教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

9/5 サイエンスZERO「AIで一攫千金!全国高専ディープラーニングコンテスト」

全国高専対抗ディープラーニングコンテスト開催

 今回は高専生がAIを活用した新規技術による新ビジネスを提案し、それをベンチャー投資家が評価して「いくらぐらいのビジネスになり、いくら投資しても良いか」を競うという企画。ディープラーニングコンテスト、略してDCON。どうもこの番組がロボコンに並んでアピールしたい企画の模様。以前にプレ大会を実施していたが、今回は第一回の正式大会らしい。

 まず長岡高専は電動自転車の後ろにカメラをつけて、画像処理で接近してくる車などを警告するシステム。電動自転車にしたのはバッテリーの都合のせいのようだが、将来的には電池で駆動して一般自転車にも搭載できるシステムにしたいとのこと。

 東京工業高専は文書を写真で撮影すると点字に変換するというシステム。音声読み上げなどは現在も存在するが、やはり点字にして記録を残したいというニーズが視覚障害者にあるという。このシステムの鍵は、単に点字変換するだけでなくAIで要約するシステムにしているところ。テレビ番組をAIで要約できるようになったら、私のこのブログ記事の前半部もいらなくなるな(笑)。

 鳥羽商船高専は三密を避けた旅行を支援するシステム。観光コースを回るルートを提案すると共にその観光先の混雑状況をAIが判断するというシステム。小型カメラの画像解析での顔認証を行っているとのこと。さらに長岡高専はイルカの出す音の反射によって人の混み具合を判断するシステムを開発している。音を使うので視界から隠れていても検知するのがポイントとのこと。

 

 阿南高専は畑に侵入するナメクジを検出して赤外線で追い払うシステムを開発したが、これについては投資家達は「追い払えても駆除できない」と残念ながら投資は0。北九州高専は作業員についていく自動キャリーを開発したが、こちらも投資0。いや、このネタは既に実用化されてますから(先週のガイアの夜明けに登場している)。

 香川高専は農業用自動草刈りロボット。沖縄高専は海洋調査用のAI搭載海中ドローン。そして海外から参加のモンゴル3高専は山火事を早期発見して予想するシステムといういかにもモンゴルらしい提案。

 佐世保高専は地元密着で、陸揚げした魚をアジ・サバ・それ以外に自動で仕分けするというシステム。実はアジとサバで8割なのでこれを自動で識別できるだけでかなりメリットがあるのだという。これは結構高評価。

 一方、鳥羽商船高専はみかん農家での水やりを自動化するシステム。葉っぱの様子などから水分状態を見極め、適切な量の水やりをすることでみかんを高品質化するのだという。実際に平均糖度が上がったという実績も売り込んでいる。

 投資家達の審査の結果、5位は沖縄高専の海中調査ドローン、4位は長岡高専の交通事故予防システム、3位は佐世保高専の魚の自動仕分けシステム、2位は鳥羽商船の自動水やりシステム、1位は東京高専の点字システムだった。1位~3位は5億の企業価値があるとの評価。いずれも技術的にかなり実用性が高く、ニーズがハッキリしているのが特徴。やはり投資家であるから、その辺りを評価しているのが分かる。

 

 ちなみに私なら長岡高専の交通事故予防システムをもっと上位評価する。東京高専の点字システムは社会的に必要な技術であるが、対象が視覚障害者向けと言うことでビジネス的にかなり限定されるとの判断。

 ロボコンはかなり全国の高専のイメージアップにつながったという話もあるが、今回のDCONはすぐにビジネス企画に結びつきそうな企画であるのでより生々しい。この辺りは企業での即戦力を育成する高専には合っているかも。大学の研究室なんかの場合はもっと浮き世離れした基礎研究に力を割くべきだから、産業界の要請に直ちに応えるという分野は今後ももっと高専が出てきても良さそうだ。

 

忙しい方のための今回の要点

・AI技術を活用して、各高専が新しいビジネスを提案するDCONの第1回正式大会が開催された。
・1位は東京高専が提案した文書を要約して点字に翻訳するシステムで、ベンチャー投資家達は5億の企業価値があると評価。


忙しくない方のためのどうでもよい点

・まあNHKもあの手この手をいろいろ考えます。しかし若者の柔軟な発想こそが今後の日本の技術面での浮上の鍵ですから、この手の企画はありでしょう。それにしてもビジネスとして採算性まで考えているというのは、大学生でここまで考える者はあまりいない。やっぱり高専だな。

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