教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

11/1 TBS系 世界遺産「塩と共に3000年!世界一美しい湖畔の町」

氷河湖畔の美しい町・ハルシュタット

 オーストリアの美しい湖畔の町ハルシュタット。この町で人々は3000年以上、岩塩採掘で生きてきたという。ダッハシュタイン連峰とハルシュタットの一帯が世界遺産である。


『世界遺産』11/1(日) ハルシュタットの文化的景観 〜 3000年! 世界一美しい湖畔の町【TBS】

 上空から見ると、山の中の大きな湖に突き出た部分にあるのがハルシュタットの町。狭い土地を有効活用するために3~4階建ての建物が多いという。小さな町だが人口は900人。急な階段や路地の周囲に家々が折り重なるように建っている。この地形は氷河が生み出したものだという。

 ハルシュタットが存在する地形を作った氷河はダッハシュタイン連峰の山頂にある。かつてこの氷河が谷を削り、そこが氷河湖となった。ハルシュタットはその氷河湖のほとりの町である。

 春、雪解け水が作る美しい風景が標高1300メートルの洞窟の中にある氷柱。春にしみ込んだ水が氷点下の洞窟の中で凍って積みあがるのだという。

 

ハルシュタットを繁栄させた白い黄金

 ハルシュタットから北へ35キロ、山岳鉄道のシャーフベルク鉄道で登っていくと「ザルツカンマーグート(塩の宝庫)」という名の風景が広がる。この山々が人にもたらした、かつて白い黄金と呼ばれた恵みが岩塩だったのである。ハルシュタットの背後の山には今でも岩塩鉱があり、現在も採掘されている。かつて岩塩の価値は金にも匹敵した。その富を独占したのがハプスブルク家だった。オーストリア帝国の栄華はここの岩塩が支えたのである。

 山の石灰岩の中には二枚貝の化石が見つかる。かつてここは海だったのである。かつて海から分離された部分が干上がって岩塩層となり、それが再び海底に没してから、上に石灰岩の層ができ、それが隆起したのが今日の地形なのだという。

 ハルシュタットには伝統的な風景として舟屋が存在する。人々は山で塩を掘り、湖で漁をして暮らしてきたのだという。しかし今では漁をしているのも一軒だけだとか。かつては40キロの道のりを小舟で運んでいたが、400年前に塩のパイプラインが敷設されたという。採掘した塩を水に溶かしてから木製パイプに流し込んで外に運び出したという。パイプは山肌を下りながら進んでいく。途中にはゴーザーウツヴァンク橋で谷を越えている。かつては木製パイプ、今は鉄製パイプが通っている。そして40キロ先の下流の製塩所に届く。この製塩所は今でも現役で塩を作り続けているという。

 

忙しい方のための今回の要点

・オーストリアのハルシュタットは湖畔の美しい街。この湖は近くのダッハシュタイン連峰の氷河によって削られたものである。
・この一帯は岩塩が産出し、ハルシュタットはそれで繁栄した町である。かつて岩塩は白い黄金と呼ばれ、この岩塩がハプスブルク家の富の源泉となった。
・かつては小舟で岩塩を運んでいたが、400年前に岩塩を水に溶かして輸送するためのパイプラインが建設され、それが40キロ下流の製塩工場に続いている。

 

忙しくない方のためのどうでもよい点

・今は塩はそう高くなくなってますが、かつては塩も貴重だったということでしょうか。確かに岩塩が産出しない日本では塩と言えば専ら海から作ってましたが、塩は各国にとっての戦略物資でした。まあ人間は塩なしには生きられませんからね。

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