教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

6/14 NHKスペシャル「列島誕生 ジオ・ジャパン2 列島大隆起」

 日本列島の成り立ちを紹介するというシリーズ。今回は300万年前の大陸から引きちぎられた火山島が日本列島へと形成されていく過程を描くという。今回は北アルプスと関東平野の生成メカニズムを紹介するという。

 

北アルプスに1万メートルの幻の火山が?

 北アルプスは3000メートル級の山々が連なる日本の屋根であるのだが、最新の地質学的研究でここにかつて標高1万メートル超の火山が存在したかもしれないというのである。

 信州大学の原山智特任教授が穂高を調査したところ、地下のマグマ溜まりが固まって生成したと見られる地層が露出しているという。これの地層は穂高から槍ヶ岳一帯の13キロもの長さの範囲に広がり、さらにそれに隣接して火山灰が降り積もったと見られる跡も見つかっている。しかし驚くのはその量であり、1500メートルもの厚みで積もっている地域があるという。同じような地形は北方の爺ヶ岳の周辺でも見つかっており、こちらも南北18キロ、東西10キロという広大な地域に及んでいるという。

 火山の火口としては大きすぎるし、そもそも例えば富士山の噴火などと言った単独の火山の噴火で発生する火山灰の量とは桁違いの量であるという。このことからカルデラ噴火が発生したと推測している。マグマ溜まりの上の地盤が大規模に崩落して起こる超巨大噴火であり、噴き出す火山灰の量は桜島や富士山の噴火の数千倍に及ぶという。

 では高さ1万メートルの火山とは。それの秘密は現在の槍ヶ岳にあるという。槍ヶ岳の地層を見れば水平面より20度傾いていることが観察できる。同様に爺ヶ岳の方は地層が90度も傾いているという。このことから原山氏が推測するのはカルデラ火山そのものが直立したという大胆な仮説である。

 

地下のプレートが劇的な地上の変化を引き起こす

 このような大事件が発生したのにはプレートの動きが関係しているという。日本の下では大陸プレートと太平洋プレート、フィリピン海プレートが衝突している。元々フィリピン海プレートは北上して大陸プレートの下に潜り込んでいた。しかし300万年前、東から太平洋プレートに押されたフィリピン海プレートが北に進めなくなったのだという。その結果、フィリピン海プレートが太平洋プレートに押し付けられてしわになったのだという。その結果、北アルプスの下では巨大な地盤の沈み込みが起こっており、ここで地下の水が回りの岩石を溶かして大量マグマが発生したのだという。そしてこのマグマがカルデラ噴火を発生させた。

 さらにこれが直立したメカニズムだが、まず黒部峡谷はその時に出来た亀裂であるという。そしてこの直立にもプレートの運動が絡んでいる。太平洋プレートに押されたフィリピン海プレートはついに進行方向を西向き45度に方向を変える。そして地下のマグマ溜まりが圧縮される。そしてついに裂け目である黒部峡谷が発生、その後さらに押されることでその裂け目からカルデラがクルッと60万年かけて直立したのだという。

 その時の大きさを推定したら高さ1万メートル以上とのことなんだが、実はこれは先ほどのように60万年かけて徐々にこうなったので、その間に激しい風雨による浸食を受けるので、現実には1万メートルの火山が見られたというわけではないとオチが付いている。CGでその1万メートルの火山を再現しているが、正直なところ規模が大きすぎて度肝を抜かれる。トラウマレベルの衝撃だが、結局はそういうオチかいというツッコミを入れたくなるところ。

 

関東平野を生成した「お椀」の謎

 後半は関東平野生成について。300万年前の時点では関東は海だった。ここにどうやって巨大な平野が生まれたのか。これは関東平野の地形に秘密があるという。関東平野の地質を探っていくと、地下にお椀状に古い硬い地質が存在するという。そしてその縁は千葉のあたりにあるとのこと。このお椀の中に上流から流れてきた土砂が降り積もったのが関東平野であるという。

 ではそのお椀の縁はどうやって生成したか。これも先ほどのプレートが絡んでいるという。フィリピン海プレートは関東の地下で大陸プレートの下に沈み込んでいた。こういう場所は歪みが溜まりやすいので、定期的に地震が発生することになる。その時にその反動で陸のプレートの端のあたりが盛り上がって隆起するのだという。さらにプレートが45度方向転換したことで、南側だけでなく東側にも歪みが溜まるようになり、結果として南と東のL字型に地面が隆起、ここがお椀の縁となって流れてくる土砂をせき止めるようになったのだという。そして海中で出来た平地が氷河期の海面低下で地上に現れることになる。そしてその後も隆起が続き、今日の関東平野となったのだという。

 

 以上、東日本生成のメカニズム。来週は西日本らしい。ただ正直なところ、「NHKスペシャルにしては内用薄っ」ていう感想が強い。確かにCGとかには気合い入れているが、途中でゲストの指原と劇団ひとりが寿司食ったりなんかの不要部分が非常に多く、さらにはゲストのレベルに合わせての回りくどい説明ややりとりなんかで無駄に時間をつぶしている印象。要点まとめて内容整理したら、50分のNHKスペシャル枠でなく、30分のサイエンスZERO枠で十分収まる程度の内容しかない。

 NHKスペシャルにジャニーズ出したり、AKB出したりというのは、視聴者層を広げようという狙いなんだろうが、そもそもそんなもので視聴者が広がると思いにくい上に、逆に番組のレベルや品位を落とすだけ。正直なところしょっちゅう入る指原の「へー」とか「うわっ」とかいうリアクションがマヌケを通り越して不快。端的に言えば「うざい」。ましてや劇団ひとりとなれば、一体何を狙って出演させているのか自体が不明。そもそもゲストがそばや寿司食ってるとこ映して、それが内容とどういう関係があるんだ? そういうのをやりたいんだったら「家族に乾杯」ででもやってろというところである。

 正直なところ、海外輸出を目指してのゲストとのやりとりを省いた完全版が製作されれば、そちらの方を見たいというのが正直な感想。多分こういう無駄を省いたら、2本の内容が1本分の尺に収まるのでは? なんか最近のNHKは番組製作レベル自体が落ちてきているなというのを感じさせられる。昨日、「独眼竜政宗」の名場面を見ていて、最近のズッコケ大河とのレベルの差に唖然とした。あれと比較したら、最近では比較的まともだと感じていた麒麟でもおままごとだわ・・・。

 

忙しい方のための今回の要点

・300万年前、日本の地下で太平洋プレートに押されてフィリピン海プレートの進行方向が変化するという大事件が発生した。
・その影響によって北アルプスの地下では巨大なマグマ溜まりが発生、それが巨大なカルデラ噴火を起こしたと考えられる。
・さらに東からの圧縮によって亀裂(黒部峡谷)を境にカルデラが90度立ち上がり、1万メートルの火山が生成した。もっとも風雨による浸食を受けているので、その高さにはならないが。
・関東平野は千葉辺りの位置で地盤がL字に隆起することで、土砂をせき止めて平に土砂が積もり、それが氷河期の海面低下で地上に出て、その後に関東平野となった。


忙しくない方のためのどうでも良い点

・最近はNHKでも安直にタレント出して人気取りとか、独りよがりの斬新番組とか、民放の悪いところだけを習ったような気がします。まあテレビに限らず、創作の世界全般でレベルの低下が著しい。

次回のジオ・ジャパン

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