人間の手が作り上げた奇岩の風景
スペイン北西部のながらかな山中に突如として現れる奇岩の群れ、ラス・メドゥラス。こういうのを見ると長い自然の作用により・・・と思いそうになるのだが、実はこれは人の手によって作られたもの。それも2000年前にローマ人の手によるものだという。
『世界遺産』1/5(日) ローマ帝国の金山! 山を崩した700キロの水路 〜ラス・メドゥラス(スペイン)【TBS】
山を丸ごと水で崩したローマの技術
このラス・メドゥラスはローマ帝国最大の金山として、ここで産出する金がローマ帝国を支えることとなった。ここに含まれていたのは砂金。しかし岩石1トン中に3グラムしか含まれていないので、大量に土砂を採取する必要があり効率が悪い。そこでローマ人が取った方法が山を丸ごとを崩すというものだったという。
しかし火薬も重機も存在しない時代にどのような方法で山を崩したかであるが、それは水力を使用して。この地域には今でもいくつかのトンネルが残っているが、それがその作業の名残だという。山頂に水を溜めた上で、山中に多数のトンネルを掘り、そのトンネルに一気に大量の水を通すことで地盤を緩めて土砂崩れで山を崩壊させるという極めて大胆でいて精緻な方法である。
この地域にはそのための水を遠くの川から引いてくるための全長700キロにも及ぶ多数の水路が残っているという。今ではまるで道のように見えるその水路は、もっとも長いもので90キロもあるが、驚くべきはその建築技術。これらの水路は100メートルで2~3センチほど下がるように作られており、自然に水が流れて行くように建築されているという。各地の都市にローマ水道を建造したローマ人らしい高度な建築技術である。
砂金採掘が周辺地形にも影響を与える
こうして採掘された土砂は砂金を取り出すために川の水で洗われる。こうして流出した大量の土砂が下流で川をせき止めて湖ができるなど地形を変えている。また金を採取して残った岩石は辺りに放棄されたために、石がゴロゴロ転がっている地域などもあるなど周辺の地形に大きな影響を与えている。
土壌が貧しいこの地域では、労働者の食糧を確保するために栗を植えたという。それらの栗の木は今もこの地域に残っており、この地域が森となることで当時の地形が今日まで残ることになったのだという。この地はローマの高度な金採掘技術を伝える遺跡として世界遺産に認定された。
さすがにローマ帝国というか、やることが規模がでかくて派手です。さすがに建築関係については非常に高度な技術を持っていたことが分かる。ただそれだけにかなり大規模な自然破壊でもあるという気もしますね。石見銀山が世界遺産に認定された時に「環境にも調和した採掘技術」というのが評価されたというのが、これを見ていたら何となく納得できるような気がした。
忙しい方のための今回の要点
・スペインのラス・メドゥラスの奇岩の群れは、ローマ時代の金山採掘の跡である。
・ローマ人は山にトンネルを掘り、そこに大量の水を流すことで地盤を緩めて、一気に山を崩すという方法で砂金を大量に採掘した。
・採掘のための水を確保するため、ローマ人は全長700キロにも及ぶ長大で精密な水路を辺りに張り巡らせた。
・金採掘に伴う土砂で、川の下流が埋まったりなど、辺りの地形にも大きな影響を与えている。
忙しくない方のためのどうでもよい点
・とにかくローマ人というのは土木工事が大好きです。この土木工事好きと風呂好きこそが、日本人こそローマ人の末裔ではないかといわれる所以でもあったりするのですが・・・。
・驚くのとにかくトンネルを掘りまくっていることです。トンネルを掘るというのは今でもそんなに楽なことではないのに、それを人力だけで精密にやっているというのがとにかく驚き。技術もさることながら、それだけの労働力を投入できたというのも、大帝国の力というやつでしょうか。
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