教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

10/27 テレ東系 ガイアの夜明け「それ、棄てるの待った!~食品ロス削減2020~」

食品ロス削減への取り組みを紹介

 毎日大量の食品が棄てられている食品ロス。今や社会問題ともなっているが、その削減には企業も本格的に取り組み始めている。ハウス食品では野菜のヘタなども含めてロスを出さない料理のレシピの開発などを行っているとか。またグリコでは賞味期限の表示を日付でなくて月表示に変更したという。これは賞味期限10月10日の商品が店頭に並べば、最早10月1日表示の商品を店頭に並べることが出来なくなってロスになるということを防ぐためだとか。また製造中に割れたりした不揃い品の販売ルートも増やそうとしているという。このような食品ロスの削減への取り組みを紹介。

 東京駅のグランスタ東京。夜の10時になると飲食店は閉店するが、その中をキャリーを押しながら現れる2人。売れ残った商品を次々と回収していく。これを買い取って格安で駅で働く人たちに販売するのだという。レスキューデリという取り組みだが、今まで処理代を払って廃棄していた商品を1キロ100円で買い取って従業員に割安で販売するのだという。今は駅の従業員限定だが、いずれは一般に広げたいと考えているという。

 創業5年目のベンチャー企業コークッキングは、創業者の川越一磨氏がかつて飲食店で働いていた時に毎日大量に出る廃棄食品をどうにかできないか考えて設立した会社である。現在の事業の軸はスマホアプリのTABETE。飲食店の売り残りを割安で購入できるアプリだという。気に入った料理を選んで自分で取りに行くことで割安で購入できるのだという。川越氏はさらに余った野菜などを販売するために生産者やJAと話を進めている。ここのスタッフの一人が峯岸晃希氏で、彼がレスキューデリの責任者である。

 

売れ残り再販売にも数々のハードルが

 エキュート東京で峯岸氏が今まで扱っていなかった商品の再販売を始めるべく総菜店を訪ねていた。そこで交渉したのは弁当を作る時に出た余りのキャベツやご飯など。店でパック詰めしてもらえることになったが問題は食品をパック詰めした場合には、法律で原材料や賞味期限のラベルが必要となること。なかなかに様々なハードルがあるようである。

 さらにたまプラーザの食料品店ディーン&デルーカで売れ残ったパンを販売しようと交渉していた。この店では遅く来るお客のために閉店間際までパンの在庫を切らさないようにしているために、どうしても売れ残りが出てしまうのだという。ここのパンを扱うことにした峯岸氏だが、店側には大きな懸念があった。それはアレルギーの対応をどうするか。パンはアレルゲンの多い食品であり、店ではパンごとに個別の表示をしているが、レスキューデリではそこまで細かい対応をしていられない。アレルギーなどの問題が発生した時はレスキューデリが責任を取る契約になっているが、店側としては「自己責任です」と見逃すわけにはいかないという。結局は社長の川越氏も加わって店と交渉したところ、まずはアレルギーを表にしたパンのリストを作って、アレルギーのある客にはそれを使用して選んでもらうことになった。

 

パンの切れ端からビールを作る

 六本木には独自で食品ロスの問題に取り組むパン屋があった。ブリコラージュでは人気のパンを使ったオープンサンドが店の売りだが、その度にパンの切れ端が出ることに悩んでいた。最初はパン粉にして料理に使ったりしていたが全く間に合わず、ついには畑の肥料にしたらしいが、送った農家に「こんな美味しいパンを本当に畑に埋めて良いのか」と言われて考え直したのだという。今はパンの切れ端は細かく砕いてオーブンでローストすると野沢温泉村に運ばれている。ここであるものに変化するのだとか。

 パンが運ばれた野沢温泉村ではこれを材料にビールが作られていた。ビール醸造所AJB、オーナーのトーマス・リヴシー氏はビール製造が盛んなイングランド出身。食品ロス削減に取り組む知人からブリコラージュの生江史伸シェフを紹介されて意気投合、パンを原料にしたビールを作ることにしたのだという。彼は妻の絵美子氏と8年前から野沢温泉村に移住して、良質の水を利用してのビール造りに挑んでいる。材料の一部にパンを使用するブレッドビールはイギリスやベルギーで製造されているという。ブリコラージュのパンの美味しさを最大限活かすために小麦などの配合も独自に研究して、新たなビールを開発している。パンは季節によって原料が変わっているので、その度に配合を考える必要があると言う。こうして作ったビールをブリコラージュに持参して生江氏にチェックしてもらったところ上々の評価。このビールはまもなく出荷予定とのこと。さらには熟成ビールなどにも取り組んでいるという。

 

 以上、地球全体のことを考えた時、食品に限らず大量消費大量廃棄の時代は既に曲がり角を過ぎていると思われる。食料は未だに人類全体で考えると不足しており、将来的にはその不足はさらに拡大すると推測されているのだから、今のように食品を無駄にする世の中がそのまま通用するはずがないと考えるのは常識というものである。

 ただ食品ロスを減らす場合、今回のような店の側の取り組みというのも重要であるが、実際の食品ロスが大量に出ている家庭での対応も考える必要がある。番組中で1人当たり年間50キロの食品を廃棄していることになると言っていたが、これはとんでもない量である。

 売れ残り商品の再販売などはもっと考えるべきだが、店によってはブランド価値の失墜を警戒して乗り気でないところもあるだろう。例えば500円の商品が夜になると200円で販売されていたとしたら、人は段々と500円の商品が200円になっていると考えるよりも、200円の商品が昼には500円で販売されていると考えるようになってくるという習性があるので。実際にブランド衣料品などは食品以上に定価が言い値の業界なので、ブランド価値毀損を恐れて売れ残りはわざわざ裁断処理しているという現実がある。食品でも同様のことを考える店は必ずしも少なくないと思う。

 生産者、流通業者、販売業者などの考え方の変更が必要であるが、一番考え方を変える必要があるのは我々消費者である。食べ物を大切にするという極々当たり前のことを、今一度考え直す必要があろう。また大量生産大量廃棄というのが資本主義に基づく経済至上主義から行き着いた結論であることを考えると、既に黄昏れつつある資本主義経済について考え直すという大作業も必要になってくるのであるが。

 

忙しい方のための今回の要点

・食品ロスが社会問題となり対策に乗り出すメーカーも登場している。
・グランスタ東京で売れ残った商品を買い集め、東京駅の従業員に販売しているレスキューデリでは、これを一般にも広げることを考えている。
・ただし例えばパンのアレルギー表示をどうするかなど、クリアすべき課題は多い。
・六本木のパンやブリコラージュでは料理の際に出るパンを切れ端を野沢温泉村のビール醸造所AJBに送って、そこでビールの原料にするという取り組みを行っている。

 

忙しくない方のためのどうでもよい点

・パンからビールが出来るというのは初めて知った。ビールって麦系からなら結構幅広く対応できるんだろうか? パン以外、例えばうどんとかはどうなんだろう?

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