教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

6/7 TBS系 世界遺産「屋久島…1万ミリの雨が生んだ絶景」

黒潮の海にそそり立つ岩山の島

 日本最初の世界遺産の1つである屋久島は、黒潮の海に突然そそり立つ岩山の島である。島自体が1つの岩盤で出来ており、標高2000メートル近くの山がそそり立つ。谷を見るとこの島が剥き出しの一枚岩であることが分かる。その谷を落差60メートルの千尋(「せんぴろ」と読む、「ちひろ」ではない)の滝が流れる。実は九州最高峰の山はこの島にある。これらの山頂には丸い巨岩が存在している。その中にはトーフ岩と呼ばれるまるで包丁で切られたような奇岩も存在する。そのような岩が出来たのはこの島の生い立ちと関係がある。

 この島はプレートの境界近くに存在する。プレートの沈み込みで発生したマグマが上昇しながら冷えて花崗岩となって地上に露出。この時に地下の圧力から解放されたことによってひび割れが生じた。このひび割れから雨が染み込んで風化、こうして現在の丸い岩が生成したのだという。これらの岩が生成したのは1400万年前というから、実に長い時間を要している。

 

大量の雨が育んだ屋久杉

 屋久島は降水量の多い島である。黒潮の島に高山がそびえるので、山に沿って上昇した湿気を帯びた空気が雲を生成し、山間部では年間降水量が1万ミリにも及ぶという。そうしてこの雨が森を育む。屋久島といえば屋久杉。樹齢1000年以上の杉を屋久杉と呼ぶのだという。通常は杉の寿命は500年程度なのだが、屋久島は岩盤上に土壌がほとんど存在しないため、杉の成長が非常に遅く年輪が密になり、樹脂も多いために腐りにくくて長生きするのだとか。これらの杉を育んだのはコケだという。コケが水分を蓄えることによって土壌がないのに杉が成長できたのだという。

 春になると小杉谷では山桜が満開となって美しい姿を見せる。しかしこれらの山桜も後100年もしたらなくなるという。というのはこの姿は屋久島本来の姿ではなくて、ほんの50年ほどの姿だとか。こういう姿になったのはかつて屋久杉が建材として伐採され、丸裸になった小杉谷にまず成長が早い山桜が生えたからからだという。しかしこの後、成長の遅い木々が伸びてくると、やがて山桜は光を遮られて枯れる運命にあるという。

 

標高で一変する気候

 標高1700メートル付近の森林限界に近づくと、白骨樹と呼ばれる枯れ木のような白い木が目立つ。これらの木は厳しい環境によって葉や樹皮がはぎ取られた結果であるが、必ずしも死んでいるわけではなく、再び青い葉が生えてくるものもあるという。植物もなかなかにしぶといのである。

 また標高の高い地域は冬になると風景が一変する。標高の高い山頂は雪に覆われる。屋久島は日本中全ての気候を含んでいるといわれ、山頂付近は北海道に匹敵する気候、その下には温帯性気候で、島周辺は亜熱帯気候であるという。そして奇岩トーフ岩は、岩の割れ目に染み込んだ水が冬に凍って膨張したことで出来たという。

 屋久島はこのような標高ごとに異なる植生が際立っているという理由で世界遺産に選出された。

 

忙しい方のための今回の要点

・屋久島は黒潮の海にそそり立つ岩山の島である。
・屋久島はプレートの境界で生成したマグマが上昇、そこで花崗岩となって浮上することで生まれた。
・浮上後の花崗岩はひび割れから雨による浸食を受けたので、山頂には丸い岩が多量に存在する。
・また屋久島は山間では年間降水量が1万ミリもあり、これが縄文杉を育んでいる。表土のほとんどない屋久島では杉の成長は非常に遅く。それ故に数千年の樹齢の杉が存在する。
・また屋久島は標高によって気候が変化し、山頂は北海道の気候で、冬になると雪が降る。一方海沿いは亜熱帯気候と非常幅が大きく、そのために植生の変化が激しいことが世界遺産選定の理由となった。

 

忙しくない方のためのどうでもよい点

・屋久島も観光と保護のバランスに苦労している島だといいます。縄文杉なんかも観光客が増えすぎたせいで木が弱って(観光客が根を踏みつけるせい)、観光客の立ち入りを制限する必要に迫られたとか。尾瀬なんかでも観光客による環境破壊が問題になっているし、自然系の観光地って常にこういうジレンマを抱えてます。

次回の世界遺産

tv.ksagi.work

前回の世界遺産

tv.ksagi.work