教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

3/26 BSプレミアム 偉人たちの健康診断「江戸の健康革命」

 今回は江戸庶民の健康の秘訣に迫るとする。江戸の町は当時の世界最大の町であったが、そこの庶民は意外に健康で長命な者も多かった(一方で幼くして死ぬ者も多かったと思いますが)という。その江戸庶民の健康につながった生活習慣を分析するらしい。

 

江戸のファーストフードにぎり寿司

 江戸の町が大きく変化する切っ掛けとなったのは1657年の明暦の大火だという。この大火事で江戸市街の60%が焼失、幕府が各藩に割り付けて復旧作業を命じた結果、江戸はこの作業のための独身男性が溢れる町になったという。1721年の人口調査では、江戸の町人50万人のうち、2/3が男性だったとのこと。

 力仕事に明け暮れた若い男が仕事帰りに立ち寄るとしたファーストフードということで、この時代には屋台が大繁盛したらしい。団子、蕎麦、天ぷらなどがある中で登場した新製品がにぎり寿司であるという。この時代のにぎり寿司はいまよりもかなり斜里が大きい食べ応えのあるもの。価格も安く、コンビニおにぎりのような感覚だったようである。また斜里が少し赤いが、これは米酢が高価だったので酒粕を原料にした安価なかす酢が使われたことによるという。この寿司が江戸町民の健康に大きな役割を果たしたとしている。というのは、町民が日常的に酢をとるようになったのはにぎり寿司が普及してからだからとのこと。

 

お酢の健康効果

 この時代の人々の死因で多いのは中風、つまりは脳卒中であると言う。この時代の食生活は塩分が多いために、高血圧が非常に多かったと推測される。酢には良くいわれることであるが血圧を下げる効果がある。つまりはにぎり寿司を食べるようになったことで長寿化に結びつくとのこと。実際にこの時代の江戸町民は結構長生きの人が多かったらしい。

 また酢は疲労回復にも効果がある。人間が疲労するとグリコーゲンが減った状態になるが、酢と糖質を同時にとることで体内のグリコーゲンが効率的に増加するらしい。つまりは肉体労働に従事する若い独身男性にとって、にぎり寿司というのは疲労回復効果もある最適の食材ということになる。なおうなぎのこともチラッと出るが、土用の丑というのは平賀源内が作ったコピーだと言われている。平賀源内は日本最初のコピーライターらしい。現代に生きていたら、ホワイトデーだのハロウィンだのを仕掛けていただろう。

 

夜更かしが1日3食につながった

 さてこの時代には庶民の生活習慣にも大きな変化が起こっており、それも庶民の健康に関係するという。その原因となったのは油を燃やして照明にする行灯。この頃の行灯の油と言えば菜種油だが、生産量が少なくて高価であったために、庶民はイワシなどを絞った魚油を使用していたという。しかしこれが臭い上に煙が出る大変なもの。だから実際にはあまり使用されなかった。しかし摂津で水車を使って菜種油を絞る技術が開発され、菜種油の生産量が飛躍的に向上。菜種油が江戸で広く流通するようになったのだという。そうなると今までの日没と共に就寝して日の出と共に起きる生活から、夜更かしをするようになった。そうして起きている時間が長くなったことで、それまでの1日2食から1日3食に生活習慣が変化したのだという。

 そしてこの1日3食が健康にも脳にも良いというのがこの番組の言うところ。まず1日3食にすることで1日2食よりも血糖値スパイクが減少するので、血管の損傷などを防げる。さらには脳のエネルギーであるグリコーゲンは最大4時間分ぐらいしか蓄積できないので、1日3食にすることで脳のエネルギー不足が防げ、これが脳機能を高めることにつながるとするのである。これが日本人の識字率の高さなどにつながったとしているが、識字率の高さは寺子屋などの学習機関が整っていたことが大きい。寺子屋で個人が将来つく職業に合わせて、それに必要な知識を個別指導していたらしい。

 

