教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

9/2 NHK 歴史秘話ヒストリア「危機は海からやってきた 蒙古襲来とペリー来航」

蒙古襲来とペリー来航、海から来た危機

 海洋国家である日本は、常に海からの脅威にされされている。日本史を振り返った時に日本の大きな転機ともなった海外からの脅威。元寇とペリー来航について紹介・・・ということであるが、要は以前の放送回のダイジェスト総集編ということである。

 まず元寇についてはいわゆる文永の役、弘安の役の蒙古襲来である。このブログにはヒストリア放送回の記事はないが、「にっぽん!歴史鑑定」「歴史科学捜査班」の記事があり、概ねそれらの内容と被る。

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 つまりはモンゴルから国書が届いたが、その内容が不遜であると時の執権北条時宗は無視を決め込む。そしてそれに激怒したフビライ・ハンが日本に大軍を送ってくる。これが文永の役である。

 ここで日本はモンゴル火薬を使った兵器と集団戦法に翻弄される。その結果、日本軍は大苦戦して博多の町は焼きはらわれる。もっともかつては日本軍はモンゴルの攻撃になすすべもなく惨敗したと言われていたが、最近の研究では日本軍の騎馬による騎射攻撃などは結構戦果を上げたということが言われている。モンゴルもノーダメージというわけではなかったのである。

 

二度目の元寇での鎌倉武士の激闘

 その実力のほどをデモンストレーションしたモンゴル軍は、一旦引き揚げる。しかし7年後再度のモンゴルは襲来する。これが弘安の役である。

 モンゴル軍はまず博多湾の志賀島を拠点として占領、日本軍はここに攻撃をかけて決戦が繰り広げられる。蒙古襲来絵詞によると日本軍は地形の偵察なども行って、攻撃のポイトンを定めたりしていた様子が覗えるという。

 そこにモンゴル軍10万の増援が来たとの報が入る。さすがにこの大軍を支えるのは不可能と考える日本軍だが、ここで思いもかけない暴風によってモンゴル軍は大被害を受ける。これが俗に言う神風である。

 その後、日本は小舟でモンゴル船に乗り入れ海上決戦を挑む。竹崎季長もここで大奮戦。しかし敵に囲まれて危機一髪というところで仲間の援護を受ける。日本軍は糞尿なども兵器として用い、これがモンゴル軍の戦意を喪失させたという。こうして日本軍はモンゴルを退ける。

 

幕末のペリー来航、幕府のギリギリの外交交渉

 次はその600年後のペリー来航。この時の記事は私のブログにも掲載している。

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 さらにペリー来航は「歴史科学捜査班」「にっぽん!歴史鑑定」「偉人たちの健康診断」など大抵の歴史番組では扱っているし、ヒストリア枠での特番「歴史探偵」では「もし日本軍がペリー艦隊と戦わば」なんて内容まで放送している。

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 要はかつてはペリーの黒船にビビった幕府は、なすすべもなく迫られるままに開国に応じたとされていたのだが、これは後の明治政府による幕府に対するネガティブキャンペーンの性質が強いという話。

 実際にはペリー艦隊は補給が不可能である状況から考えて、脅しをかけてきたところで抗戦の意志はないと読んで(この読みはまさに正しい)、虚々実々の駆け引きを演じたという内容。特にペリーからの交易の要求に関しては、この時にはペリーの論理の矛盾をついて切り返して断念させている。そういうしたたかな外交を実は幕府は行いましたという話である(今の貢ぐだけの外交よりも余程したたかである)。


 以上、元寇とペリー来航についての総集編。この番組もネタ的にしんどいので、最近はこの手の総集編が結構多い。コロナの影響で取材がままならないなんて事情もあるのだろう。

 

忙しい方のための今回の要点

・元寇とペリー来航についてのダイジェスト総集編。
・蒙古との初戦である文永の役では、鎌倉武士たちによる日本軍は蒙古の火薬を使った兵器と集団戦法で翻弄される。
・しかし日本軍の騎射は蒙古に対して打撃を与えた。
・蒙古軍は一旦引き揚げるが、7年後にさらに増員した兵を送ってきて志賀島を占領、日本軍は必死の奪還作戦を仕掛ける。
・そこにさらに10万の増援がやって来るが、ここで思いがけない暴風雨で蒙古軍は大打撃を受ける。
・さらに日本軍は蒙古船に対して舟戦を仕掛ける。日本の武士団の強力で蒙古を撃退することに成功する。
・幕末、ペリーが軍鑑で来航して日本に開国を迫る。
・幕府側は補給の出来ないペリーが戦闘をするつもりがないことを見抜いた上でしたたかな交渉を行い、燃料や食糧の補給は行うが貿易は行わないことで決着をつける。


忙しくない方のためのどうでもよい点

・日本の本土防衛の上での最大のメリットは周囲を海に囲まれているということだったんですが、兵器が発達して飛行機やミサイルがその海を軽々と越えるようになってくると、地政学上のメリットがなくなってきました。第二次大戦はその結果として本土丸焼けという惨状。もし第三次があれば全土が核で焼き尽くされることになるでしょう(そして地球全域が放射能で汚染される)。もう日本を含めて世界が戦争という愚行を許容できない時代になっている。

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