教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

"新幹線で鮮魚を輸送、新しいエキナカの名物" (8/18 テレ東系 ガイアの夜明け「独占密着!東京駅 巨大エキナカ誕生」から)

東京駅に巨大エキナカオープン

 最近は鉄道事業よりも非鉄道事業に力を入れているJR東日本だが、その一環としてこの8/3に東京駅に新しい巨大エキナカ・グランスタ東京が登場した。153店舗が軒を並べるという規模。今回のリニューアルで売り場面積はかつての倍以上に増加したという。番組ではこのエキナカオープンについての密着取材を実施していた。

 今回のリニューアルを手がけているのはJR東日本のグループ会社である「鉄道会館」。番組では今回の事業を担当した新井裕之氏に密着している。

 この新井氏が今回のリニューアルで、目玉として誘致した飲食店が回転寿司の羽田市場。羽田市場は羽田空港に拠点を置いて全国の鮮魚を飛行機で輸送して提供するということを行っていた。新井氏がこの羽田市場を誘致したのは、新幹線を使って鮮魚を生きたまま輸送してもらおうという考え。この新井氏の考えに羽田市場社長の野本良平氏が応えた。その日の朝捕れた魚を輸送するとなかった場合に起こりそうな問題のチェックや、どのような魚を輸送したらビジネス的にメリットがあるかの調査に、魚のプロである野本氏が自ら青森に移動する。

 

新幹線で魚を生きたまま輸送する

 漁船に乗り込んで野本氏は自らの目で調査を行うが、なかなか生きたまま運ぶことにメリットがある魚がない。そんな中で彼が目をつけたのがウマヅラハギ。今までは漁師が船の上ですぐに捌いて身だけを業者に販売しているというのである。しかしウマヅラハギは本来はその巨大な肝が非常に美味な魚これは全くもって勿体ない。野本氏はこのウマヅラハギを輸送することにする。さらに野本氏が目をつけたのが生きたウニなど。東京の人間はウニの歩く姿などは見たことがないだろうから、それだけでインパクトがありそう。

 オープンを前にして実際にテスト輸送が行われる。発泡スチロールの箱に水を入れ、温度を低温に保つために氷を入れての輸送テスト。しかし駅に運んだ時点で水漏れが発生していたりなどのトラブル発生(新幹線に積む荷物は水漏れは厳禁)、慌ててビニルを被せ治して防水対策などのドタバタ、ようやくギリギリのタイミングで新幹線に積み込む。ちなみに輸送スペースには、車内サービスの簡素化で使用されなくなった車内販売のスペースなどを活用するとのこと。

 輸送に野本氏が立ち会ったが、5時間の輸送時間中に氷が足らなかったのか水温が上がってきたりなど心配は続出。ようやく店にたどり着いた時には魚はまだ生きていたが、かなり弱っている状態だった。それでも試食の結果は「美味い」。輸送の問題点を改良して本番に臨む。

 開店本番では新鮮なカワハギは大人気であっという間に品切れに。こんな時に備えて野本氏が用意していた第二弾は高速バスで輸送した新鮮なネタ。こちらは事前に加工してパックで輸送。この方が調理の手間もかからないし輸送コストも抑えられる。こうして羽田市場東京駅店は上々の滑り出し。

 

高架下での新ビジネス

 JRが新たなビジネスを始めているのはエキナカだけではない。東小金井駅では中央線の高架下の活用が始まっていた。ここに建ったのは学生寮。共用のリビングに各人の個室がつながったなかなかお洒落な物件。さらには1ルームタイプの物件なども用意しているという。

 一方で駅を挟んでの反対側ではシェアオフィスやシェアキッチンに小型店舗のエリアが、キッチンでは販売スペースもあるので、本格的に出店するのはハードルがというような主婦が、ここでお試し店舗的なことをやっている。趣味と実益を兼ねるような店舗である。

 高架下開発に取り組んでいるのはJRだけではない。東武鉄道では今まで別のエリアとして連続性のなかった浅草とスカイツリーを結びつけるために、鉄道橋の下に遊歩道を作り、さらに高架下には店舗を誘致。これで人の流れが変わってきているという。ただしここもコロナの直撃を受けて、工事が遅れてオープンが予定よりも遅れている店舗も多いとか。

 

 以上、鉄道事業を辞めたがっている鉄道会社のお話・・・って言うと言いすぎですが、実際にJR東日本なんかは本音では高コストな鉄道事業は辞めたがっているというのは周知の事実です。収益率の高い首都圏の近郊路線だけ残して、地方路線なんかは全廃したがっているのは有名。これはJR東日本だけでなく全社です。また私鉄会社は元々不動産部門や商業部門で稼ぐというのは伝統的なビジネスモデルで、今でもその路線が続いているというわけ。現在はコロナの影響で鉄道輸送は壊滅的状態ですから、この方向にさらに拍車がかかっているでしょう。もっとも外出自体にストップがかかるような状況では、飲食店なども厳しいというのが実情でしょうが。

 私はエキナカとかにはあまり興味ありません。寺銭の高いエキナカでまともなCPの商品が提供できるわけがないから。私はそんなものよりも、古くからの商店街の古くからある老舗の店など方が興味ありです。実際に通うべき名店は大抵そんなところにしかありません。もっとも今回のコロナの影響で一番存続危機に陥っているのがそういう店なんですが。

 

忙しい方のための今回の要点

・東京駅のエキナカが8/3にリニューアルオープンし、売り場面積が2倍以上に拡張した。・JR東日本では非鉄道部門の収益比率を現行の3割から4割へ増加させることを考えており、今回のリニューアルはその一環である。
・リニューアルの目玉として誘致した回転寿司の羽田市場では、新幹線を使って朝に取れた魚を生きたまま輸送するということを行っている。
・一方で東小金井駅周辺では高架下のスペースを利用し、学生寮を建設したり、小店舗のスペースやシェアオフィス、シェアキッチンなどを提供している。
・東武鉄道は今まで分離していた浅草地区とスカイツリー地区を結びつけるため、鉄道橋の下に遊歩道を設置し、高架下に飲食店などを誘致して人の流れを変えている。

 

忙しくない方のためのどうでもよい点

・結局は一番手っ取り早いのは飲食店なんで、何かと言えば飲食店が中心になるんですが、参入障壁が一番低くて一方で一番撤退が多いのも飲食店なんですよね。だから飲食店が中心の商店街は流行廃りが激しい。また全体的に過当競争ですから、エキナカの客が増えたとしたらその分、どこかの客が減ると言うことになりやすい。人口が既に減少に転じている日本では、こういうのもどうしてもゼロサムゲームになってしまうんです。エキナカは現在は場所の良さで優位を保っていますが、コロナをきっかけに鉄道離れが始まってしまったら、その優位性が生きなくなってくる。というか、既にそろそろ東京離れ自体が始まりかけているような気がする。

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