世界中で問題となっているゴミ。そのゴミを宝に変えようという企業の取り組みを紹介。
廃品回収業者が挑む新ビジネス
最初に登場するのは群馬県にある廃品回収業者ナカダイ。毎日運び込まれる廃棄物は60トン。これを徹底した分別を行うことでリサイクル率が99%というのがここの売りである。全国平均は53%というから驚異的な数字である。通常の業者だと主な金属を取り出す程度で後は破砕処理が多いが、ナカダイではネジの一本まで分別する。女性従業員がこういう細かい作業を手がけている。徹底した分別によって相場の1割増しで買い取ってもらえるものもあると言う。年商は7億円とのこと。しかし社長の中台氏にはジレンマがあった。と言うのは、ナカダイがドンドン業績を拡大していくということは、世間にはもっともっとゴミを出してくださいということになってしまうからである。そこで中台氏は新しいビジネスを模索していた。
廃棄物を素材にして新製品を作る
循環を前提にした社会に対応するとして、中台氏が取り組んでいたのは廃棄物を素材として家具などの新しい製品を作るという事業。中台氏はそのためにモノファクトリーという会社を設立した。捨てられた跳び箱を再利用して製作したテーブルとベンチ(22万円)などゴミを素材として利用したお洒落家具などが展示されている。この会社の立ち上げを託されたのが河西桃子氏。美術系の大学からナカダイに入社したという。この会社は既に2億を売り上げているという。
モノファクトリーを多摩美術大学の学生が訪ねてきた。彼らの感性を生かして価値ある商品をゴミから生み出してもらおうという試みである。いろいろなアイディアを出す若者たち。そして中台氏は彼らのために格好の舞台を用意する。東京代々木で開催されたアパレルの展示会。そこに彼らの姿があった。プラゴミから製作した照明カバーやエアバッグから作ったバッグなどが展示される中、中台氏も感心したのが捨てられる服の生地を使ったお洒落な傘。これを作った小笠原氏は傘のゴミが多いから、傘に愛着を持ってもらうことでゴミが減るようにと考えたとのこと。早速ファッションブランドの経営者やセレクトショップのバイヤーから声がかかる。中台氏はこの新しい事業に手応えを感じている。
プラスチックと生ゴミを完璧に分別する機械
増え続けているプラスチックゴミだが、再利用のポイントは分別。また汚いプラスチックは再利用できないので洗浄の必要がある。これらの問題を解決する機械を開発したのが長野県千曲市のモキ製作所。従業員35人の町工場だが、年商5億3千万という。ここの売りが会長の茂木国豊氏が開発したプラスチックゴミの分別機。この分別機に賞味期限切れの弁当などをパックのまま入れると、粉砕された生ゴミとプラスチックが完全に分別されて出てくる。完璧に分別されるために両方ともリサイクル可能なのだという。処理能力に応じて様々なサイズの機械があるが、これらは自治体のゴミ処理場などに導入されている。ポリ袋に入った生ゴミを投入すると、生ゴミがポリ袋と分別される。そして生ゴミは堆肥として利用されている。茂木氏は無煙薪ストーブなど今まで様々な機械を発明してきている。これからはゴミの分別が大切と考えてこの装置を開発したという。さらに装置の改良にも余念なく、最新の装置ではリサイクルの出来ない汚れたプラスチックも水洗いされて綺麗になって出てくるので、リサイクルに使用できるようになるという。
フィリピンのプラスチックゴミ問題解決に貢献できるか
茂木氏がこの装置を使う先として目をつけたのがフィリピン。現在フィリピンでは大量のプラスチックゴミの海洋流出が問題となっていた。早速営業課のエースの野上氏がフィリピンに渡って視察したところ、フィリピンのプラスチックゴミはヘドロなどで汚れており、これが綺麗になるかどうかが鍵となりそう。そこで野上氏はフィリピンの環境天然資源省を訪れて機械を紹介、翌日担当者を交えての実演を行うことになる。現地の人々の見守る中での実演。茂木氏が投入したゴミが綺麗になって粉砕されて出てくる。ヘドロは見事に分別されている。現地の人々は驚きで、環境省の担当者も使えるという感触を得た。モキ製作所では現地の代理店を通してこれからビジネスを拡大していく予定にしている。
売れ残り衣料販売のショーイチが挑む新ビジネス
また多くの洋服が日本では焼却処分されている。これの削減に取り組んだのが以前にもこの番組に登場したショーイチの山本昌一氏。ショーイチは以前から売れ残りの新品の服を仕入れて捌くという商売を行っていたが、山本氏はさらに新たな取り組みを開始していた。それはウールのセーターなどの古着を仕入れて、それを再び糸に戻してから新しい服を作ろうという試みである。貴重なウールを有効に活用するという考えである。
