教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

2/6 BSプレミアム 偉人たちの健康診断「与謝野晶子 悩める乙女と恋の病」

内気な少女を変えた鉄幹との出会い

 今回は情熱の歌人とも言われた与謝野晶子。彼女のみだれ髪は当時話題になった。女の身であれだけの情熱的な歌(と言うよりも、ハッキリ言ってエロイ)を歌うのは当時ではかなりの反響を呼んだ(当然ながら好意的な反響だけではない)。そして彼女は情熱の歌人と呼ばれるようになった。あの歌だけだとさぞかし奔放な女性というイメージが湧くが、実際の彼女はそれとは対極的な少女だったという。

 堺の和菓子屋に生まれた晶子は10歳から家業の手伝いに明け暮れる内気な少女だったという。そんな彼女が文学にはまる。そして自ら短歌を詠むようになったという。そんな彼女に21際の時に歌会で運命的な出会いが起こる。

 そこにいたのが短歌の改革を目指す27歳の与謝野鉄幹だった。「思ったことをそのまま歌にすればよい」という鉄幹に晶子は大きく影響を受けるとともに惹かれていく。今まで無意識に抑圧された生活を送っていた彼女にとって、これは一種の解放だったのかもしれない。

 

恋の病で突っ走る晶子

 この時の晶子がかかっていた恐ろしい病こそが「恋の病」であるという(オイ!)。恋をすることで「周りが見えなくなる」ということが起こる。恋をしている人間は恋人の顔を見ると不安や恐怖を感じる偏桃体や冷静な判断を司る側頭・頭頂接合部の働きが低下するということが脳科学の研究で判明したのだという。つまり恋をすると「馬鹿になる」ということである(笑)。不安や恐怖がなくなって突っ走るそうな。

 しかし鉄幹は危険な男でもあった。彼には妻がいただけでなく、晶子以外の女性の影が多数あった(口の上手い文学青年の周りに夢見る文学少女が群がっていたら、そういう状況になるのは容易に推測がつく)。しかし晶子は情熱的に突っ走る。鉄幹に迫っていくだけでなく、かなり情熱的な歌を量産する。

 だが明治の厳しい世の中では晶子の不倫の恋は総批判を食らうことになる。しかし彼女はそれに反発するようにさらに情熱的な歌を発表する。これは恋の病のもう一つの症状である「反対されるほど燃える」というものだという。これは「ロミオとジュリエット効果」とも言われ、反対されれば反対されるほど燃えるということでよくある話のなのだとか(反対がなくなった途端に急に冷えることもあるようだが)。

 

鉄幹と結婚するが、今度は鉄幹が不安定に

 晶子の思いが通じたか鉄幹は妻と離婚してようやく二人は結婚する。晶子の歌は「みだれ髪」として発表されるが、これは激しい反発を受けると同時に、新たな時代の新しい歌としての称賛も浴びる。

 鉄幹と結婚して多くの子供に恵まれた晶子は、子育てをしながら鉄幹に歌を習っている日常を送っていた。やがて晶子もだんだんと有名になり多くの仕事が舞い込む模様になってきた。しかしそのころに鉄幹に異常が現れる。心身ともに不安定となり、ある日晶子は、鉄幹が包丁で庭の蟻を何時間も突いているという異常行動を目にすることになる。この時の鉄幹は適応障害を起こしていたと考えられるという。この頃の鉄幹は仕事で行き詰っていた。彼が創刊した「明星」は文学の流行の変化で廃刊に追い込まれていた。自身の仕事が行き詰まる一方で、妻の晶子の仕事がどんどんと増加していき、かつての師弟関係も収入も逆転してしまっている状況は鉄幹にとっては非常なストレスだったのだろうという(つまりは鉄幹も実は根っこでは男尊女卑思想に染まっていたのではないかと推測できるのだが)。やがて鉄幹はDVに走って夫婦関係は危機に。そして晶子は心臓の異常で倒れることになる。

 夫婦関係の悪化で心臓病を発症することもあるのだとか。アドレナリンが増えることで血小板から突起が出て血栓を起こすということが最近に分かってきたという。夫婦関係が原因となる夫源病、妻源病なるものがあるのだとか。夫婦が一緒にいることでストレスが増えていく状態なので、解消にはとりあえずの別居などで頭を冷やすことだという。

 

鉄幹をパリに送り出したことで再び盛り上がる二人

 危機的状況で晶子は鉄幹が以前から夢見ていたパリ行きを実現させることを考える。しかし多くの子供を抱えた苦しい生活の中で渡欧にかかる莫大な費用を用立てるのは簡単ではなかった。そこで晶子は百首屏風という自作の歌を書いた屏風を作ってこれを売って金を稼ぎ、鉄幹をパリに送り出す

 こうして晶子の生活は落ち着くのだが、鉄幹と離れると今度は急に鉄幹への思いがこみ上げてくることになったという。そしてとうとう我慢できなくなった晶子はシベリア鉄道でパリの鉄幹の元に駆け付ける。そしてパリで合流した二人はラブラブ生活に(もう勝手にやってくれと言いたくなってきた・・・)

 倦怠期になってきた夫婦は旅行が効果的なのだとか。心理学的に自己高揚動機というのがあるのだとか。交際初期のカップルは、相手の意外な一面を知ることで自身の自己高揚動機が刺激されるのだが、お互いに相手のことがよくわかってきて新鮮さがなくなることによって倦怠期になるのだという。しかし旅行という非日常環境に身を置くことでこれが新たな刺激になるのだという(・・・)

 パリ行きの後も二人は頻繁に旅行するようになったという。そのような穏やかな日常を送れるようになった二人だが、晶子が62歳の時に鉄幹は肺炎で倒れて亡くなってしまう。鉄幹の葬儀では晶子は呆然と棺のそばに立ち尽くしているだけだったという。本気で心底惚れていたようである。


 独身男としては「勝手にやってろ!」というしかない内容でした(笑)。恋は盲目、あばたもエクボなどと申しますが、やはり恋は人間を馬鹿にしてしまうようです(笑)。恋愛脳なんて言葉もありますが、与謝野晶子ってその元祖と言える人ですね。

 

忙しい方のための今回の要点

・内気な少女だった与謝野晶子は鉄幹と出会うことで新たな歌に目覚めるとともに彼に起用列に惹かれるようになる。
・当時の鉄幹は妻帯者であり、晶子は世間からの批判を食らうがそれをものともせずに突っ走り、最終的に二人は結婚する。
・二人は多くの子宝にも恵まれるが、やがて晶子の世間の評価が上がってくるのに反して、鉄幹の方は仕事に行き詰まり、それがストレスとなって鉄幹に適応障害の症状があらわれてくる。
・ついに晶子もストレスで倒れる事態になり、晶子は鉄幹をかつてから夢見ていたパリ行きに送り出すことにする。
・しかし鉄幹をパリに送り出すと、鉄幹に対する思いが募って我慢できなくなって自身もパリにわたる。

 

忙しくない方のためのどうでもよい点

・全く恋とはすばらしくもとんでもないもののようです。残念ながら私はそのように突っ走ることはなかったですね・・・だからこそ生涯独身なんですが。
・というわけで今回の感想は「勝手にやってろ!」の一言です(笑)。

 

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