教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

4/5 TBS系 世界遺産「インド洋の秘境!巨大なリング状の島」

立ち入り禁止の秘境の島

 インド洋に浮かぶ珊瑚礁の島・アルダブラ環礁(セーシェル共和国)は研究者以外は立ち入りが禁止されている秘境でもある。今回は許可を得て取材班が訪れての紹介。現地へは航空機をチャーターして、近くの島の空港に降りてから船で行くしかない。飛行機2時間、船で2時間とかなり大変なようだ。

f:id:ksagi:20200407152547j:plain

上空から見たアルダブラ環礁

 アルダブラ環礁はいわゆる珊瑚礁の島である。元々は火山島の回りに珊瑚礁が生成したものであったが、それが中央の島が沈降していくのに対し、珊瑚は徐々に上へ上へと成長し、結果としては環状の珊瑚礁が残るということに。環礁の内部や浅瀬であり、周囲は珊瑚礁の海である。

 

浅瀬の海と独特の豊かな生態系

 周囲の島には15万頭ものアルダブラゾウガメという固有種が棲息しているが、水路を通って外海と水のやりとりをしている内部の浅瀬には下がえぐれた奇妙な形のマッシュルームロックと呼ばれる岩が存在している。これは水による浸食で生成したとのこと。内部では6時間ごとに潮の満ち干が起こり、その度に大量の海水が出入りする。

 島の周囲は遠浅のリング状の珊瑚礁に覆われており、環礁の縁では急激に水深が深くなる。周囲の珊瑚礁は様々な珊瑚が棲息(珊瑚礁を作る造礁珊瑚以外の珊瑚も多い)し、様々な魚が棲息している。小魚からそれを食べる大きな魚、さらには絶滅危惧種のアオウミガメも訪れる。

 環礁の内と外をつなぐ水路では、ダイバーが流されるぐらいの水流が発生する。そして内側の浅い海にはマングローブ林があり、鮫などが入り込めずに餌となる藻が多くあるマングローブ林は小さな魚たちの格好の住処であるという。さらにこのマングローブ林には餌を求めて多くの鳥なども飛来する。そんな鳥たちの落とした糞や食べ残しの魚の死骸などは貴重な有機栄養分として干満の度に外海へと流れ出す。これが環礁周囲の豊かな生態系を養ってもいる。

 

 自然界というのは絶妙なバランスで成立しているのだなというのを感じさせる場所。そしてそういう場所は美しいです。ただあまりに脆弱な環境ですので、人間が介入したら一瞬で崩壊してしまうでしょう。だからこそ立ち入り禁止なんでしょう。今の世界中にこんな場所がどれだけ残っているかが気になります。自然豊かな土地が、無粋なリゾート開発とかで荒らされるなんとことはしょっちゅうなので。素晴らしい山岳の風景の中に建つ巨大で無粋なコンリートのリゾートホテルなんて目にしたら、正直なところ殺意が湧くことさえありますね。

 

忙しい方のための今回の要点

・インド洋に浮かぶ珊瑚礁の島・アルダブラ環礁は研究者以外の立ち入りが禁止されている秘境である。
・この環礁は火山島が沈降することで生成した。内部の浅瀬は干満の度に外海と海水のやりとりを行う。
・内部の浅瀬にはマングローブ林があり、ここには小魚が棲息すると共に海鳥も飛来する。彼らが落とした糞などの有機物は海水の流れに乗って外海に供給され、周囲の豊かな海を養っている。

 

忙しくない方のためのどうでもよい点

・こういう珊瑚礁の島って標高ほぼ0ですから、地球温暖化による海面上昇があったらあっという間に沈んじゃうんです。そのために危機に瀕している太平洋の島国も多数。
・こんな環境が将来まで残れば良いですけどね。それは人間がいかに理性的で賢いか次第。

次回の世界遺産

tv.ksagi.work

前回の世界遺産

tv.ksagi.work