教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

9/9 NHK ガッテン「意外な寿命バロメーター!握力で死亡リスクがわかっちゃう!?」

大規模調査で分かった寿命と相関するある数値

 今回のテーマは生命力と関係するある数値とのことだが・・・スタジオでは中央席の柴田理恵だけがスタジオの別の場所からモニター出演。どうやらセットを変更せずにゲストがソーシャルディスタンスを保つためと思われる。他の番組だったら、間にプラ板を噛ます程度で何とかしているのに、さすがにNHKはこういうところが細かい。それとも柴田理恵に感染者との濃厚接触でもあったか?

 で、本題の方であるが、その生命力を現す数値というのは、福岡県の久山町で60年に渡って継続してきた健康診断の記録のデータ蓄積の結果から判明したのだという。これだけ大規模なデータ調査は世界的にも例がないので、非常に貴重なデータとのこと。

 番組ではそれが最も強いという新沼大樹氏に登場いただいて「さあ、この人が強いのは何でしょう?」とゲストにクイズ形式でやってますが、この新沼氏の背後にしっかり「GRIP STRENGTH」と書いたポスターが貼ってある。つまりは握力。新沼氏の握力は166キロあるそうで、胡桃を片手で握りつぶしてしまうは、片手でリンゴジュースが出来るし、カジノ用の頑丈なトランプ1セットをねじ切ってしまい、挙げ句の果ては缶詰を握りつぶすなどまるっきり人間万力(番組では「手の中に諸行無常」なるわけの分からん絶叫系ナレーションが入ってましたが)。

 

握力が寿命と相関する理由

 かなり横道にそれた感があるが、番組の主題は「握力の強い人は長生きする」ということが久山町での健康診断データから判明したのだという。握力がなぜ健康と関係あるかだが、これを何やら扇風機のような怪しいモニターを出して来て説明している。ちなみになぜこんなものを用いたかと言えば、模型だとどうしても三密を避けられないからだそうな(模型の後に人間が入り込んでいるから)。こりゃ光子館(ガッテンの模型を作ってるので有名な会社)もしばらく仕事ないな。

 で、それによると人間が手を握る時に使う筋肉は前腕の細い筋肉だという。それは良いんだが、結局はあんな変わったモニターを出してきた理由が不明。ホログラフという言い方をしていたが、テレビ画面を通せば特に立体的には見えないし、むしろ映像の細かい点の不鮮明さの方が気になる。これは明らかに企画倒れだな。それともNHK放送技術センターの開発品か何かか?

 また話が本筋からズレたが、なぜ握力が健康と関係するのかについて、腕相撲のチャンピオンが病気にかからないということを紹介というかなり遠回しな説明から始めるが、要は身体の見えない奥の筋肉である心筋や胃腸の筋肉、血管の筋肉などと握力が連動するのだという。これらの筋肉が強いと代謝も上がるので生活習慣病の予防効果を持つ。これらの筋肉の力が落ちている場合には握力も低下するということらしい。

 久山町のデータを調査したところ、握力の弱いグループは病気にかかりやすく、寿命も短くなるということが分かったという。目安は65才未満では男性39.5キロ未満、女性23.5キロ未満、65歳以上では男性29.5キロ未満、女性16.0キロ未満が危険域とのこと。ちなみに私は昔は40キロ以上あったのだが、腱鞘炎を患って(両手の小指以外の指をほぼすべて次々とステロイド注射する羽目になった)から握力が激減し、今では10キロあるかないか程度。こりゃ「お前はもう死んでいる」状態である。

 

握力アップの意外な方法

 ではこれを鍛えるにはどうしたら良いかだが、ここでガッテンボーイ2名が過酷な実験をしている。その内容は、両手をほとんど使わない生活を三週間し、その間にスクワットなどで下半身を徹底的に鍛えるという実験。極めつけは20キロのタンクを背負って3333段高さ620メートルという日本一の石段を登るという重労働。

 で、三週間後であるが2人の検査をすると、太ももの筋肉量が増えているのは当たり前として、なぜか使っていなかったはずの握力までが大幅に増えている。これは筋肉を刺激することで脳に信号が伝わり、肝臓でIGF-1なる物質が合成され、これが筋肉の合成を促すのだという。その効果は全身に及ぶために鍛えていないはずの握力まで増加するのだとのこと。と言うことは腱鞘炎のせいで握力のトレーニングを出来ない私(それをやるとすぐに腱鞘炎がぶり返してしまう)でも握力を高めることは出来ると言うことか。なおこのIGF-1は糖尿病や心筋梗塞などを防止する効果があるというので、これは私も明日からスクワットをした方が良さそうだ。筋肉は裏切らないってか。

 

 以上、握力が寿命につながるというお話。最近のころなお籠もりでさらに全身の筋力が低下している私(筋力低下のせいで数年ぶりにひどい腰痛まで発症してしまった)としては、これは明日からでもスクワットを・・・と思ったが、腰が今の状態ではスクワットはまだ無理だ。腰の様子を見ながらウォーキング辺りが妥当な辺か。

 それにしてもこの番組、こうやって要旨をまとめていたらいつも思うんだが、最近は特に説明が遠回しで、時々筋が通ってなかったり話が分かりにくくなっていることが多い。時には実験が全く意味をなしてなかったり。最近はどこの番組も「作り手のレベルが・・・」と感じさせることが多いのだが、この番組とて例外でない。もっともそもそもネタ自体が少ないので、簡潔にスパッと説明していったら番組の尺が半分ぐらいになってしまうので、無駄な話を加えてグダグダと引き伸ばしているという印象も強い。

 説明が遠回しだから、今回でも主旨は「身体の内部の筋力が低下してきたら、それが握力の低下に反映する」ということなんだが、説明の仕方がおかしいために「握力を鍛えたら身体内部の筋力が増す」というような反対の方向に聞こえてしまう。

 番組ではゲストが「握力を鍛えるのには腕のトレーニングでなくても良いと言うことか」という類いの質問をしていたが、どうもこれを聞いていても番組の主旨がズレかかっているのを感じる。今回の主旨から行くと、むしろハンドグリップなどで握力だけを鍛えても余り意味はない(まあその刺激が全身に及ぶ効果はある程度ありますが)。それよりも足の筋肉などの大きい筋肉を鍛えた方が健康につながるという点では意味があるはずで、それにつれて握力も増加するというのが本筋のはず。なんかその辺りのスッキリしない(誤解を生みやすそうな)説明が引っかかるところである。

 

忙しい方のための今回の要点

・久山町の60年に渡る健康診断データの蓄積から、握力が寿命と相関することが分かってきた。
・心臓や胃腸や血管の筋肉などの内部の筋肉は生活習慣病予防のために重要であるが、これらの筋肉が弱ってくると握力が低下するという関係がある。
・体の筋肉を刺激すると、その刺激が脳に伝わって肝臓でIGF-1という物質が合成される。このIGF-1は筋肉の合成を促す作用があり、その効果は全身に及ぶために、例えばスクワットなどで下半身を鍛えるとトレーニングしていない握力も増加することになり、さらには内臓の筋肉も強化され、糖尿病や心筋梗塞の予防となる。


忙しくない方のためのどうでもよい点

・で、その運動の前に小豆を摂ればタンパク質の吸収効率も増してさらに効果絶大ってやつですか? ちなみに私は実際にガッテンあんこを作ってみたんですが、小豆を300グラムも使ったせいで丼鉢山盛りのあんこが出来てしまい、とても1週間で食べ切れそうにありません(笑)。

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