教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

10/14 NHK 挫折秘話ブルーヒストリア

様々な偉人たちの「痛すぎる」過去

 今回は番外編として、偉人たちの挫折物語を紹介するとのこと。で、スタジオもいつものピンク系でなく真っ青である。それにしてもマクロスヒストリアとかわけの分からん番外編の多い番組だが、一応今回は趣向は変えてあるが歴史番組はしている。

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文豪・漱石の痛い過去

 

ロンドンでヒッキーになってしまった漱石

 まず最初に登場するのは文豪・夏目漱石。彼の挫折とはロンドン留学。東京帝国大学で英文学を学び首席で卒業というバリバリのエリートの漱石は、英語の教師をしていた時に校長の推薦で国の留学生としてイギリスに渡ることになる。

 33歳で英文学の研究のためにロンドン渡る漱石だが、それからが大変だった。身長159センチと小柄だった漱石はイギリス人の中に入るとまるで子ども。実際にヴィクトリア女王の葬儀の時、行列が見えずに後でウロウロしていたら、子どもと思われたのかひょいと肩車で担がれてしまったのだという。しかもいざイギリスに渡ると、自分の習った英語とはアクセントやイントネーションが違いすぎて全く聞き取れない。英文学の俊英のプライドがガタガタになった漱石は留学数ヶ月後についに下宿に引き籠もってしまう

 しかし引きこもり生活を続けていた漱石は下宿の主人にまで馬鹿にされる事態になり、これで漱石に火がつく。漱石は書物を買い集めて文学の研究を始める。文学はなぜ人の心を動かすのかを研究したという。これが帰国後に小説を書くのに活かされたという。

 

妻に尻を叩かれまくって大統領になったリンカーン

 二人目はリンカーン。独学で弁護士となったリンカーンだが、貧しい家の出身だったせいで服装はだらしくなく、マナーなどもなってなかったのでホームパーティーの類いに出かけても女性から完全に避けられる状態だったという。そんなリンカーンが出会った運命の人がメアリー・トッド。銀行家の娘という上流階級の女性で、彼女は大統領の妻になるのが夢だったという。リンカーンはメアリーのアプローチに舞い上がって、出会って1年後に婚約する。しかしここからメアリーの猛烈な指導が始まったという。リンカーンのテーブルマナーから服装のセンス、さらには日常の所作まで細かくメアリーのダメ出しが始まる。あまりの細かさにリンカーンはメアリーとの婚約の解消を考えたが、それは実現しなかったという。結局二人は結婚、結婚式の当日にいつもと様子が違うリンカーンに子どもが「どこに行くの」と話しかけたら、「多分、地獄」と答えたと言うからこれは笑うべきなのか。

 結婚生活は予想通りで、リンカーンはよく箒で追い回されていたという。しかしメアリーは自分のツテでリンカーンを上流階級の人々に紹介して支援の輪を広げ、リンカーンはまずは下院議員となり、ついには大統領にまでなる。リンカーンは演説が上手かったとされるが、実はメアリーが様々なアドバイスをしていたとか。つまりはメアリーはリンカーンを大統領にしたフィクサーだったわけである。番組ではメアリーがリンカーンのどこに惹かれたのかは不明としていたが、確かにそれがもっとも気になるところ。まさかリンカーンが嫁に尻を叩かれて三冠王になった落合博満と同じだったとは・・・。

 

とんでもない「エラい人」だった野口英世

 最後は一番多く伝記が出ていると言うが、実はいろいろなやらかし伝説がある野口英世。とにかく金にルーズというか、金が入ると散財してしまうという困った習性があったという。

 神童と言われるぐらい優秀だった野口だが、実家が貧乏なので上京して勉強する金がなかった。そこで知り合いの歯科医の血脇守之助を頼ってやっかいになることになる。野口は医学試験に向けて猛勉強に励むのだが、そんな中でもパーッと遊んで金を使い込んでしまう状態だったとか。それでも80人の受験者の中で合格者が4人という難関の医学試験に合格する。

 しかし医師になっても浪費癖は相変わらずで、血脇から小遣いをせびる日常、それどころか同僚や友人にも金品を無心していたらしい。地元には野口のスポンサーをしていた人もいるのだが、彼の浪費癖を承知の上で彼の才能に惚れ込んで金を出していたらしい。どうも野口はあちこちに金を無心する手紙を残しているようだ。

