教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

2/27 BSプレミアム 偉人たちの健康診断「古墳は健康タイムカプセル」

 今回のテーマは古墳。古墳に葬られた古代人を健康診断しようという話。

 

未盗掘の石棺が発見された藤ノ木古墳

 番組はまず奈良県の藤ノ木古墳を訪問して、その石室内を見学させてもらっている。この古墳は1980年に未盗掘の石棺が発見されて大きな話題となったという。

 石室の中は巨石で囲まれたなかなか広いスペース。天上の巨石は50トンあると考えられるとのこと。この石室の入口は封じられて完全に密閉スペースとなっていた。中は湿度が100パーセント近い高さであるのが特徴。そのために内部では結露などが多いという。この中に未盗掘の家型石棺が発見されたのである。1980年の開棺作業では石棺内に10センチ溜まった水の水抜き作業から行われた。副葬品には実際に使用した馬具なども発見されたために、埋葬者は身分が高く乗馬などを行っていた人物であると分かるという。

 骨から埋葬されている人物についての推定が可能である。残された手足の骨の長さを元に身長を推定する計算式があるそうな。藤ノ木古墳の埋葬者は身長164センチと推定されたという。また頭蓋骨などが残っていたら、頭蓋骨の継ぎ目の縫合線という部分が年齢と共に消えることから年齢を推定できるとか。藤ノ木古墳の場合、頭蓋骨は破壊されてしまっていたが、骨盤の恥骨をつなぐ溝の磨り減り具合から17~25才と推定され、また骨盤の形から男性と推測されるという。しかも実はこの石棺に埋葬されていたのは2人であるということも分かったという。しかも共に埋葬されているのは男性とのことで、その関係が謎ではある(王と従者、それとも古墳時代のLGBT?)。

 

灰塚山古墳で発見された頭蓋骨から埋葬者を復元

 また福島県喜多方市の宇内青津古墳群の中の灰塚山古墳では、発掘調査で東北地方で初めて古墳時代の全身人骨が発見された。保存状態が良好な頭蓋骨が見つかったことから、これを元に生前の姿を復元させようというプロジェクトが実行されたという。埋葬者は50代の男性と見られている。まず復顔に当たってはいわゆる「濃い」系の縄文顔か「薄い」系の弥生顔かの判断が必要なのでDNA鑑定が行われたところ、縄文系と大陸系の中間にある現代日本人と比較的近いDNAであることが分かったという。さらに復顔で一番難しいのがアゴの発達度合いの見極めだが、歯の調査の結果、幼い頃から栄養状態が非常によかったことが分かるという。さらに骨から抽出したコラーゲンにより、淡水魚類(ナマズなど)を多く食べていたのではないかと思われるという。これらのことからタンパク質が十分なのでガッチリとした体をしていたと推測されるという。その結果の復元映像が登場していたが、普通にそこらにいそうなオッサンである。

 

発掘しないで内部を調査する最新技術

 次は奈良県桜井市の箸墓古墳。ここは現在は陵墓として封鎖されている(考古学の発展を全力で阻止する宮内庁の仕事です)。現在は内部を外から探査するためのミューオン検出の装置が設置されている。宇宙線の通過を検出することで内部構造を探査するのだという。2年間にわたる調査中で近々発表があるのではとのこと(その時NHKスペシャルで放送するだろう)。

 

藤原鎌足が埋葬されている?阿武山古墳

 最後は藤原鎌足について。彼のX線写真とされる資料が残っているという。大阪市高槻市の阿武山古墳で昭和9年の掘削の際に漆塗りの棺が発見された時、この地にゆかりのある藤原鎌足のものではないかと推測されたのだという。しかし発掘開始から4ヶ月、宮内庁の横やりで調査は突然中止されたのだという(考古学の発展を全力で阻止する宮内庁のお仕事です)。そして棺は再び戻されてしまったのだが、その前に内部が密かにX線で撮影されていて、その写真が1980年代になって見つかったのだとか。

 写真から推定された被葬者は身長165センチの男性で死亡年齢は30~60代。大腿骨の表面に粗線という線がハッキリと出ており、これはよく運動をしている人に出るものだという。さらに腰椎につぶれた部分があり、何らかの事故で怪我をしたのではないかと考えられるとのこと。この状態からは重篤な脊椎障害を起こしており、下半身の運動機能と知覚が完全に麻痺していたと考えられるという。日本書紀の記述を見ると、鎌足は落雷で亡くなったと記されており、この時に家屋の下敷きになるなどして怪我を負ったのではと考えられるとのこと。というわけで、ここの被葬者が鎌足である可能性は高いのではとのこと。というわけで考古学の発展を阻止する宮内庁を何とかして、科学的な調査を行う必要がある。


 というわけで、古墳に関する話になると、どうしても宮内庁の妨害工作の話ばかりが出てこざるを得なくなります。何も明治天皇陵を発掘しようという話ではないので、これは天皇自ら「1000年以上前の陵墓の学術的発掘調査は考古学発展の面からも実施すべき」という声明が欲しいところです。

 

忙しい方のための今回の要点

・現在は古墳に残された人骨などから埋葬者の生前についてかなり分かるようになってきた。藤ノ木古墳の埋葬者は17~25才の男性で、なぜかもう一人の男性と埋葬されていた。
・福島県の灰塚山古墳からは保存状態の良好な頭蓋骨が見つかっており、それを元にして生前の姿がCGで復元された。
・さらに陵墓であるために発掘が禁じられている箸墓古墳では、宇宙線を使用した内部調査が行われている。
・大阪の阿武山古墳では漆塗りの棺が発見されており、藤原鎌足のものではと騒然となったのだが、宮内庁の横槍で調査は中断されてしまった。しかしその時に密かに撮影されていたX線写真によると、埋葬者の死因が日本書紀に記された藤原鎌足のものと符合しており、埋葬されているのが藤原鎌足である可能性を強く示唆している。

 

忙しくない方のためのどうでもよい点

・日本の役所って無駄なことをするためにあるのかと思ってしまうようなところが多々ありますが(安倍の指示で現在新型肺炎の検査を徹底して妨害している厚労省とか)、宮内庁は特に考古学を妨害するためにあるようにしか私には思えません。

 

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