細菌性の食中毒は9月が1番多発
9月のこの時期に注意する必要があるのが最近による食中毒だという。この時期はまだ細菌が増殖するに十分な温度がある上に夏の暑さで体力や免疫力が低下しているので、実は細菌性の食中毒は9月が一番多いのだという。
そこで今回は慶応義塾大学保健管理センター教授の森正明氏が選んだ危険な菌トップ3を実際の事例を交えて紹介している。
O157は加熱を十分にサルモネラ菌は二次感染に注意
まず第3位だが、何度か話題になったO157。夕食の冷凍メンチカツを食べた家族が数日後に猛烈な腹痛に襲われたという事例があり、同時期に21人から被害報告があったという。
O157は牛などの家畜の腸内に生息する。2~8日の潜伏期間の後に発症し、腹痛や38度以上の発熱や風邪に似た倦怠感が現れるという(今ならコロナと紛らわしそうだ)。子供や高齢者が感染すると溶血性尿毒症候群で死亡する事例もあるとのこと。75度以上で1分間加熱すると死滅するのだが、この事例のメンチカツの場合は加熱が不十分で芯まで熱が通っていなかったと考えられるという。さらに注意ポイントとして冷凍食品とそうざい半製品というものがあり、そうざい半製品は未加熱の食品を凍結させているので、加熱が事前にされておらず、調理の際に十分に加熱しないと危険なのだという。
次の第2位は、サルモネラ菌。給食のサラダが原因で教師や生徒1600人が集団食中毒を起こした事例があるという。原因は調理器具の消毒が不十分だったこと。
サルモネラ菌は牛・豚・鶏などが保菌しており、鶏卵の殻から感染する事例があるという。また犬やネコなどのペットから感染する事例もあるので、子供や高齢者は注意が必要とのこと。12~48時間で発症し、発熱・嘔吐・頭痛・へそ周辺の腹痛が特徴とのこと。
またサルモネラ菌が体内にとどまって保菌者となり、1ヶ月後に今度は親に感染した(70人も出たらしい)という事例があるという。保菌者が手を洗わずに調理などをするとそこから感染する恐れがある。サルモネラ菌の保菌率はO157の50倍あるとのことで、手を石けんなどで洗うことが重要だという。
カンピロバクター感染の落とし穴
そして第1位がカンピロバクター。小学校の食育事業でプロによる鶏の解体とカツオを捌く様子の見学会が行われたという。最後にカツオの刺身を試食して終了したところ、生徒や保護者44人に食中毒の症状が発生したのだという。
カンピロバクターは家畜や家禽の腸内に存在して、解体時に表面を汚染する場合があるという。少ない菌でも感染するのが特徴だという。2~7日で発症して、発熱・倦怠感・頭痛などが起こってから吐き気や腹痛に襲われるという。発生数が最近の中ではダントツに多いのが特徴であり、悪化すると手足の麻痺や呼吸困難も起こすこともあるので要注意だという。
ただしカツオにはそもそもカンピロバクターはいない。また調理器具や食器は分けて使用しており、使う前後にしっかり洗浄していたという。しかし落とし穴が同じスポンジとシンクを使用して洗浄したこと。ここから鶏肉に付着していたカンピロバクターがカツオに移ったと推測されるという。カンピロバクターは洗剤では死なないが、乾燥や熱に弱いので、まな板を完全に乾燥させる、熱湯をかけるなどによって滅菌できるという。
食品保存のポイント
最後は食品保存法のチェック。ゲストの中西氏の台所をチェックしたところ、シンクの下に粉を保管していたのはNG。湿気があるとカビが繁殖したりダニが湧く可能性があるので粉ものは口をしっかり閉じた上で冷蔵庫で保管すべきとのこと。また玉子は殻の表面にサルモネラ菌が付着している場合があるので、パックのまま入れる方がGoodとのこと。またナチュラルチーズは2週間以上冷蔵庫に入れていると、リステリアという菌が増殖することがあり、妊婦が食べると中毒を起こして流産の危険があるので注意とのこと。
さらにコンロの上に肉じゃがが放置してあったがこれはNG。根菜類や肉類に存在する熱に強いウェルシュ菌が50度付近で急激に増加するので、保存の際は粗熱を取ってから冷蔵庫で保存するのが正解とのこと(これがあるので、ガッテンでは以前に紹介した保温調理法を危険であるとして後に否定しました)。美味しいと言われる2日目のカレーもこれがあるから危険であるというのは最近よく言われているところ。
以上、この時期に注意すべき細菌性食中毒について。まあ基本は消毒なんですが、O157などは除菌しすぎることによってかえって繁殖するので、無害な菌で適度にバランスが保たれている状態の方が実は安全という考え方もあり、その辺りは難しいところです。実際にO157による集団感染が発生した事例でも、日頃徹底的に殺菌してるカ所にたまたまO157が付着したことで、競争相手のいないO157が急激に増殖したと言われており、適度に不潔な家庭のまな板が意外に抗菌力があったりするとか。細菌の世界も難しい。
また食中毒を防ぐもう一つの方法は身体の免疫力を上げるということで、少々の菌なら常に入ってきた分をこれが撃退してます。だから健康的な生活を送って常に身体の抵抗力を高めておくというのも重要。もっとも現代社会は高ストレスの上に睡眠不足などになりやすく、この健康的な生活というのが一番難しかったりする。かく言う私も日々のストレスと不摂生な生活習慣に寄る年波のせいで身体の方はガタガタです。
忙しい方のための今回の要点
・9月のこの時期は細菌性の食中毒が最も増加するので危険な時期である。
・O157の食中毒予防では加熱による殺菌が重要。特に冷凍食品でなく加熱をしていないそうざい半製品では芯までキチンと熱を通すのが極めて重要となる。菌自体は75度以上で1分で死滅するという。
・サルモネラ菌は動物の腸内に生息し、玉子の殻などに付着していることもあるので注意。また体内にとどまって保菌者となり、そこから感染する事例もあるので、石けんなどによる手洗いが重要であるという。
・細菌性食中毒の原因菌としてダントツに多いのがカンピロバクター。これも家畜や家禽の腸内に生息するが、乾燥や熱に弱いのでまな板を完全乾かす、熱湯消毒をするなどが有効。
・食品を保存する際、粉ものは湿気るとカビが生えたりダニが湧くので密封して冷蔵庫がベスト。
・またナチュラルチーズは冷蔵庫でも2週間経つととリステリアという菌が増殖することがあるので注意。
・また熱に強いウェルシュ菌は50度付近で急激に増殖するので、肉じゃがなどの料理は自然放冷でなく、粗熱を取ってから冷蔵庫で保存する方が良い。
忙しくない方のためのどうでもよい点
・以前ガッテンで紹介した保温調理法というのは、まさにこのウェルシュ菌が繁殖する温度域周辺が、素材に味が染みこむのに有効な温度域だったんですよね。ガッテンの報告を受けて多くの保温調理用器具なんかも出たんですが、このウェルシュ菌問題で立ち消えになりました。省エネでもあるともてはやされたんですがね。
・ウェルシュ菌の場合、熱に強いというのが一番タチが悪いところで、普通は加熱調理した食品の中に菌がいるとは思いませんから。何しろ芽胞状態になると100度で6時間でも耐えると言いますから、煮込み料理でも死滅しないということです。
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