教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

5/5 テレ東系 ガイアの夜明け「コロナショックを乗り切る!"ニッポンの宿"水面下の闘い」

 今回のコロナ騒ぎでは飲食店など多くが壊滅的打撃を受けているが、その中でも特にダメージが大きいのが宿泊業界。今回はそのような宿泊業界の対応(出来ているとも思えないのだが)を紹介している。

 

コロナショックで苦境に陥る京都の老舗旅館

 まず最初に登場するのは京都の京都の老舗旅館である松井本館。皇室にもゆかりがあるという老舗の名門である(上皇の少年時代と思われる宿泊写真が登場)。しかしこの旅館も深刻な状態となっていた。4月の時点で予約が壊滅状態になって危機に瀕していた。そこで京懐石の仕出しを始めたようであるが焼け石に水。結局は苦渋の決断で別館を閉めることに。自宅待機となる従業員の4月の給与は全額支給するが、5月以降は「できるだけ頑張りたい」と言葉を濁さざるを得ない状況に。しかしこの後ナレーションで終わらせているが、2週間後に本館も休業に追い込まれたとのこと。最初から「5月、6月もこの状況が続けばとんでもないことに」と若女将が語っていたことからも、既に瀕死である。

 

雪国観光圏を仕掛けた湯沢も苦闘中

 次に登場するのが以前にこの番組にも登場したという越後湯沢のHATAGO井仙。4代目社長の井口智裕氏は、リゾートブームの崩壊以降地盤沈下の続くこの地域の観光を建て直そうと様々な仕掛けを行った人物である。現在は地域の食品などの通販で巻き返しを図ろうとしていた。彼は湯沢町などの魚沼地区を中心とした「雪国観光圏」を盛り上げようと仕掛けをしていたのだが、そこにこのコロナショックが直撃した。9割もの客を失った旅館もあるという。

 南魚沼で去年の末に井口氏は古い旅館を買い取ってリニューアルオープンをさせていた。それがryugon。古民家などを移築して懐かしい風情を感じられる一角にしている。また中には地元民も利用できるカフェも建築中。客席の稼働率も7割を越え上々の滑り出しだったはずだった・・・しかしコロナショックが直撃、その中で一縷の望みだったのが県内の旅行会社がコロナ終息の望みをこめての社運をかけてプロジェクト、バスをチャーターしての90人のツアーであった。そこでryugonの支配人は万全のもてなしを期して、地元の観光案内コースを下見し、料理用の山菜狩りを企画するなど備えていた。また従業員達には客の少ない今だからこそ新しい企画を考えてもらい、コロナ終息後の巻き返しを図っていた。しかしツアーの予定日は4/21。この日を聞いただけで視聴者には最初から予想は付いてしまうのだが、案の定ツアーは結果的にキャンセルになってしまう。

 

新しい観光の形を模索する星野リゾート

 旭川の星野リゾートが経営するOMO7旭川では、北海道が全国に先駆けて緊急事態宣言を行った影響を受けて対応をドタバタとしていた。緊急事態宣言解除後、町のグルメなどを紹介するプロジェクトを実施して、地元と連携しての取り組みを行っていた・・・のだが、これも感染の第二波の発生による再度の緊急事態宣言でOMO7旭川も休業に追い込まれて計画は頓挫してしまう。

 星野リゾートでは今回の緊急事態を受けて新しい旅行の形を提案しようと必死である。星野リゾート代表の星野佳路氏によると、観光需要26兆円の内、インバウンドの4.5兆は消滅するが、日本から海外に行くのも無理な状況なので、その分が国内観光に2~3兆円ぐらいは転じる可能性もあり、インバウンドの消失自体はどうにかなるという。そこで提案するのは車や自転車で15~30分圏内の観光地を楽しむマイクロツーリズムだという。これがかえって地元の観光力のアップにつながるかもしれない・・・と極力前向きなことを言ってはいるのだが、影響は1年~1年半ぐらいのスパンで考える必要があるなどと、冒頭に登場した京都の旅館などにとっては死刑宣告に近いようなことをサラッと言っている。正直なところ「星野リゾートは持ちこたえられるかもしれないが、他の弱小旅館は壊滅だな」というのが本音。そうなったとしたらそれらの旅館は星野の狩り場となるから、星野的にはビジネスとしてOKという計算か?

