AIによる論文解析プロジェクトを実行中
現在、全世界でコロナに関する膨大な論文が発表されているが、専門家でもそれらを全て目を通すのは不可能。そういうわけでAIを活用してこのビッグデータから何らかの傾向などを導き出そうというプロジェクトが山中教授らを中心に行われている。今回はその中から分かってきたことなどを紹介。
コロナウイルスのパターンは大きく分けると2系統
まずウイルスの種類であるが、最初のウイルスから5000種類に変異しているという。その中で大まかにいえば初期にアジアで流行したタイプと、後でヨーロッパで発生したタイプがあるという。さらにアメリカの場合は西海岸にはアジア型が、東海岸ではヨーロッパ型が流行しているとのこと。日本では最初にアジア型が検出されたのだが、その後にヨーロッパ型が増え、現在はまたアジア型が登場しているとのこと。アジア型は一回消えて復活したというよりは、検査漏れがかなりあるので、潜在的に感染が広がっていたと考えるべきではとのこと。
で、世間ではこのアジア型が比較的症状が軽いタイプで、ヨーロッパ型が重症型ではないかと見られているが、DNAパターンからでは重症度は判定しようがないので、これはあくまで推論に過ぎない。ただヨーロッパやアメリカ東海岸の惨状を見れば考えられることではある(また人種的に白人の方が重症化しやすい可能性なども考えられるが、これについてはアメリカ在住のアジア人のデータなんかを集計しないと分からないだろう)。
ウイルスは天然由来と推測、ワクチンはまだ先
また今回のウイルスが人為的に作られたものでないかとの噂が、アメリカ大統領辺りを発信源に流布されているが、DNAから見る限りではウイルスの発祥は自然のものであると考えた方が妥当だという。人工的に作ったものとしてはランダム要素が多すぎて難しすぎるという。多分蝙蝠から何らかの中間宿主を経て人間に感染したのではないかとのこと(中国のことだから豚とかではないかと私は見てるんだが)。
なお変異となると気になるのがワクチンが使用できるかだが、変異の程度がインフルエンザと同程度なのでワクチンは登場するだろうとのこと。ただし一般に普及するのは次の次の冬ぐらい(安全性の確認などが必要)になるのではとのことである。今回はインフルエンザのデータベースを基にしてコロナのデータベースを作成したので、迅速にデータの収集が行われているとのこと。
重症化のメカニズム
なお恐ろしいのが重症化のメカニズムで、重症化すると腎臓に障害が出るとか脳梗塞などを発症したり、足の壊死の例まであるという。症状としては血管の炎症が起こるのが特徴で、それが原因で血栓が生じるのだという。そもそも生活習慣病は慢性炎症であるので、ここにコロナが加わることでそれが悪化するということになるので、基礎疾患のある患者の方が危険ということらしい。コロナに感染すると免疫細胞が過剰に活性化するサイトカインストームが起こることによって血栓が起こりやすくなるのだという。そこで治療として炎症性サイトカインを無効化する薬(IL-6)を投与したところ、症状が改善したとの報告もあるらしいがこれも確認が必要とのこと。なお現在注目されているアビガンであるが、効果があったという報告となかったという報告が錯綜しており、実際の効果はハッキリしないとのこと。
忙しい方のための今回の要点
・コロナについて発表された論文のビッグデータをAIを使用して調査するプロジェクトが山中教授らを中心に行われている。
・コロナのDNAパターンにはアジア型とヨーロッパ型があり、日本にはどちらも入ってきている。
・DNA解析の結果からは、コロナは自然発生したものと考えられる。
・ワクチンの開発は可能だろうが、普及するのは次の次の冬ぐらいか。
・コロナが重症化するメカニズムは、サイトカインストームなどによって血管で炎症を起こすことで、これは生活習慣病と類似しているので、既往歴のある患者は状態が悪化することになる。
忙しくない方のためのどうでもよい点
・今のデータは査読されていない論文も含むらしいので、気をつけないと真偽不明なデマ情報に近い論文なんかも引っかかってくるでしょう。まあ論文の信頼度なんかも引用件数とかから判断するのだろうとは思いますが。
・それにしても専門でもないことで山中教授も大忙し。早く本来の専門の研究に戻ってもらいたいところだが。
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