町工場の力を利用して古着から新しい衣類を作る
山本氏が目をつけたのはウール製品産地の愛知県・一宮市の町工場サンリード。ここで先ほどの古着を色別に分けてボタンやタグなどをはずして生地だけにすると、機械で繊維をほぐして綿の状態にする。山本氏はこの綿を一宮市の大和紡績で糸にしてもらう。この時に複数の色を混合することで山本氏のイメージ通りの色に仕上げてもらう。この糸を使って作る服のデザインを手がけるのはデザイナーの出口雅一氏。一流ブランドで最先端の服を提案してきたデザイナーだという。出口氏のデザインに基づいて大阪市泉大津市のニット工場アイソトープで服に仕立ててもらう。
早速最先端の自動機械で試作のセーターを製造しようとしたのだが、いきなりトラブルが発生する。山本氏が柔らかい肌触りにこだわって製作した糸が強度が足りなくて機械の中で切れてしまうのである。どうするか。アイソトープのスタッフが慌てて持ってきたのが蠟。これをつけることで糸の抵抗を減らすのだという。さらに編み機の張力を調整して再度のテスト。今度は問題なくセーターが編み上がり、試しに着てみた山本氏も満足の出来。今回製作した服はクラウドファンディングで取り組みに賛同してくれた人に配達された。事業としての感触を得た山本氏はさらに展開をする予定。
以上、ゴミとなっていたものを再利用するビジネスや、ゴミのリサイクルを進めるためのビジネス。やはりビジネスをするなら、環境を破壊して社会に害悪を流しながらするのではなく、このように世の中に役に立つビジネスをしたいものである。同じビジネスでも人の血をすすってぼろ儲けしているような兵器ビジネスなんかと比較すると、経営者達自身がそもそもいかにも崇高な目的意識を持っている。そのような目的意識を持ちつつ、しっかりビジネスとしての収益を出すところが彼らの優秀なところで、いかに目的が崇高であっても、経済的に成り立たなかったら持続性がない。こういうビジネスマインドは大いに有用だし、このようなビジネスマンは守銭奴として軽蔑されることがない。
ナカダイはゴミを原料にして、ある意味でボロい商売をおもいついたものだと感心する。廃棄の太陽光パネルを利用したテーブルが30万円というのはいささか高すぎるのではと感じるが、それでも売れると言うことはそれだけの付加価値を感じる人がいると言うことだろう。デザインなどのセンスというのはこういう時にものを言う。
アイディアマン茂木氏の機械は実に見事であるが、これから途上国ビジネスをする時に気をつける必要があるのはパクリの登場。中国メーカーなんかはそもそもから特許を守る意識のないところがまだ多いので、平気でコピー商品なんかを出してくるので、茂木氏のビジネスが多くなってきたらそういうのに注意する必要があるだろう。
再度登場の山本氏は相変わらず驀進中である。そのアイディアには恐れ入るが、一貫して日本の町工場を使用しているところがまた良い。単純にコストだけで中国に投げたりしていたら日本の産業が空洞化して回り回って自らの会社の首を絞めることになる。四半期の利益だけを考えて、かつての技術大国を地に落としてしまった日本の大手メーカーなんかの罪は深いところである。
こうして見ていると、経団連なんかに雁首を並べている大手企業の経営者はボンクラ揃いだが、まだまだ中小企業には人材がいるということを感じる。日本の今後は彼らのような経営者に期待したい。
忙しい方のための今回の要点
・廃品回収業のナカダイでは、徹底した分別によって収益を上げている。リサイクル率は実に99%に及ぶという。
・そのナカダイは新たにゴミを素材として活用した製品の製作販売を手がけるモノファクトリーを設立した。優れた感性による商品で軌道に乗りつつある。
・長野のモキ製作所は生ゴミとプラスチックを完璧に分別できる機械を開発、ゴミ処理場での生ゴミとプラスチックのリサイクルに貢献している。今回さらに廃プラスチックの問題が深刻なフィリピンに進出、現地のゴミ処理に貢献しようとしている。
・売れ残り衣類の販売のショーイチは、古着のウールから新たに糸を作って新品の洋服を作るビジネスに乗り出そうとしている。
忙しくない方のためのどうでもよい点
・やはりビジネスをするなら、何らかの形で社会に貢献するビジネスでないと駄目ですね。兵器や銃を作っている連中なんて、良心が痛む事なんてないんでしょうか? およそ人並みの羞恥心を持っていたら出来ないビジネスです。
次回のガイアの夜明け
前回のガイアの夜明け