教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

"ほんの一手間でなすが抜群に美味くなるコツ" (7/1 NHK ガッテン「旬到来!絶品なす最新調理術」から)

加熱の仕方だけでなすが絶品料理に

 今回のテーマはこれから旬を迎え一番美味しくなる時期、「嫁には食わせるな」とも言われるなすについてである。このなすがちょっとしたコツで抜群に美味くなるそうだ。いかにもこの番組らしい展開。

 まずなすの種類だが、180種類以上あり、長なすやら丸なすやら小なすなど様々な種類がある。このように日本人にとって非常に馴染まれているなすであるが、その割には印象が薄く「味がない」とまで言われてしまうのがなす。しかも栄養価的に見ても特徴としてはモリブデンがやけに多いという特徴はあるが、モリブデンはそんなに多く必要な成分でもないのでこれを除くと取り立てた栄養面での特徴もないらしい。

 しかしこのなすの調理について東京都立食品技術センターの堀江秀樹氏が論文を執筆したそうな。それによるとなすは調理方法で抜群に美味くなるのだという。堀江氏が注目したのはなすの加熱のテクニック。この加熱の仕方にコツがあということが判明したらしい。堀江氏によると「なすはグアニル酸のタンクだ! だからかたまりとして扱え!」というもの。グアニル酸は干しシイタケなどに含まれる旨味成分であり、なすでは加熱することによってRNAに酵素が作用して分解することで生成するのだという。しかしこの酵素は90度を越えると失活してしまう。だから小さく切って加熱すると内部の温度がすぐに90度を越えてしまうので、それを防ぐために丸ごと加熱するのだという。

 

絶品焼きなす料理「ナスロンポー」

 ここで全国のなす料理を調査しているが、なすの産地の高知では丸ごと茹でてなすのたたきにしたり、丸ごと煮たなすスープなどがあるらしい。なすの種類が多いという新潟では、なすを丸ごとふかしたふかしなす(冷やして刺身間隔で食べるとのこと)と、さらに丸ごと揚げてから鰹出汁につける翡翠なすなる料理を紹介。大阪では水分の多い水なすを塊のまま油で焼いてから鰹出汁の餡をかけて食べる焼き浸し。熊本では丸ごとコンロで焼きなすを作っているが、焼けたなすに切れ込みを入れてバターと醤油をかけていただくのが特徴的。番組ではこの料理にナスロンポーなるネーミングをしたがこれの作り方を当然のように紹介する。

 今回料理法を紹介するのはなすづくしの宿の料理長の北崎裕氏。まずなすの焼き方だが、家庭ではフライパンを用いる方法が手軽であるとしている。そして中火の強で1面を3分焼き、次にひっくり返して反対の面を3分、後は側面を1分ずつ焼いたらできあがりとのこと。焼けると皮が浮いてくるので、剥きやすくもなるという。これを普通に剥いたらいわゆる一般的な焼きなす。これを皮に切り込みを入れてバターと醤油を入れると先ほどのナスロンポーである。なすは加熱することによって旨味タップリのジュースが出てくるので、これをこぼしてしまわないのが大事とのこと。

 

なす料理のさらなるアレンジ

 さらにアレンジとして、焼きなすをヘタごとお椀に入れてそこに味噌汁をかけることで、今までのものとは全く異なる味の深い味噌汁になるという。さらにはご飯の上に焼きや酢を載せて、そこにとろみを付けた餡をかけて焼きなす丼というのはあるとか。さらには焼きなすを刻んでオリーブオイルやお酢に漬けて旨味調味料的に使うなんて方法も。

 煮物も調理は丸ごと。なすがくたっとしてきたらできあがり。こうするとなすから旨味が逃げないという。揚げ物の場合は皮を剥いたら旨味が逃げないように水溶き片栗をまぶし、これを揚げることで絶品の揚げなすのできあがり。

 ちなみにトルコ料理にはなすのメニューが非常に多く、焼きなすの中に肉などを詰めるというメニューが多いという。トルコ料理ではなすのグアニル酸にトマトや乳製品のグルタミン酸、肉のイノシン酸を組み合わせることで味を相乗効果で美味さを増すのだとか。ホワイトソースに焼きなすを入れ、トマトソースで煮込んだ肉を添えた料理は「皇帝のお気に入り」という名の料理とのこと。

 

 なんか明日のスーパーの店頭からなすが消えそうな内容だった。決してなすが好きというわけではない私まで、今回の内容を見ていたら「焼きなすでも食ってみるかな」という気になりましたから(笑)。

 同じなすを紹介する番組と言っても、他の番組の場合は「なすの健康効果が云々」とか「なすをダイエットに活かすには云々」なんてやりがちだが、そういう不純な内容ではなく、潔く単になすを美味しく食べる方法に徹するのが昔からガッテン流で、まあこういうところが私がこの番組を評価するポイントでもあったりする。

 ちなみに漢方の観点から言えば、なすは体を冷やす効果があるとされており(水分が多いからではないかと思うが)、だから「嫁には食わせるな」だという話がある(妊娠・出産などに悪影響があるから)。しかしやっぱり世間的には「こんな美味いもの、嫁なんかに食わせてなるものか」という姑の嫁いびりの方がしっくりくるようだ。

 

忙しい方のための今回の要点

・なすはグアニル酸のタンクだから、かたまりのまま調理しろという論文を書いた人物がいる。
・その理由は、なすのグアニル酸は加熱時に酵素がRNAを分解することで生成するが、この酵素が90度で失活するので、内部をゆっくりと温度上昇させるためである。
・焼きなすの焼き方は、フライパンに入れて中火の強で3分、裏返して3分、側面1分ずつと4面を焼くとうまくできるとか。
・この出来上がった焼きなすの皮に切り込みを付けて、バターと醤油を入れるのが番組命名ナスロンポー。
・トルコ料理ではなすはよく使用され、なすのグアニル酸にトマトや乳製品のグルタミン酸、肉類のイノシン酸を組み合わせることで味に深みを付けている。

 

忙しくない方のためのどうでもよい点

・確かになすって言われてみるとあまり「旨味」のイメージはありませんでした。だけど味噌汁とかにした時、結構味があるなと言うことは何となく感じてはいました(我が家のなすの味噌汁は切ったなすを水に入れてから結構時間をかけて加熱するので)。こうして紹介されると何となく腑に落ちたというところ。

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