人類が「裸のサル」になった理由
人類を表現する言葉に「裸のサル」という言葉がある。類人猿の中で人類だけが頭髪などの一部を残して体毛が生えていない。濃くても薄くても本人にとっての悩みになったりする体毛であるが、今回のテーマはその体毛である。
胎児には毳毛と呼ばれる毛が皮膚の乾燥を防ぐために全身に生えているという。これは胎児が人類の進化の過程を辿っているからとも言えるという。成長してくるとこの毳毛は抜けてしまう。
人類の歴史を調べた時、440万年前の人間の祖先のラミダスには毛があると考えられている。それに対して180万年前ホモ・エレクトスには、その生活習慣などから考えても毛がなかったと推測されている。ラミダスは森で暮らしていたのに対し、ホモ・エレクトスは草原で暮らしていて歩行能力がかなり高くなっていた。彼らは体毛がなくなることで、汗をかいて体を冷やすことで獲物を長距離追跡できるようになったのが強みになったのだという。毛のところにあるアポクリン腺の汗は粘っこくて蒸発しにくいのに対し、ホモ・エレクトスは体毛をなくしたことでエクリン腺が多くなり、エクリン腺からの水っぽい汗は効率的に蒸発でき体温を下げやすいのだという。野生の動物は一般的に体温を下げるのが困難なので、長時間の連続行動は困難になるのに対し、ホモ・エレクトスは集団で持久戦を仕掛けることで獲物を獲得できるようになった。
また狩りをして肉を食べるようになったことで脳が発達した。高カロリーの栄養を摂取することと狩りのためにいろいろと工夫することは脳の発達を急激に促したという。ここで体毛を失ったにもかかわらず頭髪が残ったのは、脳は熱に弱いからだという。頭髪があることによって太陽の熱から脳を守る効果がある。
セックスアピールと体毛の関係
ただし狩りをするのはオスだったはず。ではなぜメスも体毛がなくなったかであるが、ダーウィンの性選択説によると毛が薄いことで乳房が強調されてオスを引きつけることになったからだという。つまりは女性のセックスアピールには体毛が薄いことが有利であり、そのために体毛が薄くなるようになったとのこと。なお胸に恒常的に皮下脂肪を蓄えているのは人間だけであり、乳房というのはセックスアピールに重要らしい。男は大昔からおっぱい星人だったってことか。もっとも織田裕二も言っていたが「人間好みというものがあるから」というのはまさに同感。私もあまり巨乳は好きではない。
さらに頭髪以外の毛と言えば脇毛と陰毛であるが、これらは哺乳類の乳腺の位置に対応しておりフェロモンと絡んでいるらしい。実験によると、男性が長時間着続けたシャツを女性に嗅がせたところ、女性が「これが一番良い」と選んだシャツの持ち主は自分から離れた免疫を持っている男性のものだったという。自分と免疫が離れていると言うことは、生まれた子どもは多様な免疫を持つことになり生存に有利になる。女性はそれを体臭から感じているのだという。だから女の子が思春期になると「お父さんは臭い」と言い始めるのはこの効果ではとのこと。だから体臭を保つために脇毛や陰毛は縮れていると言うことだが、うーん、そこまで来るとどこまで本当か? もっとも体臭の相性というのは確かにあるのは間違いないようではある。私も今までに特に極端に臭いというわけでもないのだが、とにかく不快な体臭の持ち主というのに出会ったことがある(もっとも相手は男であるが)。
脱毛と増毛と
なお最近は男性の脱毛に対する検索が増えているという。これは最近の女性が体毛の濃い男性を不潔と嫌う傾向が出て来たから。この辺りも時代の変化で、ほんの数十年前は男性の体毛の濃さはむしろ男らしさと評価されていたという。女性の嗜好が男らしさよりも同質性を求める方向に行き、それがなよっとした女性的な男性を求める傾向になっているではとのこと。これも「体毛の濃い男性は結婚できずに子孫が残せない」というような極端なところまでいけば、進化に影響を与える可能性はある。
体毛が敬遠される一方で、頭髪は逆に減ることで悩むものも多い。その男性型脱毛の悩みに対応する研究も進んでいる。毛根の器官原基という器官の基を再生することで頭髪を再生するのだとか。毛乳頭細胞と上皮細胞を培養してから混ぜ合わせて種を作って移植することで毛髪が再生するのだという。一回移植すると生涯にわたって生えるとのことで薄毛の人には朗報に聞こえるが、まだまだ実用化は遠そうである。また頭髪一本一本にこれをするとなるとどれだけ費用がかかるだろうか。またアデランスだけが潤いそうである。
裸のサルの体毛について。それにしても突然におっぱい星人の話が登場し、織田裕二が半分喜びながらもNHKだけにどういう対応をすべきか戸惑っている様子が見られた(笑)。前回の「性」の話といい、題材が題材だけに際どい話題も出てくるが、これは明らかに狙ってやってるな。
私は体毛はそもそも薄い方なのですが、最近は年齢の影響で頭髪の方も薄くなってきていささか悩みの種であります。織田裕二が「真っ白になるのかはげるのかどちらかハッキリしろ」と言っていましたが、その気持ちは分からんでもない。私の場合は大分白くなったところで、前の方からはげ上がりつつある。
頭髪の悩みというのは古今東西あるようで、イギリスの皇太子もあらゆる育毛法を試した結果、最期は諦めたと聞いている(笑)。一九分けなどで未練たらしく粘るよりは、いっそのこと潔いハゲの方が格好が良いとの話もある(笑)。なお最近の報告では「女性が男性の魅力を感じる際には頭髪は無関係」という報告もあるのであるが、これについては一般的に男女ともに誰も信じていない(笑)。確かにハゲでもイケメンという例はあるが、それはそもそもがかなりのイケメンなのであって、そこらのフツメンやブサメンは頭髪で誤魔化せなくなったらかなりしんどいのが現実だったりする。
忙しい方のための今回の要点
・人間は進化の過程で体毛を失ったが、それは草原の炎天下で身体の冷却効率を高めることによって狩りに有利になることからの進化であった。
・狩りによって高カロリーの栄養を摂取できるようになったことから、脳が急激に発達したが、その脳を日差しの暑さから守るために頭髪だけは残ったという。
・また脇毛や陰毛は性腺との関連があり、体臭によって異性を引きつけるという効果もあるという。そのために体臭を保ちやすいように毛が縮れているとか(ホンマかいな?)。
・一方の頭髪は男性型脱毛で悩むものも多いが、毛乳頭細胞と上皮細胞を培養して、混合した種を移植することで、頭髪が生えてくるという研究もなされている。
忙しくない方のためのどうでもよい点
・たかが体毛、さけど体毛である。なお脳が熱に弱いというのは私も実感しており、考え込むと脳が発熱してのぼせることが多い。どうやら私のCPUは一昔前の高発熱型のPentium4のようである。最新型の省エネタイプのCPUと違ってエネルギー効率が悪いらしく、腹が減ってきても活動が低下することも分かっている。
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