 で、星野が提案するのは三密を避けた新しい宿泊の型式。チェックイン前から極力客と従業員の接触を避け、料理などはお重で出すという型式を模索しているようだ。まあ分かるのだが、この式の宿泊はいわゆる日本が売りにしていた「おもてなし」とはほど遠い世界であることは否定できない。

 

湯沢の井口氏は海外個人客に活路を見出そうとしているが・・・

 最期にryugonの状況が映るが、やはり休館に追い込まれていたようである。その苦境の中で井口氏は海外に雪国観光圏を売り込む方法を模索していた。彼は大手のミキ・ツーリスト(ここも現在開店休業状態となっている)と提携し、海外からの個人旅行客の取り込みを図っていた。各国の客への言語対応は中小旅館では厳しいので、スマホのアプリなどを活用することを考えている。井口氏の考える地元の目玉コンテンツは十日町が3年ごとに開催するアートのイベント。世界のアーティスト達が地元に作品を展示するのだという(草間彌生の作品などもあった)。次回の開催は来年の夏とのことなのだが・・・それまで地元の旅館が持ちこたえることができるのかというのが一番の問題だが、その来年夏のアートイベントも正直怪しいというのが私の考え。なお番組自体もどことなく暗にそれは感じている風が覗える。

 何と言っても日本政府が今まで感染者数のデータを散々捏造してきたせいで国際的信用を失っており、もし日本政府がコロナの終息宣言をしたところで海外から信用されるとは思えない。つまりは海外から日本国内への観光客が復活するのはかなり先になると推測される(だからこそ来年のオリンピック開催なんて到底不可能であると断言できるのだが)。井口氏の取り組みは残念ながら手遅れになる可能性が高いと言わざるを得ない。

 

 とにかく目の前の利権しか考えない今の無能政府では各業界が壊滅するのは必至。安倍は未だに現実逃避して眼前のコロナ対策は放棄し、コロナが収まった後の「Go to キャンペーン」なる画餅にばかり予算をつけているが、その頃には肝心の行き先がなくなっている可能性が高い。それともつぶれた旅館はすべて星野の狩り場にして、星野からはたんまりとキックバックをもらって安倍個人はウハウハという計算か(本当にそれを考えていそうなところが怖いのだが)。正直なところ、今回の事態が収束してもその時には全国の老舗旅館がすべて星野や大江戸温泉や伊東園とかの傘下なんて悪夢が想像できて恐ろしいのだが。既に居酒屋などは大手チェーンしか残らないのではと言われているし。

 どうも番組制作中にも時々刻々と事態が悪化して、当初の想定と異なる泥沼の事態突入で構成自体にも苦しんでいるのが透けて見える。最初に考えていた「ストーリー」が成り立たなくなって、土壇場で番組の内容を変更したと思われるバタバタしたところが内容に滲んでいる。今回の制作スタッフは多分放送直前までかなり苦労しただろうことが推測される。なおBSの方ではガイアは2週遅れで放送されているが、今から2週間経ったら状況がさらに悪化していて、ここで放送された内容と現実が食い違ってくる可能性も考えられる。もしBSの方で今回の内容が放送されないなんてことがあったら、内容に致命的な問題が発生した可能性あり(もっともあり得ないであろう事態を挙げておけば、例えば星野リゾートが倒産するとか)。

 

忙しい方のための今回の要点

・コロナショックで各地の旅館が危機に瀕している。京都の老舗旅館もついには休業に追い込まれている。
・「雪国観光圏」を仕掛けていた魚沼地区でも甚大な影響が出て、宿泊客の9割を失って休業する旅館が相次いでいる。
・星野リゾートの旭川では地元と連携した企画を考えていたが、北海道の感染の第二波の発生で再度の休業により頓挫した。
・星野では三密を避けた近くでの観光を提案しており、それに対応するための準備を進めている。


忙しくない方のためのどうでもよい点

・星野が三密を避けた近場での旅行を掲げてましたが、どうせ星野のことですから滅茶苦茶高価なプランで私などには無縁です。高い金を出してのそんなプランなんて、実際に利用するのは安倍昭恵ぐらいでは。近場の観光旅行と言っても、通常の旅館の場合には商圏がとんでもなく狭くなることを意味しますから、とても成立しませんし、その近場の観光地自体も三密を避けて閉鎖されている状態ですので。恐らく星野のプランは想定しているのはまさに自宅待機に嫌気のさしている一部の金持ちの気分転換でしょうね。と言うわけでやはりどう転んでも安倍昭恵向けプランにしか見えません。

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