 そして野口がアメリカ留学を目指した時、血脇が仲介してくれた資産家が渡米資金300円(今の価値で600万円)を出してくれることになる。しかしこの浪費家、なんと華々しい壮行会を開催した挙げ句に一晩で資金を使い切ってしまう。どうしようもなくなってしまった野口だが、血脇が高利貸しで金を借りて渡米資金を用立てる。さすがにこれには野口も申し訳なかったのか、アメリカに渡ると猛烈に研究を行う。そして梅毒の原因菌が人体をむしばむメカニズムを解明するという偉大な成果を上げ、その後も南米やアフリカで研究を続け「細菌狩りの達人」と呼ばれるようになったという。

 そして世界的な研究者となった野口の元を訪ねてきたのが血脇だった。野口は血脇を連れてアメリカ大統領を訪問し、盛大な歓迎会を開き、血脇を自分の恩人として紹介する。野口はどうしようもない男だったが、さすがに恩義は深く感じていたという。ちなみに野口の「自戒」と記した書が最近見つかったという。確かに彼にとって重要な言葉だ。

 

 以上、3人の「痛い偉人」について。漱石はメンタルが脆かったのか、日本に帰ってきてからも鬱を発症したりしている。ちなみにロンドン生活が辛かった漱石は、日記でロンドンのことをディスりまくってたという。恐らくインターネットがあったら、掲示板で毒を吐きまくっていたところだろう。

 リンカーンが落合博満だったということは知らなかった。それにしても凄まじい嫁さんである。ある意味で旦那を偉くする立派な嫁だが、果たして旦那の方がそれで幸福だったのかどうかは分からない。それにしてもまさに猛女である。さらにメアリーの肖像が番組中に登場していたが、それがお世辞にも美人とは言えないタイプであるのがこれまた。

 最後はいろいろと伝説の人である野口英世である。野口の浪費癖については彼の業績をたたえている野口英世記念館でさえスルーしていないぐらいどうしようもない部分だったようだ。貧乏育ちの反動か、元々の性格が金にルーズなのかは分からないが、とにかく派手に金を使うということが多かったようだ。番組では渡米後は生まれ変わったように真面目に研究に打ち込んだようにまとめているが、実際は猛烈に研究もやるが、その一方でやっぱりいろいろとしでかしてもいたという。そんな野口をそれでも支援してくれる者が少なくなかったというのが救いだったようである。

 

忙しい方のための今回の要点

・漱石はロンドンに留学したものの、イギリス人に対するコンプレックスや、英語のヒアリングがうまく出来なかったことから下宿に引き籠もってしまう。
・ついには下宿の主人にまで馬鹿にされ、ここで奮起した漱石は書物を買い集めて英文学の研究を行う。これが後に小説家になってから活かされている。
・リンカーンは貧乏の出身だったため、服装にも無頓着でマナーもなっておらず、パーティーなどに出かけても女性完全に敬遠されていた。そんな時に銀行家の娘のメアリー・トッドと出会って結婚する。
・しかし彼女は自分の夫を大統領にするべく、リンカーンの日常についてありとあらゆるダメ出しを重ねる。しかし自分のツテで上流階級にコネを作るなどリンカーンの政界進出への足がかりを作り、ついにはリンカーンを大統領にする。
・野口英世は浪費癖があり、やっかいになっていた血脇守之助から何かと支援を受けていた。渡米の際には血脇の紹介で資産家が渡米資金を用意してくれるが、野口はなんとその金を壮行会で使い切ってしまい、結局は血脇が高利貸しで借りて資金を調達する。
・渡米した野口は必死で研究に打ち込み、大きな成果を上げて細菌学の世界的研究者となる。その野口を訪ねてきた血脇を恩人として大統領に紹介し、盛大な歓迎会を実施する。

 

忙しくない方のためのどうでもよい点

・今回のポイントは漱石はプライドは高いがメンタルは脆かった。リンカーンは実は落合博満だった。野口英世はいろいろな面で「エラい人だった」ということのようで。

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