当時の人気おかず番付

 なおこの時代の庶民に人気だったおかずを並べた「おかず番付」なるものがあるらしいが、それによるとイワシと豆腐などの大豆製品が人気だったらしい。非常に健康的である。なお当時の憧れの魚はカツオ。初鰹は女房を質に出しても食えというのが江戸っ子だったとか。ちなみに人気がなかったのがマグロ。保存方法がなかったことから劣化が早いのが大きな原因と考えられる(トロなんて1日で真っ黒になりますからね)。

 

井戸掘り技術の発達で銭湯が人気に

 そして最後に江戸の庶民の健康にとって大きな影響を与えたのは銭湯の普及だとしている。最初に江戸に登場したのは蒸し風呂で、庶民は行水などで体を洗っていた。それは江戸では水が不足しており、真水が出る深い井戸を掘る(浅い井戸だと塩水が出る)ためには200両(現在の価値で1200万円)もの大金が必要だったためだという。しかし大阪から鉄製のおもりを使って深い井戸を掘る画期的技術が伝わり、井戸掘りの費用が従来の1/60にまで激減したのだという。その結果として潤沢に水が使用できるようになりお湯を張った銭湯が登場することになったとのこと。

 お湯に入浴すると末梢血管が広がって血流が良くなることで健康効果がある。一週間に7回以上お湯に浸かる人は2回以下の人に比べて要介護リスクが3割減少するという報告もあるとか。入浴することで血流が良くなり、関節の痛みがなども軽減されることによるという。これが日本人の長寿の秘密ではという説もあるとか。

 

 以上、江戸庶民の健康の秘訣について。まあ一番は、不健康なものを食べず、適度に体を動かしていたというのが大きいでしょう。現在のようにIT労働なんかもありませんし、目標管理とかのスカタンなシステムがありませんから、現代のような無駄なストレスはなかったでしょう。医学のレベルが今日よりも大分低いことを考えたら、確かに江戸の庶民は意外に長生きだったかもしれない。

 また銭湯の普及は衛生状態をよくするという面でも非常に大きかったと思います。この時代のパリなどが街路に汚物が溢れて伝染病がしょっちゅう流行する状態だったことを考えると、江戸はかなり衛生面で優れた都市であり、これも当然のように健康に影響していたはずです。

 ところで今回でこの番組は終了の模様。来週からこの時間は美と健康の云々の番組に変わるそうだが、あの番組は一度見たことがあるが、全く面白くなかったのでチェックする気はない。なんか私が見るような番組に限ってドンドンとなくなっていくな。私の好みが世間の主流からはズレてしまっているということだろうか。

 

忙しい方のための今回の要点

・江戸では明暦の大火の復興のため、多くの若い独身男性が流入することとなった。彼らのためにファーストフードである屋台が人気となり、その中からにぎり寿司が登場する。
・にぎり寿司の登場によって江戸の庶民はそれまであまり口にしなかった酢を食べるようになった。
・酢は血圧を下げる効果があるので高血圧が多かった江戸の庶民には健康につながった。また酢と糖質を同時に摂取すると効率的にグリコーゲンが生成するので疲労回復効果もある。
・また江戸時代に菜種油を水車で絞る技術が確立し、江戸で菜種油が流通することで行灯の使用が増えた。その結果、人々の起床時間が長くなってそれまでの1日2食から1日3食に生活習慣が変わった。
・1日3食の方が血糖値スパイクが減少するので血管等に良いし、脳のエネルギーであるグリコーゲンの補給の点でも都合が良い。
・江戸時代には深い井戸を安価に掘れるようになったことで、真水が豊富に確保できるようになり、それまでの蒸し風呂からお湯に浸かる銭湯が一気に増えることになった。
・お湯に浸かることで末梢血管の血流が良くなり、関節の痛みなども緩和されることから、要介護リスクが減少するとの研究報告もある。


忙しくない方のためのどうでもよい点

・最近になって「江戸に見習え」的な考えが出てきてるんですよね。今までは遅れた未開の社会のように言われてましたが、今日的な目で見るとリサイクル率も高く、環境に調和していて、それでいて健康的な生活が送れるとという進んだ都市だったという話も出てるんです。すべてが江戸時代が良いとはとても思えませんが、見習うべき部分は多々あるだろうと思います。特に今日のように持続可能性というのが世の中の重要課題となっている時代においては。

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