教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

9/22 テレ東系 ガイアの夜明け「今なら会社買うでしょ!~コロナで急増する個人M&A~」

急成長の個人M&A

 事業買収M&Aと言えば、大企業同士で数億円の話というイメージがあるが、最近は個人間での数百万~数千万のM&Aが増加しているという。

 個人間M&Aを手がけるバトンズは創業3年で社員22人の会社。コロナで会社を売りたいという相談が殺到しているという。企業間のM&Aを手がけてきた大山敬義氏が立ち上げた会社だが、今年はコロナで駄目だと思っていたところ、案に反して急成長しているという。

 番組では実際に会社を買った人に密着している。果たしてどうなるか。

 まず店や事業を売りたい側の理由としては、高齢化に伴い後継者を求めている。別の事業を始めたい。技術研究に専念したいから経営を任せたい。などの例があるという。

 

元看護師やフリーターなど様々な新経営者達

 元看護師の新島ユリア氏はマッチングサイトで創業10年のウェディングドレスレンタルの会社を買い取った。経営者が故郷に帰るので事業を売却したかったのだという。彼女は子供のことを考えた時に、自分で働き方を選べるようにしたいという考えがあったのだという。引き継ぎ期間の1ヶ月で旧経営者から様々なノウハウを引き継ぐ必要がある。

 息子を保育園に預けると娘と出社。娘との生活のために店は完全予約制にしたという。しかしそこをコロナが直撃。結婚式の延期や中止が相次いで、予約は真っ白けの状況になってしまった。そこで彼女はコロナ対策の無利子無担保融資を申し込んで勝負に出る。

 もう一人は大阪のショッピングモール内のタピオカとクレープの店を580万円で買収したフリーターの橋本容典氏。彼は恋人と二人でこの店を買った。ただし大金を持っていなかったので、買収資金は毎月の分割で支払っているという。彼は誰かに使われるというのが嫌で店を経営することを考えたという。ただ買収した時点でこの店は経営は赤字だったというのが気になる点。それは自分達で働くことで収益を上げていくことを考えているという。

 ・・・と言う時点で私は「何か失敗のフラグが立ちまくってるんだが」と感じたのだが、流石に日経だけあってスタッフもそのことは感じた模様。単刀直入に「タピオカで大丈夫なのか?」と聞いたらしい。これについては彼は「タピオカだけでなくてクレープもあるから」との返答。正直なところ私は「人に使われるのが嫌だから経営」って言っている時点で、こういうことを言う輩で成功した試しを知らないのだが・・・。

 

コロナの影響で苦戦する経営者達

 やはり懸念された通りに赤字になった。前オーナーの時よりも売り上げが落ちているという。しかも彼の店もコロナの直撃を受ける。そうなると共同経営者である恋人との間のケンカも増えてきた。そして挙げ句はアルバイトで赤字を埋める羽目になった。

 危機に瀕した橋本氏はバイトを集めて意見を募集。店の商品やサービスなどのいろいろな意見をもらって参考にすることにした。さらに橋本氏は新メニューとして東京で流行しているレモネードを導入することにした。6月下旬になると学校が再開されようやく客が戻り始めた。レモネードの売れ行きも上々で明るい兆しが見えてきたという。

 神奈川県では元旅行会社の社員だった岩間琢氏が生徒10人の学習塾を買収していた。経営者が高齢化のために事業譲渡を行ったのだという。岩間氏は得意である英語なども使って、かつての夢であった教師の仕事を実現したいと考えたのだという。しかしここもコロナが直撃、慌ててオンライン授業に乗り出すことになったという。

 6月上旬にはコロナ対策をした上で授業を再開。マンツーマンの授業をすることで生徒も増えてきたという。そして彼の英語講座の生徒も付いて、彼自身の夢に向かって着実に進み始めた。

 さてウェディングドレスレンタルの新島氏は勝負に出ていた。郊外に広い店舗を借りて大量にドレスを並べて客に選んでもらえるようにしようということであった。さらには結婚式のパターンがコロナで変わってきたのに合わせ、ウェディングドレスの長期レンタルサービスを開始したところ、それが客のニーズと合致、徐々に評判が上がってきたという。そしてさらには新品のウェディングドレスをレンタルするというサービスに乗り出して、ゼクシィに広告を打つなどさらに勝負に出ている。

 

 どうも三者三様だが、新島氏はそもそも経営の才覚があるようで思い切りも良い。だから一番成功する可能性も高そうだが、一つかみ合わなくなると大コケする危険があるので要注意ではある。学習塾の岩間氏は着々と進めていっているようだが、学習塾という内容から考えて激しい浮き沈みはなさそうである。ただ不安事項はこれからの少子化。また庶民の貧困化で子供の学習に避ける予算も今後は減少傾向になりそうなこと。まあこのコロナのご時世で旅行会社の先行きの危険を感じての転身だろうことはよく分かるが。

 やっぱり一番の不安は橋本氏。番組スタッフも私と同様に「この時期に今更タピオカ?」という疑問を抱いたが、明らかにタピオカはもう既にオワコンである。だから前経営者も事業は赤字で売却したんだろう。かつて大流行した白い鯛焼きでも、一気にブームが去ったことで経営者達の死屍累々となった。そこで橋本氏も工夫したり、新たな商品としてレモネードを導入したりはしているようだが、果たしてそれでどこまで成長軌道に乗せられるか。またショッピングモールというのはそもそも寺銭が高いし、バイトも多く抱えて人件費も高いと思われるので、その辺りの損益計算をキチンと出来ているのだろうかと疑問を感じるところ。半年後に彼の店が残っているかどうかが勝負だろう。

 結局のところ経営者となるのだから、それなりの努力と才能は必要。安直に「人に使われたくない」というだけで乗り出したら大やけどするだろう。そもそも簡単に収益が上がるような事業なら経営者が譲渡するわけがないので、大抵は何らかの大きな問題を抱えていると考えた方が良いだろう。それに対しての処方箋を考えられないものが引き継いでも早晩破綻するのは確実なので、果たしてそこで実行可能なプランを持っているかが問われるわけである。

 

忙しい方のための今回の要点

・個人間での小規模のM&Aが、このコロナ禍のご時世で急激に増加しているという。
・番組では実際に事業買収を行った3人に密着して取材している。

 

忙しくない方のためのどうでもよい点

・フランチャイズのコンビニ店長なんかをするよりはまだ可能性はあるかもしれません。一番のメリットは既に従業員や顧客なども存在しているものを引き継げること。ただし気をつけないといけないのは、現在発生している問題をも引き継ぐことになること。何もないところから事業を起こすよりは簡単だが、成功させるにはやはり何もないところから事業を興せるだけの能力は必要とされる。
・フリーターの橋本氏は「人に使われるのは嫌」と言ってましたが、私の場合は逆に「人を使うのは無理」ってタイプなので、結局は末端社員か個人事業主しか選択肢がないと言うことになってしまう。世の中的には一番使えないタイプなのだが。

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