなどの深層感情に気付くというのがポイントなのだそうな。つまりはなぜ自分が怒っているのか、恨んでいるのかという根底を探ることで、そもそもその怒りには意味がないなどと気付くことで感情が安定するらしい。

 というわけで番組では感情日記をお勧めしている。パソコンやスマホでもOKとのことだが、そのダークな感情をそのままSNSでぶちまけない方が良いと思う。ヘタすりゃ大炎上して余計にストレスが溜まることになるので(中にはもろにダークな感情を垂れ流している人もいるが)。

 

娘への指南書でもあった日記

 また紫式部がこのような日記を残したのは娘の賢子に対する指南書の意味もあったのではないかとしている。自分が宮中でした苦労などを日記で娘に教えようとしたのではという。紫式部の薫陶宜しくして、賢子は14歳で宮中デビューすると共に、華々しい活躍をしたという。多くの男性にモテモテの前半生の挙げ句に、天皇の乳母に抜擢されて高い官位も得て社会的な高い評価を受けたらしい。

 なお読書は健康に良いという報告もあるという。読書が知的好奇心を刺激して脳の働きが良くなることで長寿につながるのだとか。賢子も80歳まで生きたという。また紫式部自身は40代で亡くなったと言われていたが、最近の研究では最低でも60歳以上まで生きていたようであるとのこと。


 清少納言は当時のキャリアウーマンバリバリで、枕草子を読んだだけでもいささか教養をひけらかしているところが感じられるが、紫式部はそれに対してもっとしたたかという印象ですね。ある意味でいかにも日本女性らしい(笑)。そもそもブロガーと流行作家の違いもありますし(笑)。ブロガーの基本の一つはリア充自慢だったりしますが、流行作家はうけてなんぼです(笑)。

 読書は脳を刺激して健康長寿につながるということですが、テレビの視聴はどうなんでしょうね? 私のように倍速再生でかっ飛び視聴してたら、脳を疲労させて老化を早めるんじゃないかという気がしてきた。まあそれ以前に私の場合は、脳の血管が詰まる方が先に来そうですが

 

忙しい方のための今回の要点

・紫式部は人生で身近な人を次々と亡くしたことから、その寂しさを癒やす意味で物語の製作を始めた。
・紫式部が描いた女性達は病気でなくなる者が多いが、それは当時の女性がかなり高ストレス下で暮らしていたことを反映している。
・源氏物語は大人気となり、一条天皇までが作品のファンになったことから、それに目をつけた藤原道長が自分の娘の彰子の女官して紫式部を採用する。
・紫式部は日記にかなり感情をぶちまけた表現をしているが、このような日記はストレスの解消になって高血圧の改善などの効果があるという。
・また紫式部の日記は、自分が宮中でした苦労などを記すことで、娘の賢子の指南書となることを考えて残したものと考えられている。
・娘の賢子は紫式部の薫陶宜しくして、宮中でも大活躍し、80歳以上の長寿を誇ったという。
・読書には健康長寿につながる効果があるとの最新の報告もある。


忙しくない方のためのどうでもよい点

・源氏物語は日本最古の昼メロなどとも言われますが、確かに内容的には昼メロそのものです。最高峰の文学などとも言われますが、私は古文の原文をそのまま読めるだけの古典の知識はありませんし、現代語訳を読んだら光源氏の女性の品定めを延々書いているだけで退屈して途中で挫折しました(笑)。正直なところ私向きではない。意外と毒舌満開の「枕草子」の方が私には読みやすかったりする。

 

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