教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

1/29 NHK ガッテン「実は女性の死亡数1位!大腸ガンで死なない秘策」

女性の死因No1の大腸ガンに潜む問題

 「私だけは大丈夫」という根拠のない楽観的な思い込みは正常性バイアスといわれる。韓国の地下鉄火災で煙が充満する地下鉄の中で座ったまま避難しなかった人たちの衝撃映像が話題となったが、実はこの正常性バイアスのせいで多くの人の命が奪われているのが大腸ガンだという。実は大腸ガンはガンの死因の内、男性で3位、なんと女性で1位だという。

 大腸ガンの検査といえば便潜血検査。最近は受診率も上がってきているというが、問題なのは検査で陽性が出て要精密検査といわれたにもか変わらず、その後に検査を受けていない人が多いという問題。これには関係機関も懸念を抱いていて、直接電話をかけたりなどあの手この手を打っているのだが、なかなか受診率が向上しないという。

 

ガンではなくて痔なんじゃないかという希望的思い込み

 ではなぜ検査を受けないのか。実際に検査を受けていない人にアンケートを取ったところ。第3位は「実際にガンが見つかると恐いから」。ガンを見つけるための検査なのに矛盾した結果であるが、要はガンがないという結果が欲しかったのに心ならずも陽性が出てしまってビビっているというお話。第2位は「病院に行く時間がない」。これは仕事を抱えている人の場合は分からなくはない。かく言う私も検診のために休みを取って病院へというとなかなかハードルが高いのは事実。そして問題の第1位は「痔のせいだと思った」というもの。しかしこのアンケートには続きがあり、ではあなたは実際に痔を患っていますかと聞いたら半数はいいえ。つまりは痔があるわけでないのに、今回に限って痔の影響が出てしまったんだと考えたという次第。これこそまさに正常性バイアスである。

 

実は痔は便潜血検査に影響しない

 さらにここで「じゃあ、痔のある人は便潜血検査では区別できないから無意味なのか」という話の真偽。番組では実際に青森県での検査の結果を公表しているが、痔のない人で検査で陽性になった比率は7%、これに対して痔のある人で検査で陽性になった人の比率は5%とのことで、その差はない。最近の研究結果でも便潜血検査の結果と痔は全く無関係であるということが明らかになっているという。

 それはなぜかであるが、大腸にガンがあって便に血が混ざる場合は、まだ柔らかい状態の便に血が混ざることになるので、大腸内を便が動く時に血は便全体に混ざることになるが、痔の出血の場合は既に固くなった便の一部に血が付着する形になるので、まさにその血が付着した部分そのものをサンプリングしない限りは便潜血の反応は出ないのだという。実際に痔が原因で便潜血が陽性になる確率は2%とのこと。

 番組ではここでだめ押しのように「あの時に検査をしていたら・・・」という方の紹介をしている。痔だと思って放置していたために後で開腹手術になった人などが登場する(初期のガンなどの場合は、内視鏡検査の際にそのまま切除することも出来る)。ただ番組に登場した方達は、それでも何とか助かった人たちであって、本当に「あの時に検査をしていたら・・・」という方達は多分今はもう亡くなっている方達のような気がするが。

 

進化した大腸内視鏡検査

 以上のように検査の重要性は分かったものの、やっぱり大腸内視鏡検査は何となく恐いしハードルが高い・・・と感じる人のために、番組では現在の内視鏡検査が如何なるものかを紹介している。番組では実際に検査で陽性になったが半年放っているという患者に密着。まずは前日には消化の良いものを食べないといけないので、特別な食事をすることにする。何となく離乳食か老人食のようなものに見えるが、食べた感想は「結構美味しい」とのこと。そして病院に行くと、下剤を飲んで腸の中のものを出すことになる。そして検査着(内視鏡を入れる穴だけが開いているので、お尻丸出しで検査ということはないらしい)を着用、そして患者さんはやや緊張の面持ちで検査に挑むが、実際に受けてみると「苦しくも何ともない」とのことでやや拍子抜けの様子。検査の結果は無事に異常なしとのことで、この時の患者さんのホッとした顔。

 

 ということで、皆さん検査を受けましょうというお話。どうやら今回の内容もどこか関係機関の依頼を受けている模様です。確かに検査を受けないといけないよな・・・。実は私は内視鏡検査どころか、便潜血検査自体をこの数年受けてません。やっばり年齢的にかなりヤバいんで受ける必要はありそうだな・・・。

 

忙しい方のための今回の要点

・大腸ガンはガンの死因で男性で3位、女性で1位であるが、便潜血検査を受けて陽性が出たのに精密検査を受けない人が非常に多いという。
・精密検査を受けなかった人の理由のトップは「痔のせいだと思った」とのことだが、これこそが「自分は大丈夫」という根拠のない思い込み(正常性バイアス)の最たるものであるとしている。
・実は痔による出血はほとんどの場合は検査に引っかかることがないので、痔があったとしても便潜血検査の結果には影響はほとんどない。
・現在は内視鏡の技術が進んでおり、大腸内視鏡検査は体にほとんど負担がないので、陽性が出た場合には検査を受けるべきである。

 

忙しくない方のためのどうでもよい点

・ガンの検査の技術もドンドンと進歩してます。「ガイアの夜明け」なんかでも特集してましたが、血一滴や尿一滴であらゆる種類のガンを早期発見できる検査なんかの技術も開発が進行中とのこと。いずれはこういう簡単な検査ですべて見つかるようになると良いですね。まあとにかく現状は、便潜血検査と大腸内視鏡検査は受けましょうというお話。なお私の年になると他にもいろいろと可能性があるので、やはり人間ドックを受けるべきなんてでしょうね。今年は忙しくて予約を入れるのを忘れたけど、来年は受けないといけないだろうな。

 

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