教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

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6/21 サイエンスZERO「大調査!尾瀬 知られざる地下世界」

 尾瀬では20年ぶりに地質や生物などの専門家による大規模な調査が行われた。NHKでは8Kカメラを携えてそれに同行・・・というわけで例によって8K宣伝番組でもある。実際に今回の内容はBS8Kでも後日放送されるらしいので、今回はそれの予告編のようなもの。

 

豊富な水に恵まれて1800もの池や沼がある

 尾瀬は2000メートル級の山々に囲まれる高地であるが、日本有数の豪雪地帯であるために豊富な水に恵まれている。それを反映して池溏と呼ぶ池や沼が1800も存在するという。そしてそのそれぞれが環境やら棲息する生物などに違いがあるのだという。

 今回の調査に参加した野原精一氏はこれらの池溏を全て調査して、分類番号を付けてマップに記録している。池溏が消えたり増えたらすぐに分かるようにしているのだとか。今回の調査では池溏に実際に潜水しての調査も行った。その1つKA1-04は冬でも常に一部が雪を被らないという特徴があった。潜水しての調査の結果、池溏の中央の底から温かい水が湧き出しているようであることが判明したという。

 また興味深い池溏としてNA9-05は竜宮と呼ばれていて、ここには川から水が流れ込んでいるのだが、流れ出している先がないのだという。それで竜宮につながっているのではという話があって「竜宮」なのらしい。

 

地下でつながる池溏ネットワーク

 潜水で池の底にトンネルらしきものがあることが判明したが、トンネルが狭すぎて潜水カメラマンが侵入することが出来ず調査は断念。100メートル先に今度は水が流れ出しているNA9-04という池溏があるのでそことつながっているのではと推測されているが未確認。そこで水中ドローンを動員してのリベンジとなった。

 NA9-04に水中ドローンを潜水させたところトンネルを発見、その中を進む。途中では多くの生物が確認される。途中で分岐があることが分かったが、そちらは最後に光が見えるところまでいったが、そこから先は通路が狭すぎたので断念、もう一方の分岐を障害物をものともせずに突き進んだところ、狙い通りにNA9-05に水中ドローンが浮上した。

 このように池溏の多くは地下でつながっているのではないかとのこと。また水にミネラル分の多い池溏は地下で川とつながっている可能性があるという。これが尾瀬の生態系を支えているのではないかという。

 

地面と共に持ち上がった生物

 また今回、水路の中でツチガエルが発見されたが、ツチガエルが標高1400メートルまで移動するのは難しいと考えられる。遺伝子調査の結果、この地に100万年前からツチガエルが棲息したことがわかったという。そのことから尾瀬が造山活動で隆起するのと一緒にツチガエル自身も持ち上がったのではないかと推測されるとのこと。地下水路では冬でも水温が高いので生き延びたのではないかという。


 以上、自然の宝庫である尾瀬の調査報告。明らかにBS8Kで放送する番組のさわりを紹介したという印象。興味のある人はそちらを見てくださいと言うことだろう。うちには見るための設備がないが。

 

忙しい方のための今回の要点

・20年ぶりに尾瀬で大規模学術調査が行われたのでそれを紹介。
・尾瀬には1800もの池溏と呼ばれる池や沼があるが、それらはそれぞれ環境や生息生物が違うという。
・今回の潜水調査の結果、それらの池溏の一部は地中のトンネルでつながっていることが明らかになった。
・またこれらは川とも地中でつながっており、これが尾瀬の豊かな生態系の源と考えられる。
・さらに水路中で見つかったツチガエルは、かつて造山運動で尾瀬が隆起した時に一緒に持ち上げられたものの末裔であると推測されている。

 

忙しくない方のためのどうでもよい点

・尾瀬って最近は観光客による自然破壊も問題になっていて、いろいろと規制が順次強化されているらしいです。やっぱりそうやっても現在の自然を守る必要があるでしょう。一度破壊されてしまったら終わりですから。

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