モンテネグロのドゥルミトル国立公園はヨーロッパ最後の秘境とも言われている。ここには石灰岩の険しい山肌の間に深さ1300メートルのヨーロッパで最も深い谷がある。
『世界遺産』6/21(日) ドゥルミトル国立公園 ~ 絶景! ヨーロッパで最も深い谷【TBS】
石灰岩の山脈の中にあるヨーロッパで最も深い谷
アドリア海に面したモンテネグロは複雑な海岸線をした国であり、海岸線の背後に山脈が迫っている。ドゥルミトル国立公園はその奥にある。目も眩むような険しい地形の中で、タラ峡谷は深さ1300メートルもあり、グランドキャニオンにも迫る大峡谷である。谷底を流れるバルカン半島最後の清流と言われるタラ川をボートで最深部に向かうと、下流にいくほど流れは激しくなり、たどり着いた先は回りを巨大な断崖で覆われた谷になる。ここには石灰岩を通して流れ出した澄んだ水が溢れている。かつて石灰岩が隆起した時、石灰岩の中から溢れてくる水が地表の砂礫で山肌を削り、現在の深いV字谷が出来たのだという。
山岳地帯の中にはねじ曲がった地層が見られ、中には垂直に立ったものまである。のこぎりのような山並みはひび割れの多い石灰岩の中で削られやすい場所が浸食された結果だという。この変則的な地層はアフリカプレートがヨーロッパプレートの下に潜り込んで海底が隆起する時、行き場をなくした石灰岩や泥の層が上に押されて地層の歪みを生んだのだという。
氷河が生んだ湖に今も残る原生林
またこの地域は氷河期には氷で覆われ、氷河によって浸食された谷もある。そしてそこには氷河湖が点在している。湖面の色は湖の環境ごとに変わるが、大小300あまりの氷河湖が存在するという。最大のものは周囲3.5キロで最深部は50メートル。そのために湖面は黒っぽく見え、黒い湖と呼ばれている。
さらにこの山並みにはいくつもの洞窟が存在し、その中には氷河時代の名残が見られるという。洞窟の底は今でもぶ厚い氷の層に覆われている。
タラ峡谷の周囲には鬱蒼としたクロマツの原生林が存在する。ヨーロッパでももう珍しくなったこの森は、樹齢400年を越える50メートル近いクロマツが茂っている。他の木々よりも高く伸びるクロマツは太陽を独占し、また石灰岩にも根を張ることが出来るのでこのように他の植物を押しのけて原生林となったのだという。
忙しい方のための今回の要点
・モンテネグロのドゥルミトル国立公園はヨーロッパ最後の秘境と呼ばれている。
・石灰岩の山脈の中には、水によって浸食されて生まれたヨーロッパで最も深い1300メートルのタラ峡谷が存在する。
・またここの山脈は隆起の際にプレートによる圧縮で地層がねじ曲げられており、かなり変則的な地層が多く見られる。
・この地は氷河期には氷に覆われていたので、その時に出来た氷河湖が300もある。
・またこの地は今やヨーロッパでも珍しいクロマツの原生林が存在する。
忙しくない方のためのどうでもよい点
・まあ本当に凄まじい風景です。そして例によってこういうのはテキストでは説明のしようがない。
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