数億円の顕微鏡を魔改造してしまった改造の達人
前回は電子顕微鏡の匠を紹介していたが、今回は顕微鏡を魔改造してしまったという改造マニアの自治医科大学教授の西村智氏。一応は循環器系の医師でかつては患者の診察もしていたというのであるが、その研究室は明らかにどこかの工房。かなり異彩を放っている。
そもそも彼が改造を始めたのは顕微鏡を使いやすくするためだったのだという。生体を観察するために生き物のをそのまま乗っけられるようにしてしまえってなものだったらしい。数億の顕微鏡も、彼にかかれば「使いにくかったらいくら高い機器でも意味がない」とのこと。ごもっとも。
そもそもは子供の頃から機械をバラしたり組み立てたりがスキだったという西村氏。彼が改造した顕微鏡では血液の流れなどがありのままに観察できる。実際に血栓が生成してそれが血管を流れた先で詰まるという過程まで撮影に成功している。
魔改造の行き着いた先の電気自動車開発
そしてこの改造魔が最近始めたのが電気自動車の開発だそうな。そもそもは大病を患って左足が不自由になり、車いすに乗るようになったのがきっかけだという。汎用の車いすが使いにくいなと感じたところで、改造魔の血が騒いだようである。使える右足を使用して自由自在に動かせる車いすを開発してしまった。
その流れで障害者用の車いすに電池を積んでモーターを取り付け、自在に走れる電気自動車にしてしまったという。先日、限界性能を見極めるためとプロのレーサーにサーキットで乗車してもらってテスト。プロからの反響もまずまずだったとか。そして西村氏が製作した最新機がスタジオに登場したが、これはさらにコンパクトにしたもので、また車として必要な装備(ウインカーとか)を搭載してナンバーまで取得してしまったらしい。いずれこれで公道最速伝説でも作る気か?
以上、医師だったはずがあらぬ方向に突っ走ってしまって、最早何がやりたかったのかがよく分からなくなった感があるが、本人はいたって楽しそうな超オタクの紹介でした(笑)。そう言えば改造した電子顕微鏡の操作系がゲーセンのジョイスティックになってただけでなく、初音ミクが描かれていたのもしっかり映ってました・・・。まあこういうのを見ていると、大学の先生とかなりたかったなというのを思い出す。実は私は元々は大学の研究者希望だったんですが、その世界だと食っていけないという現実に直面して、無難に就職したんですよね。そして今は使えないサラリーマン。
忙しい方のための今回の要点
・自治医科大学の西村智教授は顕微鏡を改造して血流などの生態観察などを行っている。
・彼は自ら使いやすいように顕微鏡を魔改造してしまった。
・その挙げ句に現在は電気自動車の開発にまで手を出しているとか。
忙しくない方のためのどうでもよい点
・「面白くなくっちゃ研究じゃねぇ」ってところでしょうね。実際にそれに近しい言葉を何度か言っていたようですし。だけどこれは真実でもあります。つまりこのような「変人」をどれだけ許容して活かせるかというのも、その社会の成熟度の反映だったりするんですけどね。日本は正直なところ、彼のような存在は極めてレアです。だから面白い発想や画期的発明が出てこない。
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