教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

4/1 NHK ガッテン「朗報!耳鳴りが劇的改善 自宅でできる新発想治療」

 今回は30万人もの患者がいて、結構苦しんでいる人が多いという「耳鳴り」。これの画期的治療法を紹介とのこと。

 ところで今回、番組が始まった途端に「1月22日に収録したものです」なんてわざわざ出るので、もしかして今日の出演者誰か死んだ? と思ってしまいましたが、皆さんご健在のはず。どうやら推測するに、会場内にマスクをしていない見学者が密集して座っていたからだろうと思われる。今こういうことをすれば「ガッテンが新たなクラスターの原因を作ってる」とネットで叩かれる可能性大なので、先手を打ったのでしょう。

 

耳鳴りに関係する「注意力」

 で、耳鳴りなのだが鍵を握るのは注意力。まず最初に人間の注意力を見るのに、町中で道を尋ねて、話をしている最中に二人の間を看板が横切ると話し相手が代わっているという2005年に行った実験を紹介している。実験の結果は18人中10人が気付かなかったというもの(私はこの時の放送を見た記憶があるが、気付いた人は人が代わった途端にいきなり爆笑していたりした)。人間の注意力って結構いい加減という話でもあるのだが、これが今回の内容に微妙につながる。

 まずは耳鳴りで苦しむ方を紹介しているが、彼は常に顔をしかめたくなるような甲高い耳鳴りに苦しめられているという。特にひどいのが夜。なかなか眠れなくて慢性的に眠りが浅い状態になっているという。またある人は耳鳴りの原因を調べるのに10軒もの病院を梯子して、ついには脳の検査まで受けたが異常がなかったという。とにかく何も手が付かなくなるぐらいツラいという。

 耳鳴りのメカニズムであるが、注意力が重要な鍵であることが近年の研究で判明した。2019年に出た耳鳴りのガイドラインによると「耳鳴りに注意が向くから耳鳴り」ということらしい。つまりは耳鳴りが起こった時にそちらに意識が集中することで耳鳴りが余計にひどく苦痛になっているのだという。

 

人間の注意力の特徴

 耳と注意力の関係を示す実験をしているが、それは二人の被験者を打ち合わせと称してカフェに連れてくる。そして打ち合わせをしている後で女性のグループが大声で話を始めるのだとか。最初は全く気になっていないような二人だったが、ある時点から急にそわそわと落ち着きがなくなり始める。これは実は二人のうちの一人はいわゆるアニオタで、その時に急に後でアニメに関する話が始まったのだという。結局そこでアニメ関連のキーワードがいくつか出てきたのが頭に引っかかって、それで急に注意がそっちに行ってしまったと言うこと。ちなみにアニメに対して興味のないもう一人は「ああ、何か話してるな」ぐらいのものだったらしい。

 確かにこれは誰でも経験のあるところ。例えば突然に自分の名前なんかが飛び出したら、誰でも絶対にそっちに気が行ってしまいます。ゲストの高橋英樹が「お城の話なんかが出てきたら、思わず参加しそうになる」と言っておりましたが、それは私も全く同じ。同好の士です。つまりは「気になったら、気になる」というのが人間の特性だという。

 

注意力が向いてしまうことで耳鳴りが悪化

 で、耳鳴りに戻るが、まず耳鳴りを感じるとそこに注意が向き、それに苦痛を感じるとさらに注意がそっちに向いて、結局は耳鳴りはどんどんと大きくなってしまうということであるらしい。聴覚の専門家によると、我々の聴覚は一回聞き取ったパターンの音は、もう一回聞き取ろうとする働きがあるという。これは危険を警戒するための能力だという。しかしこれが耳鳴りでは仇になる。脳の中の注意力に関わる楔前部という部分の働きが耳鳴りの重い人では安静時でも過剰に働いているという。

 ではどうすれば注意が向かないようになるかだが、「気にしないように」と言っても逆に気になってしまうのが人間。実際に先ほどの方も「気にするな」と言われるのが一番ツラかったと言っている。

 

耳鳴りから気を逸らすホワイトノイズ

 そこで登場するのがある音声。それを実際に寝る時に部屋に流してもらったところ、今まで耳鳴りのせいで寝られなかったという人が翌朝まで安眠。その音とは何かだが、ここで聴いてもらったのは滝の音。しかし実際は滝の音と言うよりもホワイトノイズが良いというわけ。ホワイトノイズはあらゆる周波数の音が含まれた音声なので、これで耳鳴りの音がカバーされて気にならなくなるのだという。ちなみに私が以前に聞いた治療法は、耳鳴りと同じ高さの音声をあえて聞かせ続けて慣れさせるというものであったが、これって音感のない人なら大変だなと思っていた。しかしホワイトノイズなら周波数は関係ないので随分楽である。

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 これに加えて、何かに集中するやリラックスするなどで耳鳴りが気にならなくなる瞬間を作ることなども効果的であると言う。このような方法を組み合わせる方法で耳鳴りは確実に軽快していく(耳鳴り自体がなくなるわけではないが、気にならなくなるので生活に困らなくなる)とのこと。

 

 以上、耳鳴り対処法です。実は私も聴力の低下と共に常に耳鳴りがしている状況です。常にある一定の甲高い音が聞こえています。気にしだしたら泥沼なので気にしないようにしているのですが、今回こんな番組を見てしまったことで逆に気になりだした(笑)。

 なおホワイトノイズ発生器は普通に安眠装置として販売されており、耳鳴りがなくても雑音の多い環境などで睡眠するための装置として使われています。実は私も持っており、喧しいホテルなんかでは使用しております。これはホワイトノイズで騒音をカバーするという仕掛けです。初めての時は「こんなうるさくて寝られるのかな」と心配になりますが、実際には一定時間が過ぎると音が脳のフィルターでカットされて聞こえなくなってきます。私などは翌朝になると音が出ていたのに気付かなかったこともあるぐらい。

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 忙しい方のための今回の要点

・耳鳴りはそれに注意が向いてしまうことで余計に悪化することが明らかとなっている。
・重度の耳鳴りで苦しんでいる患者は、脳の注意力に関わる部分が過剰に働いていることが分かってきた。
・耳鳴りが気にならなくなる方法としてホワイトノイズを使う方法がある。ホワイトノイズが耳鳴りをカバーすることで、耳鳴りが段々と気にならなくなるようになるという。

 

忙しくない方のためのどうでもよい点

・特に耳鳴りがない人でも、実は何らかの音は聞こえていると言います(例えば自分の血流の音とか)。とにかくそういうのが気になりだしたら泥沼です。で、困った時にはホワイトノイズ。まあストレスをなるべく持たないことも重要なんですが、それって「気にするな」以上に難題ですから。

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