古代ローマの浴場から始まったイギリスで最も美しい町
イギリスで最も美しい町と言われる世界遺産の町バース。ここはそもそもは古代ローマの温泉から始まった町である。町の名は風呂(bath)から来てるのだとか。
町の中央には古代ローマ時代の温泉が残っており、今でも湯が湧いている。2000年前に巨大浴槽が作られた。この北に源泉が湧いていて、ここから各浴場にお湯を供給するシステムになっていたという。ここはローマ時代の健康ランドだったのだという。この施設には鉛の水道管が使用され、浴槽の底には保温のために鉛をしいてあったという。
前線兵士を癒やした浴場
1世紀頃、ローマ帝国がイギリスに侵攻しローマの文化を取り入れた。ローマ人の侵攻するところ必ず都市が出来るというわけで、あちこちにローマの施設が建造された。ハドリアヌスの時にはイギリスの北部まで進出し、180キロに及ぶ国境線を守る長城も築かれたという。バースの温泉は前線で傷ついた兵士を癒やすための施設だった。
温泉からはローマ人の爪やすりなども発掘されている。ローマ人は清潔好きで身なりを整えるグッズを多数持っていたという。古代ローマ人によって浴場は神聖なもので、神殿も築かれていたという。また源泉には呪いを書いた金属板なども見つかったとか。聖なる源泉の力で呪いを叶えるという考えらしい。
忘れられた町が18世紀に再び脚光を浴びる
バースの繁栄は400年続いたが、ローマの撤退と共に忘れ去られていった(イギリスの蛮人は風呂に入りませんから)。この地が再び注目されるようになったのは18世紀になって王侯貴族のリゾート地として温泉が再開発されてからだという。上流階級好みの施設が多く建てられて繁栄したという。冬になるとロンドンの社交界がここに移ってきたようになったという。
町は計画的に建築され、それが今日まで続いている。特徴的なのは円形広場であるサーカス。この周囲には上流階級用のテラスハウスが建築された。また巨大なロイヤルクレセントと呼ばれる建物は、三日月型の当時イギリス最大の集合住宅で、全長180メートルの中に3階立ての邸宅が30個連なっている。またバースの建築はハチミツ色の外壁で統一されているが、これはバースストンと呼ばれ、この町の地下で切り出される大理石だという。今でも建物に一定以上のバースストンを使用する事が義務づけられており、これが町並の統一感を生んでいる。バースストンは加工しやすく、また時間が経つとハチミツ色になるのだとか。
非常に美しい町です。また温泉の町というのはいかにも日本人好み。残念ながら日本にはこれだけ統一された町はありません。この辺りは石造り文化と木造文化の違いもあるかも知れません(木造文化は基本的にスクラップアンドビルド)。それにしても古代ローマ人というのは非常に土木集団であり、彼らが進駐するところことごとく都市が出来てます。そして彼らが都市を造ると必ず風呂と闘技場が出来るという。このバースなんかは典型的ですね。それにしても2000年も温泉が湧き続けているというのもすごいんですが、その泉源は何なんでしょうね。そこのところの説明があるかと思っていたのですが、それは全くありませんでした。近くに火山でもあるんでしょうか。
忙しい方のための今回の要点
・イギリスで一番美しい町とも言われるバースは、古代ローマ人が温泉を中心に作った町である。
・ここにはイギリスに侵攻してきたローマ兵が傷を癒やすための温泉浴場があった。
・しかしローマの撤退後しばらす忘れられた土地となっていた。再び脚光を浴びるようになったのは18世紀になって上流階級の温泉リゾート地として注目されるようになってから。
・計画的に上流階級向けの建造物が多数建造された。ここの建物にはバースストンと呼ばれる地下から切り出した大理石が使用されており、それが街並みの統一感をもたらしている。
忙しくない方のためのどうでもよい点
・ヨーロッパって、こういう統一感のある街並みが残っているんですが、日本ってその点は惨憺たるものがあります。戦争で各地が丸焼けになったというのもありますが、戦争で焼けなかった京都なんて日本人が自ら破壊してしまって今の惨状ですから。どうも日本人には街並みという意識は皆無のようですね。
次回の世界遺産
前回の世界遺産
